ポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」)は、かつて、電気機器用の絶縁油、感圧複写紙(ノンカーボン紙)、熱媒体などに使われていました。しかし、1968(昭和43)年にカネミ油症事件が発生したことから、1972(昭和47)年にはPCBの製造、販売が中止され、1974(昭和49)年に製造、輸入、および新たな使用が禁止されました。使用を終えたものは保管が義務づけられましたが、処理体制の不備から、その後30年にわたる保管を余儀なくされ、その間に紛失や漏洩が生じ、環境への影響が問題となりました。国際的にもPCBなどの残留性有機汚染物質の排出の廃絶等を図る国際条約の策定が求められ、2001年にストックホルム条約が結ばれました。
2000(平成12)年、全国的な処理体制づくりに向け、国は北九州市に対して、全国で初めての拠点的広域処理施設の立地要請を行い、北九州市は、市民の意見や市議会での議論などを踏まえ、2001(平成13)年、立地受け入れを決定しました。その後、2004(平成16)年に第1期施設、2009(平成21)年に第2期施設が操業を開始し、事業主体である中間貯蔵・環境安全事業株式会社(以下「JESCO」)北九州事業所による、岡山以西17県のPCB廃棄物の処理が行われてきました。
北九州市での処理開始後、大阪、豊田、東京、北海道にも処理施設が整備され、全国5ヶ所で処理が進められてきましたが、当初の計画よりも全国的に処理が遅れていることを原因として、2013(平成25)年10月、国から北九州市に対して、JESCO北九州事業所における処理の拡大と処理期限の延長を内容とする計画の見直しについて、検討要請が行われました。要請を受けた北九州市は、市民や議会の意見を幅広く聴いて慎重に対応することとし、70回以上、延べ1,800人を超える市民への説明とともに、本議会などの議会での議論を通じて、市民・議会の意見や想いを、全27項目の条件として取りまとめ、2014(平成26)年4月、国へ提示しました。国からは、条件を全て承諾し、万全を尽くして対応するとの回答があったため、要請の受け入れを決定し、その後、順調に処理を進め、2019(平成31)年3月末に処理を完了する計画の「変圧器、コンデンサー」の処理を全国で初めて完了しました。
しかし、2022(令和4)年3月末に処理を完了する計画の「安定器及び汚染物等」は、掘り起こし調査の進展により処理対象量が全国的に増加したため、期限内での処理の完了は困難な状況となり、2021(令和3)年9月、国から北九州市に対し、2年間の処理事業の継続について、検討要請が行われました。
要請を受けた北九州市は、国に対し、「二度目の要請を 安易に受け入れることはできない。今回の要請について、市民によく理解いただくことが先決であり、まずは国において、地元説明に全力を尽くしていただきたい。」旨を申し入れました。その後、国において、38回の市民説明会を行い、延べ900人を超える市民が参加し、「期限を守れなかったことへの不信感」や「再々延長に対する懸念」、「事故の不安」といった意見、また、地域振興を求める意見がありました。
北九州市は、この要請に関する市民や議会から寄せられた様々な意見を真摯に受け止め、「処理の安全性の確保」、「期間内での確実な処理」、「地域の理解」等の全30項目の条件として改めて取りまとめ、2022年(令和4年)4月、国へ提示しました。国からは、条件を全て承諾し、責任を持って確実に対応するとの回答があったため、要請の受け入れを決定し、北九州PCB廃棄物処理事業を継続しているところです。
JESCO北九州PCB処理事業所における安全性や処理の進捗状況については、下記のサイトをご参照ください。