平成18年8月31日(木曜日)14時~16時30分
第15回議事要旨(平成18年8月31日開催)
1 日時
2 場所
小倉リーセントホテル 2階「福智の間」
3 出席者
会長
小野委員
委員
嵐谷委員 牛嶋委員 緒方委員 加藤委員 坂井委員 豊川委員
野上委員 林委員 藤井委員 松野委員 森下委員 山元委員
事業者
平尾台地区鉱物採取事業:住友大阪セメント株式会社
西小倉駅前第一地区高層建築物建設事業:西小倉駅前市街地再開発準備組合
事務局
環境局環境監視部環境保全課 (環境監視部長他2名)
4 議題
(1)平尾台地区鉱物採取事業に係る環境影響評価方法書の審査
(2)西小倉駅前第一地区高層建築物建設事業に係る環境影響評価方法書の審査
5 議事要旨
審議に先立ち、「平尾台地区鉱物採取事業に係る環境影響評価方法書」及び「西小倉駅前第一地区高層建築物建設事業に係る環境影響評価方法書」の審査について、環境影響評価審査会に諮問を行った。
(1)平尾台地区鉱物採取事業に係る環境影響評価方法書の審査
事務局からこれまで手続きとして行われた縦覧(5名)及び意見書の提出(0件)の状況について報告を行った。次に、事業者から方法書の内容について説明があり、質疑応答及び審査が以下のとおり行われた。
小野会長
今回の場合は、環境影響評価条例に基づく方法書として、中身が条例に基づく各項目を満足するように作成しているか、また、全体的に環境保全上何が問題なのかいうことを指摘しておくことが大変大事な事です。
そういう意味では、今のご説明をお伺いして、景観の問題それから水質、特に濁りの問題が非常に大きな問題を引き起こしそうな気がします。最後に、生物の問題。生物のいる場所が、要するに破壊される訳です。ではそれに対して、どのような保全対策を打つのかということが準備書に関わる問題となります。今3点挙げましたが、何が重要な要素となってくるのか、細かい問題もあろうかと思いますが、今回は方法書の観点から、問題点をそれぞれご質問、もしくはご指摘をお願いします。
藤井委員
立抗の下の水平部の連結坑道ですが、これはどのような仕上がりになるのでしょうか?ライニングするのか素掘りのままであるとか。お尋ねする訳は、この斜面のすぐ下に「白谷湧水」という小清水よりも少し大きい湧水がありますが、この湧水のレベルが124メートルなので、坑道のレベルが110メートルであれば、「白谷湧水」の地下水面レベル、飽和帯よりも少し下になり、影響を受けるではないかと考えています。
事業者
お答えします。説明が十分でございませんでした。連結坑道のレベルは140メートルですので、白谷湧水の上側になります。また、坑道の仕上がりについてですが、石灰石は結構堅牢ですので、コンクリートで捲きたてたりはしない場合もありますけれど、今回は、長い坑道であるということから部分的にコンクリートにて補強をした形になる見込みです。
また、先ほど説明に漏れましたが、採掘区域で掘削したものをダンプトラックで運び出すことはありません。坑道に設置するベルトコンベアにより、地下で静かに運ばれていくと考えています。
野上委員
大気環境の調査・予測及び評価の方法のところで、粉じんの調査として降下ばいじんを3ヶ所、風向・風速の調査として、これはちょうど事業エリアの上の方でしょうか、一ヶ所測るという事にしていますが、この1ヶ所で平尾台下の市丸小学校と平尾台上の平尾台自然の郷での風向・風速を代表できるとお考えでしょうか。質問趣旨は、市丸小学校がある所は、完全に南北の谷の状態です。方法書に気象観測所及び一般環境大気測定局の気象概況という資料があり、事業エリアにすごく近い場所の観測データは無いのですが、この周辺は風向が異なります。一番近い所で企救丘、谷の入り口の所は基本的には北から風が吹く分布が多いのですが、曽根では東西の風が多いという状況になっています。そうすると、平尾台自然の郷側と市丸小学校側は風向・風速分布が違うのではないかという気がしています。それに加えて110年後にこの地域の標高が110メートルまで落ち、平尾台側に残土を積上げて、山の形で残すという事になると、場合によっては風の通り方が変わってくる可能性も危惧される。そこで風向・風速計を市丸小学校側と平尾台自然の里側に2ヶ所追加して合計3ヶ所で測定した方がよいと考えています。
事業者
風向・風速の調査地点を今のところ一点にしているのは、粉じんの発生源となるエリアについて風向・風速を必要最低限押さえないといけないということで一点置いています。確かに御指摘があった通り、台下のエリアでは、風向・風速が違うという御意見はごもっともですので、これについては検討させていただきたいと思います。
小野会長
要検討という事で御指摘があったという事でお願いします、他の点でご質問は。
加藤委員
この事業は山が一つ無くなるという非常に大きな環境影響があるものだと思いますし、時間的にも50年、100年という話ですので、今の時点でその全体の環境影響を評価すること自体、何か恐れ多く感じています。今日、現地で湧水を見ましたが、既に雨が降るとあれだけ濁っているような状態でしたので、今回の事業の工事でかなり大きな影響が出るのではないかと危惧されます。
このような事を今言って良いのか分かりませんが、面積的にも非常に大きい60数ヘクタールの表土を一挙に剥土するという事は大きな影響が出るのではないかと思われます。剥土しないと採掘できないのでしょうから、順序としては、そうなると思いますが、その時に、少し分割しながら剥土する様な方式が考えられないものかと私は印象を受けました。
それから、眺望に関しても、500メートルの標高が100メートル台ほどになるという事ですので、眺望点は近距離の眺望点を選ばれていますが、遠景の眺望点の選択っていうのも、必要なのではないかと思います。
事業者
我々としても、関係法令に違反するような濁水を流し続けることはなく、地域の方々のご理解をいただかなければならないということからすれば、濁度を最低限に押さえるような施工の仕方をしていきたいと考えています。剥土期間については、5年間を考えておりますので、その中で分割しながら事業を実施していきたいと考えております。剥土期間については、5年間を考えておりますので、その中で、例えば一気に裸地にしてしまった後に降雨にさらすようなことのないように分割しながら施工する等、充分配慮して事業を実施していきたいと考えております。
また、遠景の景観については、重要と考えて地点を選定しております。例えば、福智山に関しては距離的には約7キロメートル離れています。福智山や貫山は、市民が登山に利用しており親しまれている山ですので、この頂上からの景観は重要であると考え、選定しております。木下、市丸小学校、小森という地点は近景で、これらの日常的な生活の中で見られる景観についても、予測地点として選定しております。
坂井委員
先ほど水質に係る環境影響評価項目の中で、地下水や川の濁り等は、現地調査を実施、解析した後、すべて定性的に予測すると説明がありましたが、本来これらの項目は定量的な予測を実施すべきではないかと考えますが。
事業者
今回この調査で、トレーサー調査をやるのですが、地下の状況というのがブラックボックスになっていて、SS等をきちんとした計算式で、予測できるものではないと考えています。ただ目標としては、例えばSSが5ミリグラム(1リットル当たり)であるというふうに、できる限り定量的に予測や解析をしていこうと考えています。例えば、降雨があって、その降水量と濁りの関係についても、毎日データを取るのでそれなりの相関関係が出てくると思います。その辺りから、できる限り定量的な結果を出すように予測をしていきたいと思っております。
坂井委員
少なくとも河川の濁り等は非常に問題になりますから、その辺は定量的にある程度しっかりやる必要があると考えます。
事業者
確かに河川の濁りについては、完全混合式等のきちんとした計算式があるのですが、河川に至るまでの濁りの中で、まず地下水の濁りがあり、その予測については不確実な部分があるため、ここでは定性的という表現を使用しています。
目標とするのは、定量的な予測であり、そこに向かって努力していきたいと考えています。
小野会長
表現の問題と内容の問題です。表現については訂正してください。内容についての議論はこれくらいでよろしいですか。
事業者
定量化できない場合もあるということをご理解いただきたいと思います。
小野会長
定量的にできないわけではない。定量的にできるものをわざわざ定性的にやると書くほどのことではないので、定量的に予測を行ってください。
事業者
はい、分かりました。
藤井委員
今の水環境に関連して、今日午前中に現地を回りました大清水・小清水は、現在の状況で直接、平尾台の台上の環境が反映される湧水という事で重要な湧水と思います。また、「白谷の湧水」は規模としては、小清水の2~3倍位のものですが、現在私が知っている範囲では、白谷の湧水の方は、平尾台上に雨が降っても、今日の雨くらいでもおそらく、ほとんど濁りが出ていない状態です。そのため、おそらくこの開発に伴って、白谷の湧水が直接目に見える状況において一番大きい変化が現れる所ではないかと思います。先日この方法書を読んだ時に、白谷の湧水は他の大清水・小清水に比べますと、観測の頻度が少ないように思いましたので、やはりこれは大清水・小清水湧水と同じレベルで現時点の調査データを集めておかれるのが宜しいのではないかと思います。
小野会長
今のご意見は、白谷湧水を一つのコントロールに使おうという意見ですから、コントロールのデータがしっかりしていないと他の要素の議論が適切にできないということです。白谷についても大清水・小清水と同じレベルで調査を行うように。
事業者
分かりました。その様にいたします。
緒方委員
生態系を大きく斜面の部分と草地の部分、西側と東側に分けておられるのですが、事業をする事によって分断されるわけですよね。それで調査地を、それぞれの分類ごとに何ヶ所か設定されていますが、調査項目によっては必ずしも全域が網羅されてない。例えば、傾斜地だけに偏っているとか、草地だけに偏っているとかいうものがありますが、これは何か根拠があるのでしょうか。
事業者
調査ルート、地点を設定するにあたっては、傾斜地についても、事業実施区域と事業実施区域外が調査できるように、台上についても、事業実施区域内と事業実施区域外が調査できるように設定したつもりなのですが、例えばどういった所が不足しているのでしょうか。
緒方委員
例えば哺乳類だと、草地ばかりで、草地樹林地になっている斜面・傾斜地は全然含まれていません。もしかしたらこの辺が住みかになっているようなものがいて、事業地がその行動範囲になっているという様な場合もあり得ます。鳥類は割と比較的まんべんなくされているようですが、昆虫・クモ類についてもやっぱりそうですね。樹林地に相当する様な傾斜地、あるいは傾斜地の下の方の部分は全く含まれてないということなので、出来れば生態系をこのように分けておられるのであれば、それを全部包括する意味で調査地を適切に設定する方が良いのではないかと思います。例えば、昆虫類や哺乳類でしたら、傾斜地の樹林地・草地を含むような範囲をモニタリングする方が良いのではないかと思います。
事業者
計画の段階で、調査ルートは設定しておったのですが、確かに今の御指摘のとおり、トラップが傾斜地で不足しております。これについては、御指摘を受けて再度検討させて頂きたいと思います。
小野会長
事業者のほうで検討していただくということですね。
事業者
補足しますと、傾斜地については当然他の場所とは違う環境になっていますので、調査すべき地域として検討したのですが、かなり傾斜がきつく、調査する上で、かなり危険性があるということが設定していない理由でもあります。
それに加え、植生から見て重要な種が生息していないだろうという判断のもと、今は調査地域から外しています。
緒方委員
しかし、樹林地はここにしかないのでしょう。
事業者
北東側に少し森林は残っていますが、ここの斜面については、さきほどの理由で今は外しています。
緒方委員
樹林地が出てくるのは傾斜地の下の方だと思います。だから傾斜地そのものよりも、傾斜地の下の部分を含めて調査対象にするほうが良いと思います。
また、底生動物とは、これは水生動物という意味ですね?底生動物だけではないですね?
事業者
はい、水生動物のことです。トラップの件に関しては、危険性等の理由で原案では調査地点から外していたのですが、傾斜地のふもとの辺りで設置できないわけではないので、設置する方向で検討させていただきます。
山元委員
全体を通してですが、環境影響評価をやる場合には、工事中と完成後を予測すると思います。今回、工事中のばい煙や騒音等を予測するようですが、工事が異常に長く、事業終了後は100年後ですよね?また、完成後の地形も含め、工事中に環境が刻一刻変化していくわけですから、工事期間が異常に長いことを、ある程度考慮する必要があるのではないかと思います。
小野委員
今の質問は、工事開始からの環境モニタリングをどうするのかという趣旨ですね。
事業者
事業が長期間に渡ることからモニタリングについても対応いたします。
小野会長
そうしてください。
林委員
緑化工事と環境保全措置との関連はどのように考えたらよいのでしょうか?
事業者
方法書の環境保全措置の部分に、緑化措置について、私共の協会の指針や緑化の事例を紹介して、説明しております。
小野会長
今の質問は、緑化と言うけど何をどのようにするのかという質問ですね。どのようにお考えですか?
事業者
表土堆積場については全面緑化を行います。
小野会長
どんな種を植えるのですか。
事業者
出来る限り在来種と考えておりますが、緑化の速さを考えて、環境に影響を与えない形の外来種もあるかもしれません。草の類です。表土の洗掘を押さえることが主な目的となります。その後、支木していって木になっていくものもあるかもしれません。まずは草地化することを重点に実施したいと思っています。
森下委員
それが一番問題なのです。どういう事かというと、そこで植えられたものが、北九州全体の植生を荒らしていくという事があるので、それは何にもしないほうが一番良いのです。伊吹山でもその様だし、全国鉱山の跡地は、何か緑化をしないといけないという強迫観念みたいなものでやってきて、その事が全体を悪くしている、とんでもない事なのです。あそこにある植生は、60年、70年かかり、やっと出来たもので、それをとってしまえば、条件としては、それがまた60年、70年かかり、あの植生ができることを待たないといけないのです。それが今の考え方なのです。
それから、先程緒方先生からの意見がありましたが、この地域に貴重種がいないだろうから調査地域に選んでいないと事業者は言われましたが、斜面には斜面の環境特性があって、その斜面の特性は貴重種の生息・生育の有無ではなく、現在置かれている環境がどうなのかという事を明らかにしないといけません。これは今の環境省の考え方である普通の自然環境をどれぐらい普通に守っていって、自然が自分で回転するものをいかに大事にするかということにあわないのです。今は、貴重種だけを保全すれば良いという考え方ではないのです。貴重種がいないからやらないという言葉を先ほど使っておられましたが、それは凄くいけません。普通にそこにある自然環境を、どれぐらい大事にしようかというのが里山構想にまで来ている日本の自然観の考え方の問題です。
もう一つは、たくさんの川の源流がここにあるのです。その源流は紫川に入るわけですが、紫川は、北九州市が30年かけてきれいにしようという事を一生懸命やってきた川です。それを、ああいう濁水がしばしば出てきて、100年にも渡ってその濁水が出てくる様な事になると、何をしているのかという事になる。北九州市は、企業優先の環境なんかどうでも良いのか、企業にはやりたい事をやらせるような市ですかと聞かれた時に、どのように風にお答えをされるつもりなのか。これだけ一生懸命紫川をきれいにして、イベントもやってきているのに、あそこから永遠に濁水が出続けると河床の状態、生物が変わり、それに合わせて、全体が変わっていくわけですから、その100年の予測は絶対に先にして頂かないとこの環境影響評価の評価が出来ません。今日のような状態でシルトを含む水がずっと続けて流れてくれば、100年したら、紫川はドブ川になるかもしれない。その様な予測をきちんと行って次回の審査会にかけていただきたい。現時点では答えの出しようがないです。折角ここまでよくなってきた北九州市で、また茶色い川がずっと流れていき、紫川が嫌な川にならないよう適切な配慮をしていただきたい。水は必ず流れるのです。だからどれくらい大きな貯水池を設け、シルトを流さない様な対策をするかというのは、企業責任でやっていただかないといけない。
小野会長
現在は方法書の段階ですが、今後の準備書への見通しが大変大事になります。一つ目は、緑化については、きちんとした考え方を示してくださいというご指摘です。いろいろな緑化技術がありますが、今までやった事例で褒められるものがあまりないのです。緑にはなっているけれどもどうかなというところが多い。それは時間というものを考えていないのです。それを今森下委員からご指摘いただきました。考えておくように。
もう一つは濁水の問題。今日現地に行ったときにみなびっくりしていて、大清水、小清水というのはもう少し上等な水がでているのかと思っていたら、濁水が出ていました。そうすると、台上を改変すれば、当然濁水が出てくることを皆が思ったわけです。あれを見たのは今日の現地調査の大成果だと思います。濁水を排出させてはいけないということがよく思ったわけです。濁水処理については、様々な面から充分に対策を打ってください。これは非常に深刻であろうと思います。これは方法書に記載されてもよいと思いますが、準備書段階で非常に大きな問題になって出てくると思います。
事業者
貴重なご意見に感謝します。
豊川委員
環境影響評価制度ができてからまだ日が浅いといいますか、年が浅いために、この環境影響評価技術マニュアルも十分とはいえない状況ではないかと思われます。これから長い時間をかかって試行錯誤の上、どのような環境影響評価の手法が良いかということが、徐々に確保されてくると思うのですが、一方環境保全の考え方や基準も厳しくなってくるという傾向にあると思われますので、私共も未来を予測し本来、出来得る限りより厳しい環境評価を想定すべきではないかと考えます。
先ほど加藤委員もおっしゃられましたように今回の事業では一つの山が無くなるというものです。その山のすぐ隣に天然記念物、国定公園というすばらしい北九州の財産がございます。そこは保全しながら、今回の事業区域は開発が認められていて、事業者のものであるということなのですが、影響を受けるであろう国定公園には、ご承知のように地球の自然によって長い時間をかけてつくられた羊の形をした石灰岩の群れがあります。これらの自然の財産が近隣の開発によってどのようになるかということは、なかなか想像しにくい事であり、検証もしがたいことだと思います。しかしながら、長い月日のうちには自然環境に対して現在考えられる以上の影響を与えることは免れられないと考えます。
国や県のマニュアルの中でも、こういった大がかりな開発事業の環境影響評価においては、どのように予測評価を行ったらよいのか、いまだ文章化されていないのかもしれませんが、世界の環境先進国には事例やデータがあるかもしれません。是非この辺りのことを大きな課題点として認識していただきたいと思います。
貴重な北九州の財産の隣で行われる工事ですので宜しくお願いしたいと思います。
小野会長
事業者として、環境保全の姿勢を方法書の中に書いてください。石灰石を採るので、この地域に石灰岩があって、両側が壁になるのでその間を掘るということだけではない。山一つ無くなるとどうなるかということを皆が心配しているわけですから、その影響を最小限に留めたいという姿勢で方法書を書かないと今の答えにならない。十分お考えになって、各方面の知恵を入れながら、しっかりと準備書を作成してください。準備書の審査はかなり厳しいものになると思います。
山元委員
要望ですが、法面の出来上がりをもう少し芸術的ものに、平尾台の景観にマッチした形のデザインが出来るではないかと思うのです。出来ましたら何か良い形に、これが悪いとはいいませんけど、何か知的な形にならないかなと思います。
小野委員
私の専門的な立場からは、哺乳類の調査のところで、調査ポイントを設定しても何も分からない。哺乳類は全体をみなければ駄目です。歩き回って痕跡があったら何かがいるということが考えられる。しかも行動域は500メートル程度ではありません。この地域にどれくらい出入りしているか、出入りの率の方が問題ですから、むしろこれに焦点を当てて調査していただきたいと思います。地域の中で暮らしているのはカヤネズミくらいなものです。あとはみな外から入ってきては出て行っていると思います。移動できる地域が消えてしまうものですから、いろいろな種に対して、この観点から評価が必要だと思います。調査地点を決めすぎていると感じました。
さて、時間がきましたので、本事業に係る方法書の審査はこれで終わります。いろいろ指摘がありましたので、適切に対応してください。
(2)西小倉駅前第一地区高層建築物建設事業に係る環境影響評価方法書の審査
事務局からこれまで手続きとして行われた縦覧(5名)及び意見書の提出(0件)の状況について報告を行った。次に、事業者から方法書の内容について説明があり、質疑応答及び審査が以下のとおり行われた。
小野会長
それでは問題点について、それぞれご質問、ご指摘をお願いします。
嵐谷委員
基本的には大気に関する環境影響評価が中心となる事業であると思うのですが、大気質としてなぜ二酸化窒素と浮遊粒子状物質だけを選定したのですか。環境省が告示している大気汚染に関わる環境基準は10項目あるはずです。工事用車両のディーゼル車であれば、窒素酸化物、また、黒煙の浮遊粒子状物質を選定したことは良いのですが、硫黄酸化物は関係ないということであれば、なぜ環境基準値となっているベンゼン等のVOCを環境影響評価項目に選定しないのか。大気質に関する環境影響評価項目の中で二酸化窒素と浮遊粒子状物質だけにした理由を説明しないと片手落ちではないかという気がします。その点を質問したい。
事業者
ただ今のご質問は、建設機械による大気質への影響かと思いますが、建設機械の予測を行うにあたっては、その源単位を用いた拡散計算を行うことを予定しております。現状において、例えば建設機械からのベンゼン等の排出源単位を使用した拡散シミュレーションが、一般に実施されている例はほとんど無いかと思われます。当方においても排出源単位自体がきちんと確立されていない、手法がきちんと確立されていないと認識しておりますので、今回は項目として選定しておりません。
嵐谷委員
予測に関する拡散式とは別として、例えば建設車両、工事用車両から当然ベンゼン等のVOCが出てきますので、工事用車両の台数と、現状の濃度が分かれば、排出量の推移が分かるのではないでしょうか。拡散式が無いから予測しないという論理には納得できないのです。
事業者
ご指摘頂いた通り、式が無いから予測できないというわけではないと思いますが、ただ事例自体もあまりない状況ですので、定性的な表現等であれば、記載することが出来るのではないかなと思います。
嵐谷委員
なぜ大気汚染に関わる環境基準が、昔に比べたら10項目に増えてきたかという所は認識していただかないといけないと思います。過去は5項目で良かったのですが、特に発ガン性等を考えた時に、ppbオーダーと非常に濃度の低い基準値が採用されています。今後新しく事業を実施される場合には、その点を留意した上で環境影響評価をされた方が良いと思います。
事業者
計画を考えるにあたって、工事中の環境影響が発生するという問題は認識しておりますので、環境保全措置として、低排出ガス対策型の建設機械の採用に努めることを考えております。
先程申し上げたとおり、なかなか予測するのが難しいという状況ですから、定性的なもので示させていただきつつ、負荷があまり増えませんでしたという形に出来れば一番良いのかなと考えています。
野上委員
今の質問に関連して、予測式がないという事ですが、経済産業省が無償で配布しています拡散プログラムの中には、例えばドライクリーニング屋から排出されるそういったVOC等を拡散予測できるようなツールもあります。式がないことはないと思いますので、是非そういったツールも使いながら、予測していただければと思います。
事業者
先程ないと申しましたのは、排出の源単位です。建築機械がどういう稼動状況で、どう使った場合にどれくらいのベンゼンが排出されるのかについて、きちんと示した資料が手に入らない限り、拡散予測式に載せる事が難しいという意味です。
小野会長
以上の質疑でその問題はクリアしたことにします。
他の点について意見がありますか。
牛嶋委員
このような高層建築物の場合、ご指摘の通り景観、日照、風害あたりの項目が供用後の環境影響として最も検討すべき項目だと思います。景観については、調査地点の位置図が記載されているのですが、日照と風害については、特定の場所での調査・予測ではなくて、シミュレーションでお示しになるとのこと。この高層建築物が再開発事業の一部を構成しているということになると、日照、風害、景観等は、周辺の再開発のあり方との関連により結果が変わってくると思うのですが、それはどのように予測されるのでしょうか。
事業者
現在のところ、実は再開発事業を進めている過程で、いわゆる建設を担当する会社や分譲する担当する会社はまだ決まっておりません。今後決定していくそういった事業者に現在行っている環境影響評価の内容をできる限り飲んでいただこうといこうのがまず第一点です。
ですから、今回予測の条件となる計画建物の形や、大きさ等を確実に後に残していくというやり方を取らしていただこうと思っております。
又、早い段階で周辺の住民の方々にも随時ご説明をし、ご理解を得ていくという形で進めていこうと考えております。
牛嶋委員
確認なのですが、ここの選定項目に上がっているような施設の存在・供用に伴う環境への負加は、本建築物のみならず、その再開発事業で構成される他の建築物との相乗効果によっても、可変的だと思います。そうすると私の理解が正しいかどうか確認したいのですが、この建築物以外のものは、建て替え等あるとしても、低層のままが維持されるという前提なのでしょうか。
加藤委員
再開発区域というのは、この高層建築物を建てようとしている範囲が再開発区域なのですか?
事業者
敷地が約2900平方メートルございまして、周囲を四周道路で囲われております。その道路の中心線までを再開発の区域と設定してございます。その周辺は今後の計画ということでこの同じ再開発事業の中でやることはございません。
加藤委員
環境影響評価以前の問題なのですが、この場所で高層建築物に住む必然性は何なのでしょうか。都心居住を勧めるという点は分かるのですが、こういう住み方を構想しなければいけない背景について教えてください。
事業者
市街地再開発事業と申し上げましても、基本はやはり不動産事業でございます。ですから、売れるものを作らなければならないというのが、まず大前提になってしまいます。そういう関係上、最近東京都心でも出来ている高層建築物に目が向いたと言うのがまず1点です。
もう1点は、目の前にリバーウォークが出来まして、2年経ちました。実はこの再開発の計画は27年前からありまして、なかなか実現に至らなかったという経緯があります。その間に目の前にリバーウォークができたために、実はここで建てます建物の7階まで日照が得られない状態になります。実際にリバーウォークの建物の形状による日影のシミュレーションをしているのですが、5階までは1時間日照ぐらいしか得られない状態です。実はここが問題になりまして、なかなか事業者が決まらない状況がずっと続いております。今回高層建築物を計画した理由は、先程申し上げたいわゆる商品価値を作り出すということも1つにございますが、現状その目の前にあるリバーウォークからの日影の影響を避ける為に高くする必要があったというのがもう一点の理由です。
更に、高くする以上はボリュームも大きくなりますので、周辺環境に対する影響を出来るだけ少なくしたいという前提がございます。以前、10数年前に計画していた時は、この敷地の幅いっぱいに建築物が立ち上がる計画を立てておりました。当然のことながら、建物のボリュームが大きくなれば、風の影響、日照の影響、景観に与える影響もそれなりに出てくると思います。あくまでも商品価値になるという前提に立ちながらも、その中で出来る限り周辺への影響が少なくなる建物の形は無いだろうかという流れの中から、細く高くすることで、日影になる距離は長くなりますが、時間は短く出来るだろうと考えました。また、風に与える影響も、実は今計画している建物は、ほぼ正方形の物が立ち上がるようにしておりますが、出来るだけ小さくすることで影響も少なくなるだろうと。そういった配慮も踏まえて、実はこういう建物の形が出来上がりましたというのが経過の説明です。このような経過により、こういった形を考え出し、今、事業化に向けて動き出しているという状況です。
小野会長
他にございますか。160戸の住宅が増えるわけだから、周囲の車が増えて困るのではないかという点ですが、これは実は建物のアセスの中では、道路の問題が取り上げられない。結局、市が道路の対策をやらないと仕方がないということで、市の方でもそれを考えているようですが、果たして解決が出来るか。今日通ってみただけで、あれだけ路上駐車がありますから。実は高層建築物ができると必ず道路の問題というのは出てくる訳で、東京ではそのため高層建築物の反対運動が出ています。そういう事例もありますので、やっぱり交通の問題は環境影響評価ではないのですが、影響評価には間違いないので、考えておかないといけないと思っています。道路交通量についても調査・予測を行うようですが、準備書でどのように書くのか考えておかないといけないと思います。
坂井委員
事業の目的のところに、「環境に配慮した建物・都市型共同住宅」とありますが、具体的にどの点が環境に配慮した内容になっているのでしょうか。環境アセスメントでは曖昧な表現は極力避けるべきで、企業であれば、どの点が環境に配慮した点なのか説明する必要があると思います。
事業者
今回に関しては、先程申し上げたとおり、周りに対する日照や風害等の環境影響をいかに少なく出来るかという配慮をしているという点で、環境配慮ということを書かせていただきました。また、今回100メートルを超える建築物を計画し、環境アセスメントの手続きをとるということになりましたので、このことも踏まえて、より良い物を作っていかなければならないという事を考えながら書かせていただいたということが正直な所です。
豊川委員
今後の環境影響評価の手法という事になると思いますがお尋ねいたします。今回、風のシミュレーションをされますよね。おそらく、周りがあっという間に高層化するような所ではないと思われますが、この高層の建物の影響というのは、しばらく取りざたされるのではないかと思います。例えば新宿では、一番最初に高い建物が一つ建った後、同様な建物がどんどん建設され、誰が悪いのか分からなくなり、最終的にはそのあたり全体がビル風の吹く地域という事になりました。最初の一つ目というのは責任が重いと思います。ですから、慎重に色々と事前調査をしてシミュレーションしておいた方が良いのではないでしょうか。その中でも特に「ヒートアイランド」はこれからの都心で非常に問題になってくる事項と考えます。今のところ方法書には項目としてないように見えますが、一応、この件によってどれくらい温度が上がるか、先ほど環境に配慮した点についてお話がありましたので、それに対して検討されている事があれば、参考までに付記されたらどうかと考えます。というのは、今後次々に建物が建つ時にも、こういう既成事例で、ヒートアイランド化防止への配慮がなされたということがあると、建築される方達が定量的な数値も出しながら、より深く検討していただけるのではないかと思うからです。少し今回の方法書の項目の範囲を逸脱しているのかも知れませんが、お願いしたいと思います。
小野会長
はい、ありがとうございました。
野上委員
一連の環境に配慮した点ということに関して、先程の経緯を聞いていましたが、この事業については、かなり歩道の部分を広く取りました、また、その周辺に木をできるだけ植えますとおっしゃっていますね。逆にその環境配慮の効果を前面に出してはどうでしょうか。今歩行者が歩いている道路については、夏にかなり照り返しがあって暑いのではないかと思います。それに対して、例えばこの敷地でこれだけ歩道を広げて、場合によっては歩道部分も吸水性のあるようなブロックを使い、且つ、木もあるとすると、ここを歩く歩行者はかなり快適に感じるのではないかと。最近そういう技術も出ていると思います。現状のそういったことを測って、その後こういうものができた時にここを歩く人たちは、これだけ快適になる可能性があるよという予測は可能だと思うのですよ。そういった点を入れてみてはどうでしょうか。
また、この道が広がると、風がリバーウォーク側にも抜けることも考えられるので、上空のビル風は別として、この通路に風が逆に流れやすくなり、そういう面で涼しさも出てくる可能性もあると思います。その辺りもう少し緻密に、調査して予測すれば環境に配慮したという内容が大きな点にはならないかもしれませんが、もう少しきちんとした調査に基づいて言えるということになるのではないかと思います。
小野会長
ありがとうございました。準備書作成時に、今の注意を活かしていただいたらと思います。
加藤委員
景観について、眺望点なのですが、高速道路からの視点が必要な気がするのですがどうでしょうか。それからもう一つは、ごく至近距離というのでしょうか、この建物の裏の2階、3階建てくらいの低い所から、どのように見えるか。
事業者
高速道路についてはどのようなやり方をするか検討させて頂きたいと思います。
小野会長
高速道路からは塀ばっかりで見えないのではないでしょうか。
事業者
おそらく運転している人からは基本的に見えないと思いますが、例えば、高速道路から近い位置に立地している大規模な建築物については見える場所もあると思います。今回の景観の予測地点選定の考え方なのですが、これは、特に市民に利用されていて、景観を形成するポイントになる建物の背後に今回の建物がどのように見えるかという考え方を中心に選定しています。
何点か申し上げますと、小倉城の背景に今回の建物がどのように見えるか、また市役所を中心とした勝山公園から見た時にどのように見えるか、また勝山橋、紫川、周辺の道路から見た時にどのように見えるか、一般的な歩行者や、車両からの景観をイメージして、選定させて頂きました。先程お話がございました、高速道路に関してはなかなかポイントという訳にはいかないものですから、ずっと見えている風景がどんな風になるかというものですね。
小野会長
景観の観点から格好悪かったら設計を全部やりかえるのかと言われると、そんな気は全然無いのでしょう。景観は、環境影響評価項目の中では補足的な部分だと思います。景観については、本当は設計段階からやらないと駄目だと思います。これはもう都市計画の問題になってくるのですね。根本的にやり変えるのは不可能ですから、むしろ景観よりは先程からご指摘いただいている建築物の建設工事や供用による環境影響がありますから、その点を適切に対応頂かないといけないと思います。
この後、事務局から今後のスケジュール説明及び閉会挨拶があり、終了した。
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