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第18回議事要旨(平成20年3月7日開催)

更新日 : 2022年6月27日
ページ番号:000003055

1 日時

平成20年3月7日(金曜日)13時20分~16時30分

2 場所

ホテルクラウンパレス小倉 9階「アルタイルの間」

3 出席者

会長
 
小野委員

委員
 
嵐谷委員 牛嶋委員 緒方委員 加藤委員 豊川委員 野上委員
 林委員 藤井委員 松藤委員 森下委員 山元委員 渡辺委員

事業者
 
響灘地区製鋼工場建設事業:寿工業株式会社
 加熱炉・熱処理炉増設事業:日本鋳鍛鋼株式会社
 北九州市都市計画道路6号線整備事業:北九州市

事務局
 
環境局環境監視部環境保全課 (環境監視部長他2名)

4 議題

(1)響灘地区製鋼工場建設事業に係る環境影響評価準備書の審査

(2)加熱炉・熱処理炉増設事業に係る環境影響評価方法書の審査

(3)北九州市都市計画道路6号線整備事業に係る環境影響評価方法書の審査

5 議事要旨

 審議に先立ち、「響灘地区製鋼工場建設事業に係る環境影響評価準備書」、「加熱炉・熱処理炉増設事業に係る環境影響評価方法書」及び「北九州市都市計画道路6号線整備事業に係る環境影響評価方法書」の審査について、環境影響評価審査会に諮問を行った。

(1)響灘地区製鋼工場建設事業に係る環境影響評価準備書の審査

 事務局からこれまで手続きとして行われた縦覧(1名)及び意見書の提出(0件)の状況について報告を行った。次に、事業者から準備書の内容について説明があり、質疑応答及び審査が以下のとおり行われた。

小野会長

 ただ今の報告・説明につきまして、これからしばらくの間、ご意見を賜りたいと思います。ご質問がありましたらどうぞお手を挙げてください。

野上委員

 大気質の二酸化硫黄の予測をされていますが、二酸化硫黄の起源は化石燃料だと思うのですけれども、燃料の種類は何なのでしょうか。

事業者

 A重油を考えております。

野上委員

 もう一件よろしいでしょうか。二酸化炭素に係る予測・評価について、準備書では二酸化炭素の発生要因として「化石燃料の燃焼」、「電気の使用」、「電気炉の炭素電極」の3つに分けて書かれていますが、工場の設備別に評価するということも可能だと思いますが、いかがでしょうか。

事業者

 設備別に算出していきたかったところですが、施設の詳細がまだ明確ではございません。今ここに出している数字以外は寿工業の広島工場にある同様の施設を参考にして出した値を出しておりますので、詳細を区分するのは難しいかと思っております。

野上委員

 承知しました。工程別で改善の余地がありそうな箇所と改善が難しい箇所があると思いますが、改善する余地がありそうな工程に関して、改善策を講じれば二酸化炭素をどれくらい下げれるかということを併せて記載することは可能でしょうか。

事業者

 今後事業計画をきちんと詰めていく中で、今のご意見を充分踏まえて計画していきたいと思っております。

小野会長

 ちなみに今のご質問とご答弁ですが、評価書に関わる部分になろうかと思いますので、評価書にそのことを書けるのであれば書いた方がよろしいと思います。準備書というものは、その内容について課題を出すものであります。評価書はその課題に対する回答を書くものですから、そういう意味では、評価書に書いていただければよろしいかと思います。他の点でご質問・ご意見はございませんか。

 環境影響評価に関わる項目ではなかったのですけれども、緑化計画について先ほど口頭で説明がありましたが、それは環境影響評価図書のどこに書くのですか。準備書でもなく評価書でもないという感じがするのですけれど。先ほどは建設上の心構えとしてご説明していただいたと思うのですが、環境影響評価に関わることのようにも思われます。

事業者

 先ほどご説明いたしましたように、緑化につきましては地域に合った樹木の植栽等をこれから検討してまいりたいと思っておりますが、可能なものについては、評価書にも基本的な考え方を書かせていただこうと思っております。

小野会長

 準備書には記載していないですよね。

事業者

 はい。これから充分検討して書き込める部分は書き込ませていただければと思っております。ただ、今回の工場の用地につきましては、極めて細長い用地であるということと、特に広い方の土地については、大部分が工場の施設で400メートルくらいの長さの工場になろうかと思いますので、緑地の配置等につきましてはかなり工夫が必要かと思っております。また沿岸部ということもございまして、潮風に強い樹種を選定する必要もございますので、そういったことにつきましても専門家のご意見をいただきながら検討してまいりたいと思っております。従いまして、現時点で評価書に書くとしても基本的な考え方になりますが、具体的な植栽計画については事後調査時に報告させていただければと思っております。

小野会長

 わかりました。方法書に対する市長意見として出てきた事項でありますので、図書の中に記載しておく必要があると思ったものですから。評価書にお書きになってもちろん構わないと思います。よろしくお願いします。

 他にございませんか。ご意見がなければ、これでいいということにいたしますので、1つ目の審査案件である「響灘地区製鋼工場建設事業に係る環境影響評価準備書」の審査をこれで終了いたします。

(2)加熱炉・熱処理炉増設事業に係る環境影響評価方法書の審査

 事務局からこれまで手続きとして行われた縦覧(2名)及び意見書の提出(0件)の状況について報告を行った。次に、事業者から方法書の内容について説明があり、質疑応答及び審査が以下のとおり行われた。

小野会長

 はい、ありがとうございました。ただ今の説明につきましてみなさん方の意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。どうぞ、緒方委員。

緒方委員

 本質的なところではないのですが、後半でご説明いただいた環境影響評価項目の選定のところも日本鋳鍛鋼さんがなさるのですか。

事業者

 環境アセスメントの委託を受けております九州テクノリサーチと申します。私どもの方で今回の調査をさせていただきたく存じます。

嵐谷委員

 コークス炉ガスの成分と、土壌汚染がコークス炉から出てきたポリウレタンの落下によるものか、それとも産業廃棄物等の副産物の残渣等の処理のときに付随して起こってくるものなのか示してください。

事業者

 一般的にCOGと我々が呼んでいるコークス炉ガスは、八幡製鐵所のコークス工場で石炭をコークス化するときに発生する副産物です。これは製鐵所内で燃料ガスとしてよく使われるものでして、メインの成分は水素が50%、メタンが30%、一酸化炭素が7%、残り窒素云々というようなガスです。製鐵所内ではこのガスが時間当たり約10万ノルマル立方メートル(1時間あたり)くらい発生しております。それを日本鋳鍛鋼を含めた製鐵所内の熱延の窯や、八幡製鐵所内にあります戸畑共同火力こちらでも使われております。その一部を私どもは新日鐵八幡製鐵所から買い取るという形で、この燃料を使って今までにも加熱炉、今回4基増設しますけれども、それ以外の加熱炉も全部、このガスを燃料として使っているという状況です。

嵐谷委員

 石炭からコークス化するときに出てくる副産物のガス以外の粒子や二酸化いおうは関係ないのでしょうか。

事業者

 それは八幡製鐵所の方に責任があるというふうにお考えになっているわけですか。

嵐谷委員

 品質の悪い石炭は硫黄成分を多く含んでいますが、使用する石炭燃料について示してください。

事業者

 申し訳ありません。我々は発生しているガスを買っている方なので、供給側の設備についてはあまり詳しくないので申し訳ありません。

嵐谷委員

 了解しました。

小野会長

 今回の事業に関わるのはCOGだけですから、言うなればリサイクルですから。

嵐谷委員

 土壌汚染の原因はCOGによるものなのか、搬入するときのトラックや産業廃棄物等の処理によるものなのか、どのようなことによるものでしょうか。

事業者

 今回の事業では、土壌汚染が起こるおそれはないというふうに判断しております。建設残土として敷地の外に持ち出すことによる影響ということで、持ち出す土壌が汚染されていないかどうかを事前に確認したいというふうに考えております。

嵐谷委員

 了解しました。

松藤委員

 土壌汚染と廃棄物の予測・評価については、類似事例等を参考にするという説明だったのですが、具体的にどのような事例なのでしょうか。非常に歴史の古い工場なので、類似事例についてもう少し具体的に教えていただければと思います。例えば廃棄物の予測でも類似事例等、施設の増設をたびたび行っているのであれば、これくらい廃棄物が出るとかいうのは比較的予測しやすいのですが。

事業者

 お答えいたします。建設工事の方の類似事例につきましては、処理方法について、発生した廃棄物等の出てくる種類に応じて他の工事ではどのような形で処理されているのかということを参考に推定していくということを考えております。土壌につきましては、今回の場合には、まず現況調査という形で土壌汚染の有無を調査します。その結果、土壌汚染があった場合には、その処理方法について他の事例では物質ごとにどういう処理をしているのか、というものによって影響があるのかないのかを推定していくということを考えております。

小野会長

 評価項目としてこの項目が抜け落ちているなど、そういうことを具体的に仰っていただいた方がいいのですが。例えば「土壌環境について、工作物の存在及び供用についても評価項目に選定すべきではないか」とかですね。そういうふうにおっしゃっていただいた方がよろしいかと思います。他にはよろしいですか。

野上委員

 項目の追加ではなく手法に関することです。一点は大気質のところで方法書の3-2、3-3ページの風況で戸畑観測局のデータを使うということですが、3-2ページに戸畑観測局の風向の分布が記載されているのですけれど、要するに北西の風がかなり強いですよね。そうすると、今回の位置関係からいうと、戸畑観測局は今回の事業実施場所から見ると南西の方角になってしまうので、逆に南東方向のデータも併せて見る必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。ずれていると言うのは言い過ぎですけど、風向が戸畑観測局のデータだけでは足りない可能性があるのではないかと。

小野会長

 クライアントさんでも結構ですし、コンサルタントさんでも結構ですのでお答えください。見当外れではないかと言われているのです。

野上委員

 充分ではないのではないかと。

事業者

 一応戸畑観測局と今回の事業地は1.5キロメートル程度しか離れておりませんので、風向に関しては戸畑観測局のデータが同じような形で使えると考えているのですけれども。あと、年平均値ということで必ずしも北西の方向だけを見るということではありませんので、先生の仰っていることが今一つよくわからないところもあるのですけれども。

野上委員

 もっと具体的に言えば、製鐵所がらみから飛んで来る粉じんも含めて、その被害が最も出ているのは、この図の南東の方の地域、そっちの方が工場にも近いですね。本当はそこで測るのが一番いいのですけど、今設置して測るということではないと思うので、そこから見ると戸畑観測局というのはちょっとずれていますよね。

 かつて公害がひどかったときもここで仮定した風向というのは、北西から吹く風が一番影響があるじゃないかということで検討もされていたと思うんですね。ただし今回は、製鐵所からのものも全部含んだデータがそこで測られているので、この事業に限った部分を取り出すのは難しいかもしれませんが、ただ一番影響が出やすい地域というのはちょっとずれているのではないかと思います。何らかの形でそこの状況はどうなっているのかということを調べる必要があるんじゃないかという意見です。

小野会長

 今のご意見は1地点だけで予測・評価をするのではなく、複数の地点で予測・評価しなさいというご意見だと承っておきます。それでよろしいでしょうか。他にはよろしいですか。

野上委員

 もう一点です。温室効果ガスの予測について、COGがこのまま全部燃えたとして計算はすぐ出ます。ただ一方でCOGは水素を50%も含んでいて、非常に二酸化炭素の排出量が少ないガスだと思いますが、八幡製鐵所側が、その分元々余っているから売るのか、COGがこちらに持ってきた代わりに大元で石炭を使用するとトータルとしては二酸化炭素が増えることになるのですが、その辺りを含めた評価というのはどのように考えていますか。

事業者

 八幡製鐵所の発生するCOGは先ほども言いましたけれども時間当たり10万ノルマル立方メートル(1時間あたり)なんですけれども。当然山谷があって、最初の凸凹は戸畑共同火力の方がCOGとLNG、この両方を使えるようになっています。例えば今回うちの分にCOGが余ったら、その分戸畑共同火力のCOGが減って、LNGが増えるというような形、全体の燃料のバランスとしてはですね、という形になります。

野上委員

 したがって、石炭とか重油とかが追加して入ってくるということはないということですね。

事業者

 はい、ありません。

小野会長

 ご了解いただけましたらそれでよろしいと思います。どうぞ。

嵐谷委員

 温室効果ガスの中で、二酸化炭素が重要でありますが、COGの中にメタンが30%含まれています。メタンも温室効果ガスの1つで、二酸化炭素1分子と比べたら温室効果の寄与率は高いです。温室効果に対して、今回メタンガスについてはどのようなのでしょうか。

事業者

 COG中のメタンにつきましては、今回燃やすという手法をとりますので、基本的には二酸化炭素として排出し、メタンのままで出るということはないと考えております。

小野会長

 了解していただけましたか。他にございますか。議論は一応出尽くしたように思いますので、「加熱炉・熱処理炉増設事業に係る環境影響評価方法書」の審査をこれで終了いたしたいと思います。

(3)北九州市都市計画道路6号線整備事業に係る環境影響評価方法書の審査

 事務局からこれまで手続きとして行われた縦覧(3名)及び意見書の提出(8件)の状況について報告を行った。次に、事業者から方法書の内容について説明があり、質疑応答及び審査が以下のとおり行われた。

小野会長

 はい、ありがとうございました。環境影響評価項目の選定について説明していただいたのですが、私が気づいたことを先に述べます。工事の実施時における動物、植物及び生態系への影響はないということで、この事業では評価項目に選定していませんが、なぜですか。

 工事では土壌を掘り起こしたり、運搬したりするわけですから、その行為による影響もあるはずです。なぜ予測・評価をしないのですか。

事業者

 方法書に記載している環境影響評価項目ですが、財団法人道路環境研究所が発行している「道路環境影響評価の技術手法」というマニュアルを参考にいたしました。そのマニュアルの所為にするわけではないのですが、会長のご指摘の項目については選定するように書かれておりませんでした。しかし、会長が仰ったとおり、事業実施区域の近くには曽根干潟がありますので、工事の実施による影響が全くないということはありませんので、工事で動物・植物にどのような影響を与えるのか、また、どのような環境保全措置を講じるのかということをけんとうしていく必要があると考えております。

小野会長

 はい、環境への影響が考えられる項目については全部選定していくのが方法書の役割ですから、今申し上げた点については方法書の中に必ず取り上げるべきです。

 今日、委員の皆様には現地をご視察いただいたので、いろいろな点に気づいたのではないかと思います。どのような視点からでも構いませんのでご発言ください。藤井委員。

藤井委員

 軟弱地盤の分布については、どれくらいの範囲にわたったデータをお持ちなのでしょうか。また、そのデータを踏まえた上で、軟弱地盤の改良による影響がないと考えていらっしゃるのですか。

事業者

 小倉南区の吉田~朽網間は計画道路が田んぼの中を通ることになるのですが、この区間については地盤が軟らかいということが判っておりますので、この区間については地盤改良が必要になってくると考えております。ただし、具体的にどのような地盤改良の方法が適切であるかということにつきましては、これから詳細な地盤調査を行い、どのくらい地盤が軟らかいのかということが判明してから、具体的な改良工法を検討します。当然その際には環境に負荷をかけない工法の選定を考えていきたいと思います。

小野会長

 よろしいでしょうか。今回は軟弱地盤の上に道路を作ることになるので、相当気をつけないと沈下します。現に沈下している事例もいっぱいあります。林委員。どうぞ。

林委員

 鳥類に関して意見を申し上げたいと思います。まず、今日の現地視察でご覧になったと思いますが、田んぼにカモやサギがおりました。カモやサギは満潮時は地面に足が届きませんので、内陸に移動して休息するわけです。また、田んぼにいたカモのほとんどは陸ガモというグループに入ります。この陸ガモは夜行性で、昼間は海上等で休息していますが、食物を取るときには内陸の浅い川や池に移動します。したがって、これらの鳥は堤防を越えて往来するわけですが、この6号線がちょうどこの堤防と平衡するように敷設するように計画されているため、鳥は内陸を移動するときには、この道路を越える必要があるわけです。

 鳥はエネルギー節約のために、できるだけ低く飛んで堤防を越えますので、もし道路の両側に植樹をしていないと鳥が車に衝突する事故、いわゆるバードストライクが起こり、これは鳥だけではなく人間の事故にも繋がります。

 これを防ぐには、方法書に記載されている道路のイメージ図のように、道路の両側に樹木を植えることが最も有効であると思いますが、この場合、どのくらいの高さの樹木を植えるのかという問題が生じます。よって、どんな種類の鳥が、いつ、どれくらいの高さの位置を通過するか現地調査を行う必要があると思います。

 次に、鳥類の繁殖や貴重種について、事業実施区域及びその周辺において何種類かの貴重種を含んだ鳥が繁殖した事例があります。これは、毎年同じ場所で繁殖するというわけではありませんので、やはり専門知識を有した方への聞き取り調査を実施する必要があると思います。以上2点、意見を申し上げました。

小野会長

 一点は鳥の移動に関する調査を実施するのかどうか、もう一点は鳥類に関する情報の聞き取り調査を実施するのかどうかということです。お答えください。

事業者

 お答えします。事業実施区域及びその周辺における鳥類に関する調査が平成7年から平成17年までの間に多く実施されていることから、鳥類に関する評価については、これらの調査の結果を収集・整理することにしています。しかし、方法書の5-37ページにも記載しておりますが、鳥類に関する新しい情報が得られた場合には、別途、現地調査を実施するように計画しております。我々としては、充分地元の調査団体、具体的には日本野鳥の会北九州支部などにご相談しながら、現地調査の方法を明確にして調査を行いたいと考えているところです。それから、繁殖に関する調査につきましても、地元の方と充分協議しながら計画を立てて調査を実施したいと考えております。

小野会長

 それは2つ目の質問に対する回答ですね。1つ目の鳥類の移動を評価項目に挙げていないというご指摘についてはどうなのですか。

事業者

 鳥の移動に関する調査についてですが、これまでの調査においても鳥の移動に関するデータがほとんどありませんでしたので、この件につきましても充分調査を行いたいと考えております。

小野会長

 よろしいですか。はい、森下委員。

森下委員

 方法書で環境影響評価項目として挙げられている項目については、最低でも実施すべき項目であると思うのですが、工事用車両の運行や盛土工の実施、橋梁の基礎掘削など工事の実施に伴う生態系を形成している動植物への影響について予測・評価すべきであるか再検討すること、また、景観及び人と自然との触れ合いの活動の場についても、工事の実施に伴う影響がないか検討した方がいいと思います。

 さらに、曽根干潟は北九州市内だけではなく、日本全国から非常に注目されている場所なので、マニュアルに沿った評価項目の選定や予測・評価の実施だけではなく、今は基準になっていない事柄も付加することをお勧めします。と言いますのは、「動物」、「植物」という形で別個に考えるのではなく、動物と植物が現状でどういう関係にあって、この事業を実施することで、その影響が動物と植物の関係のどの部分に及ぶのか、そして生態系がどのように変化していくのかということをきちんと予測・評価することが、北九州市が道路を作る上での役割だと思いますので、是非そういうことを視点においてやっていただきたい思います。

小野会長

 マニュアルに捉われずに生態系の総合評価をちゃんと行ってほしいというご意見でした。他にご意見はありませんか。加藤委員。

加藤委員

 水環境という観点から見ますと、曽根干潟というものは希少な環境資源だと思いますが、干潟の内側にある潮遊溝はおそらく生態系にとっても、景観資源としても非常に重要なポイントだと思います。道路の敷設ルートは流動的であるようなお話もありましたので、ここで主要なポイントの中に干潟や河口だけではなく、潮遊溝の部分も含めて評価をするような形にしていただければと思います。

事業者

 潮遊溝は調査対象に入っており、水質・生物関係の予測・評価を行います。また景観については、後背地に大きな山があるのですが、その山から6号線までは6キロメートル程度の距離がありますので、むしろ今日委員の皆様に行っていただいた堤防の上からの、潮遊溝を含めた景観について検討するよう考えているところです。

小野会長

 先ほど森下委員が仰った人と自然の触れ合いについてですが、触れ合う場所や人が自然と触れ合っている状況を調査すべきだと思います。事業実施区域周辺ではバードウォッチングが非常に盛んに行われていますので、年間どれくらいの人が来ているのか、またもう一つの問題は、現地は漁業者との関連性が大きいと思います。そのことは必ずアセスメントで取り上げた方がいいと思います。

加藤委員

 景観の点で少し補足したいと思います。景観というものは目に見えるものだけと考えがちですけれども、あの潮遊溝は干潟を形成するときに必要不可欠な空間だと思います。干拓の歴史的な景観という意味でも貴重だと思います。ですから、景観といった場合には、ただ視覚的な景観だけではなく、そういう文化的・歴史的な景観という観点で捉えることも重要かと思います。

事業者

 方法書の3-105ページに事業実施区域及びその周辺の歴史的・文化的遺産を取りまとめています。これらの遺産に加えて、いいんのご指摘について検討を進めていきたいと思います。

小野会長

 ありがとうございます。はい、山元委員。

山元委員

 道路上に降った雨が与える影響については予測・評価しなくてもよろしいのでしょうか。

事業者

 通常の道路における排水で言いますと、雨水は汚れていないと考えておりますので、今回道路を整備した後に車道及び歩道に降ってきた雨については河川へ排出するように考えております。

森下委員

 酸性状態にある湿地帯へ、コンクリートでできた側溝を通ることでアルカリ性になった排水が流入しますと、湿地帯が中性に変わっていきます。そうなると日本の場合は、湿地帯にたくさん外来種が入ってきます。ですから、道路に降った雨が側溝から流れてくるときには充分注意をしないと、植生が大きく変化します。これは近畿の宇治川において重点的に議論されてことなので、湿地帯に水が流入する場合には、充分な調査を行ってから側溝の位置を決めた方がよろしいかと思います。

山元委員

 補足していただきありがとうございます。工事の実施に係る水質の予測・評価は実施するようにされていますが、道路供用後については、予測・評価を実施しないようになっていますね。

事業者

 私自身、道路の排水を潮遊溝に流すのは難しいのではないかと思っております。今日現地を視察された委員の皆様はご存知かもしれませんが、潮遊溝の周辺には4本の河川がありますので、河川へ雨水を排出すべきではないかと考えております。道路からの排水をどこに排出するかということにつきましては、まず潮遊溝をどうするかということ、そして今ご指摘のあった潮遊溝内の水質がどのようになっているのかということ、さらに潮遊溝にはどのような生物がいるのか、そのようなことを総合的に含めた上でどの位置に道路を作るのか、そして、道路からの排水をどのように処理するのか検討していきたいと思っております。

小野会長

 方法書というものは本来、道路のルートが決まってから作成するものです。今のところ、予定ルートに200メートルの幅を持たせているわけですよね。まだルートが1本の線に定まっていないのです。今後実施する調査の結果をもってルートを決めると仰っていますが、図を見る限り、潮遊溝を潰すこともありうると考えているのですね。

事業者

 潮遊溝を潰す可能性はゼロではありません。6号線の位置をどこにするかについては、これから調査・予測・評価を行った上で、環境の保全の見地からルートを決定したいと考えております。

森下委員

 あの潮遊溝のように放置されて、誰も利用しないままに残されている場所が、実は事業の実施による影響を一番受けるんです。建設関係の方は潮遊溝がなくなれば、周りもきれいになり、管理もしやすくなるからいいのではないかと考えられるけれども、潮遊溝そのものがなくなってしまうと、一見何でもないようだけれど、実は干潟の動植物も影響を受けるという非常に微妙なところがあり、たぶん生物の専門家と土木の専門家では価値観が全く違うんですよね。手をつけられないまま放置しているものほど値打ちがあるということに視点を置いてもらって、予測・評価を行ってください。

事業者

 一言補足させていただきます。先生は潮遊溝を潰すと思われているかもしれませんが、潰すかどうかはこれからの検討事項で、潮遊溝には環境面の問題もありますが、近隣には田んぼもありますので農業関係者、また直接は関係ないかもしれませんが漁業関係者など、潮遊溝に関係する方々と充分話し合って、潮遊溝をどうするのかということを検討していく予定です。環境面は二の次でいいというようなことがないようにしたいと思っております。

豊川委員

 今の回答をお聞きしていると、潮遊溝は絶対に残しておかなければならないという感じなのに、方法書の図を見る限り、潮遊溝がなくなる可能性があるという状況について、皆さんがとても心配されているところではないでしょうか。

森下委員

 今の潮遊溝は水質が酸性で、野生生物にとって一番いい状態になっていて、外来種が非常に入りにくくなっている状態が維持されているのです。もし潮遊溝内に新しいコンクリートを打ち込むようなことになると、それが外来種の入ってくる要因になります。

事業者

 すみません。先ほどの私の説明について誤解されているかもしれませんので、少し補足させていただきます。私が先ほど潰すと話していたのは、潮遊溝自体をなくしてしまうという意味ではなくて、今の位置からは移動させるかもしれないという意味です。潮遊溝を残して、その横に道路を作るのか、それともこれはあり得るかどうかはわかりませんが、潮遊溝を生かしておいて、その上に道路を作るなど、いろいろなケースを想定しながら決めていきたいと考えておりますので、潰すということではありません。

加藤委員

 あの潮遊溝は干拓をするときに、潮遊溝までは潮が入ってきてもいいけど、田んぼには潮が入ってこないようにするために作られたものだと思います。ですから一番先の堤防には潮遊溝が矢張り必要なのではないでしょうか。もう一つ先に別の堤防ができれば、今の潮遊溝は不要になると思うのですけれど、今の段階では必要なものであると理解します。

小野会長

 ありがとうございます。野上委員、どうぞ。

野上委員

 環境影響評価項目についてですが、6号線供用後の既存周辺道路における自動車交通量の変化について予測・評価を実施した方がいいと思います。6号線ができることによって、既存道路の交通量が減る分についてはまだいいのかもしれませんが、例えば294号線(井ノ浦港線)や中吉田の25号線の古い道路から6号線方面へ抜ける道があるのですが、6号線ができればこれらの道路の交通量が増える場合があるのではないかと思います。そうなると、既存道路の周りに住んでいる方への影響も大きくなるので、調査項目としてそのようなことも考慮して調査した方がいいと思います。

小野会長

 既存道路の自動車交通量を調査し、6号線の供用後にどれくらい交通量が増加するのか予測してほしいということですが、できますか。

事業者

 既存の都市計画道路5号線や門司行橋線が非常に混んでいるので、6号線ができれば、これらの道路の交通量は減ると考えていますけれど、それ以外の既存道路においては交通量が増える場所もあるのではないかということですね。

 現在、既存の幹線道路を1日に約3万3千台が通っているのですが、6号線ができることによって、そのうちの2万台程度が6号線に回ってくるのではないかと考えています。今ご指摘のあった既存の周辺道路からショートカットしてくる自動車がどれくらいいるのかということにつきましては、予測を行いたいと考えております。しかし、中吉田の道路につきましては元から交通量が少ないので、中吉田の道路を通って6号線へ流入する自動車はほとんどないと考えております。

野上委員

 既存の中吉田の道路は幅が狭いので、自動車交通量が増加すれば、周りに住んでいる人は影響を受けると思います。6号線ができることで利点もありますが、欠点となるところも必ずあるはずです。方法書段階では調査対象とする環境影響評価項目を挙げることが目的なので、調べるべきだと思い意見を申し上げました。調査をした結果、影響は軽微だと判明すればそれはそれで結構です。

事業者

 必要な分については実施しなければならないと考えています。

小野会長

 ありがとうございます。視点を変えて他に何かございますか。牛嶋委員。

牛嶋委員

 環境影響評価項目の選定において、軟弱地盤の改良による地下水の水位への影響については、評価項目に選定されていません。そこで、地盤改良を行ったときに、地下水の水位や地下水の流れに影響が出る可能性があるかどうかを評価する必要があると考えます。もし影響があるとすれば、先ほど問題になっていた、生物や生態系への影響とか、あるいは環境保全措置との見合いを考える必要がありますね。先ほど潮遊溝の上に6号線を作るという話もありましたけど、軟弱地盤の上に道路を作るときに、この地下水の水位について選定項目から外していいのかを教えていただきたいと思います。

事業者

 軟弱地盤の改良に伴う地下水の影響については、地下水の汚れについて評価することとしていますが、今言われました水位につきましては選定しておりません。軟弱地盤の改良により地下水にどのような影響が出るかということで、ここでは地下水の汚れについては評価するようにしていますので、まず現地の地盤がどれくらい軟らかいのかということを調査した上で地盤改良工法を検討します。そのときには地盤改良剤が広範囲に漏れていくような工法をとることには問題がありますので、当然改良剤が他の場所に流出しない、そのような工法というものを検討していきたいと考えています。

牛嶋委員

 私の質問の趣旨は地下水の汚れではなく、地下水の水位及び流れについてです。水位が同じでも流れが変わることもありますね。

事業者

 地盤改良工法につきましては、これから検討することにしており、特に先生方がご心配されているのは、不透水層まで地盤改良して地下水が流れなくなるのではないかということかと思います。それで現状を見ますと、曽根新田地域につきましても地盤沈下の問題は出ておりません。それから護岸につきましても、沈下が発生しておりませんので、ある意味では今回の道路構造は地表式が基本ということで、現在の田んぼのところから1メートルくらい盛土をするような状況になると思います。

 今後詳細な地質精査や調査を実施するのですが、その中で不透水層まで地盤改良をしなければならないのか明らかにし、もしその必要性があれば、地下水についても調査をしなければならないのではないかと思っております。繰り返しになりますが、現在の曽根新田地域の沈下状況や堤防の状況を見る限り、それほど大掛かりな地盤改良工法を採用する必要はないということで、地下水につきましては今回調査項目から外させていただいているという状況でございます。

小野会長

 地下水の水位・流れについて調査を実施するかどうかにつきましては、この場では最終的な回答がすぐには出せないと思いますので、よく検討しておいてください。よろしくお願いします。新しい項目で何かお気づきの点がございましたらお手をお挙げください。

 それでは、質疑応答はこれで終わりたいと思いますがよろしいですか。では、「北九州市都市計画道路6号線整備事業に係る環境影響評価方法書」に係る審議を終了いたします。

 この後、事務局から今後のスケジュール説明及び閉会挨拶があり、終了した。

このページの作成者

環境局環境監視部環境監視課
〒803-8501 北九州市小倉北区城内1番1号
電話:093-582-2290 FAX:093-582-2196

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