平成20年7月26日(土曜日)14時~17時
第19回議事要旨(平成20年7月26日開催)
1 日時
2 場所
ホテルクラウンパレス小倉 9階「アルタイルの間」
3 出席者
委員
穴井委員 伊藤委員 上田委員 小野委員 門上委員 河野委員 楠田委員 篠原委員
勢一委員 薛委員 野上委員 樋口委員 藤井委員 森本委員 山田委員
事業者
合金鉄溶解炉設備建設事業:新日本製鐵株式会社八幡製鐵所
平尾台鉱物採取事業:住友大阪セメント株式会社
事務局
環境局環境監視部環境保全課 (環境監視部長他2名)
4 議題
(1)合金鉄溶解炉設備建設事業に係る環境影響評価方法書の審査
(2)平尾台地区鉱物採取事業に係る環境影響評価準備書の審査
5 議事要旨
(1)合金鉄溶解炉設備建設事業に係る環境影響評価方法書の審査
事務局からこれまで手続きとして行われた縦覧(0名)及び意見書の提出(0件)の状況について報告を行った。次に、事業者から方法書の内容について説明があり、質疑応答及び審査が以下のとおり行われた。
野上委員
大気質の予測のところで、二酸化窒素と二酸化硫黄の発生量はどの位になると想定して予測しているのでしょうか。
事業者
まだ事業計画を詰めている段階ですが、現段階では硫黄酸化物は1.6ノルマル立方メートル(1時間あたり)、窒素酸化物は4.5ノルマル立方メートル(1時間あたり)程度排出するものと想定して事業を進めています。
野上委員
わかりました。この数値は施設がフル稼働したときの、最大排出量のことですか。それとも今後の操業条件等によっては数値が変わる余地もあるので、この評価を進めていく中でそのあたりも詰めていくということですか。
事業者
今申し上げたのは、今のところ通常状態で使った数字ということで、もう少し増える可能性も当然あると思いますが、今はそういう数字を前提に進めていくというふうになっています。
篠原委員
少し説明がありました水環境のところで、水温についてはあまり影響がないという話で、これについては予測・評価をしないということですが、水の汚れと水の濁りについて、もう一度説明してもらえませんか。工事によって水が出てくるという話がありましたよね。
事業者
工事に伴って湧水が発生しますが、沈砂池等を設けて、そこで汚れを落としてから、公共用水域へ排出するという、通常工事で採られている手順で行うことにしています。
篠原委員
この埋立地の土壌の調査はしていますか。問題ない土壌ですか。埋立地はみんな問題がありますから。
事業者
もともとスラグ等で埋立てをしているので、ボーリングして地下水を測定するのですが、そのときpHが高ければ、沈砂池の前にpH処理という形で希硫酸を添加します。pHについては排水基準が5~9なのですが、通常地下水のpHはだいたい10ありますが、それを7ぐらいにしてから排出します。あと沈砂池ではSSも落ちます。排水基準150ミリグラム(1リットルあたり)に対して普通10ミリグラム(1リットルあたり)ぐらいまで値が落ちますので、そういった意味で問題はないと考えています。
篠原委員
金属類はどうですか。入っていませんか。
事業者
金属としては、重金属等はありません。
篠原委員
「ありません」とおっしゃるのは、既に測定済みであるということですね。
事業者
施設の設置場所というわけではないのですが、事業所内でボーリングして測った結果では重金属等が出ていませんので、施設の設置場所でも重金属等はないと思っています。
篠原委員
思っているだけではなく、実際に調査した方がいいのではないですか。普通の土壌の土地であれば、ほとんど問題はないと思いますが、埋立地ではどのようなものが埋められているかわからないので、水が出てきた場合にはやっぱり沈砂池で落とすだけではなく、重金属を測定して問題がないという形で排出してもらわないと、亜鉛など基準が厳しいものもあるので、ぜひ、そこのところをもう一回検討していただきたいと思います。
事業者
わかりました。
小野会長
よろしいですか。事業者も了承したと理解してよろしいですね。
事業者
はい。
門上委員
一つ確認したいのですが、大気質について、合金鉄溶解炉からばいじんが出てくるということで、浮遊粒子状物質を評価項目にしているのですが、最近ではキラキラ粉じんと言っていろいろ北九州市では問題になりましたけれども、そういうものが発生する可能性はないのですか。建屋集じんなど大きな集じん機が付いているので、そのようなものをモニタリングする必要はないのかなと思って。
事業者
今回バグ式の集じん機を介して大気に放散いたしますので、基本的にキラキラ粉じんとか、そういったものは発生しないと考えております。今回合金鉄溶解炉の建屋は三重の集じんをすることにしておりまして、まず電気炉の周りをドグハウスと呼ばれるクリーンルームみたいなもので一旦囲みます。なおかつ建屋の集じんも計画しておりまして、「直接集じん」、「ドグハウス集じん」、「建屋集じん」と三重の集じんをするということで、環境に配慮した合金鉄溶解炉というかたちで、今回事業を考えております。
小野会長
粉じんを発生させないということですから、よろしいですね。
野上委員
施設の稼働に伴い産業廃棄物が発生するため、産業廃棄物の予測評価を行うということになっていますが、今回の計画の中では集じん機から出てくるばいじんの他にはどのようなものがあるのでしょうか。
事業者
先程説明しましたけれども、発生する廃棄物はスラグがございます。このスラグにつきましては現況も事業所内でリサイクルいたしておりますので、本事業についてもリサイクルすることにしています。なおかつ今回の合金鉄溶解炉につきましては、通常と比較して発生量をだいたい3割程度抑制できるという計画をしておりまして、産業廃棄物の発生に対しても貢献のある設備であるという認識をしております。
野上委員
はい、わかりました。もう一点、大気質の調査をされるということですが、予測評価の位置は現地点ではどこを想定されているのですか。
事業者
予測地点としては最大着地濃度地点のところで予測するというふうに今考えています。
野上委員
調査地点についてはどこでやるのですか。
事業者
調査地点といたしましては今のところ、戸畑観測局と北九州観測局のデータを使うということを今考えております。
野上委員
気象観測値は出されてないということですね。
事業者
気象につきましても、戸畑観測局は事業実施区域から2.7キロメートル程度しか離れていないということで、戸畑観測局の風向風速データを使わせていただくというふうに考えています。
野上委員
はい、わかりました。
小野会長
はい、よろしいですね。
篠原委員
基本的なところですが、今回使用する合金の種類は何ですか。
事業者
クロム合金です。
篠原委員
クロム合金ということは、高合金鋼等が入っているということになりますね。
事業者
そういうことです。
篠原委員
高合金鋼スラグは、スラグ自体が非常に問題になるのですが、その点についてはどのような対策を講じるのですか。
事業者
スラグの処理については、現在既に確立した技術を導入しており、適切に処理をして、所内でリサイクルをしております。
篠原委員
わかりました。
野上委員
大気質の短期評価についてですが、1時間の値を調べていくときに、製鐵所のここから吹いて来る風向の場合と、また風向が違う場合とでしっかりその中で平均するとか、そういうような解析を行って欲しいと思うのですが、それは別に問題なくできますよね。全ての風向で平均してしまうとわからなくなりますよね。
事業者
年平均値のほうには全ての風向で、短期の場合にはいわゆる今回の場合には民家側に吹く風向を主風向というかたちで、予測するようにしています。
野上委員
予測するし、実際の現況調査のときですね、だから戸畑観測局のデータを現況として見る時も、そちらのほうから吹いてきた時の値の平均で見るということですね。
事業者
そうです。短期の場合にはちょっと評価の場合に現況データを入れるか入れないかはいろいろあるのですが、そういうことも考えていきたいと思います。
野上委員
ぜひ、バックグラウンドというか現状でもこれくらいの値になっていると、そちらから風が吹いたときにということが必要だと思うので、ぜひやってください。よろしいですか。
事業者
短期の場合は普通あまり現況のバックグラウンドというのは一ヶ所では想定できないので、あまり普通は考慮しない、長期の場合にはバックグラウンドを考慮させていただくのですが、短期の場合はご相談させていただければと思います。
小野会長
はい、他にございますか。特にないようなので、一つ目の審査案件であります「合金鉄溶解炉設備建設事業に関わる環境影響評価方法書」の審査を終了したいと思います。
(2)平尾台地区鉱物採取事業に係る環境影響評価準備書の審査
事務局からこれまで手続きとして行われた縦覧(3名)及び意見書の提出(1件)の状況について報告を行った。次に、事業者から準備書の内容について説明があり、質疑応答及び審査が以下のとおり行われた。
樋口委員
地下水流動に係る予測においてタンクモデルを使われていますが、図を見ると、大清水については非常に再現性が高いのですが、小清水は再現性が悪いように見えます。結論は「小清水、大清水とも再現性は非常に良い」としていますが、小清水についてはかなり誤差があるように思います。
また、タンクモデルはもともと現況解析において非常に高精度の結果が得られるとは思うのですが、今回タンクモデルを将来予測に用いているので係数を変えられています。ということは、濁度やSSの予測についてこの係数が違ってくると全部将来的に違ってくると思うのですが、方法書の審査において、タンクモデルを用いて予測・評価を行うということで決定済みということですので、この件については、事業着手後に事後調査を実施することで確認していただく形になると思います。小清水のタンクモデルにおける係数についてのお考えを聞かせていただきたいと思います。
事業者
準備書に記載しているとおり、小清水に係るタンクモデルの再現性はよくありません。大清水や白谷と同じ方法で計算をしたのですが上手くいきませんでした。
その理由は、現地視察の際に見ていただいたとおり、農業用水を引くために頻繁に堰の操作をしており、これがタンクモデルの再現性が良くない原因と考えられます。小清水の流量は、水質・水量の両面で似通っている大清水の流量との相関から求め、これをタンクモデルの計算結果と比較しました。
樋口委員
流量の測定において、元々正確な値が測定できていなかったということでよろしいのですか。
事業者
流量は、週に一回測定しておりまして、その流量の値に間違いはありません。一方で連続観測装置を設置して、30分毎に水位のデータをとっておりますが、その水位のデータが、小清水の流量を再現する上で良い結果ではありませんでした。現地で測定した流量は、調査員が赴いて測定したものであり間違いないのですが、再現するにあたっては大清水の流量との相関を見たということです。
樋口委員
わかりました、いずれにしてもタンクモデルの再現性があまりよくないので、事後調査で確認していくしかないと思います。
小野会長
要するに小清水の測定値というのは大清水よりも変動の幅が大きいというか、細かく振れていたということですね。小清水は水量が小さい所だから、そういう結果になったのかもしれないですね。よろしいでしょうか、今の答えで。樋口先生了解していただきましたか。他の点についてはよろしいでしょうか。
穴井委員
騒音に関してお尋ねしたいことがあります。建設機械の稼働について予測されていますが、ここで使われた予測モデルについて教えていただきたいと思います。ご説明の中では音の伝搬理論に基づいたというご説明しかございませんでしたが、予測モデルとしては一般的にオーソライズされた、例えば日本音響学会が出しているCN-Modelがあります。今回はそのような予測をされたと理解してよろしいでしょうか。
事業者
今回は一般的に用いられている方法で、予測計算をしております。北九州市環境影響評価技術マニュアルに準拠した計算式で計算しております。
穴井委員
ありがとうございます。それからもう一点ですが、火薬学会が出している発破音に係る提言値について「100デシベル」というご説明がございました。準備書にもそのように書かれているのですが、私の記憶では「100デシベル」または「暗騒音+30デシベル」のいずれか小さい方と提言されているように記憶しております。それが正しいとしたら、今回予測対象とされた平尾台自然の郷では「80デシベル」あたりが提言値になるのではないかと思います。いずれにしても今回の調査結果及び予測結果は火薬学会の提言値を大きく下回っていますので、ご説明いただいた内容の大勢には何の影響もないのですが、正しい値を引用されるべきだと思いますので、ご確認の上、必要であれば訂正していただきたいと思います。
事業者
わかりました。再度確認して、評価書にその結果を反映したいと思います。
楠田委員
何点かお教えいただきたいのですが。
第一点目は樋口先生がご質問されたタンクモデルに関する件で、理論がまだ十分理解できておりませんので、もう少し教えていただけないでしょうか。
第二点目は全域の水の収支について4割近くがどこへ出ているのかわからないというようなご説明があったかと思いますが、蒸発散量を差し引かれて、どの位の水が他所に行っている可能性があるのかというのを、お教えいただけたらと思います。
第三点目は、現地視察で大清水や調整池のところの水質を見せていただいたのですが、藻類の発生が多くて、結構富栄養化しているのではないかと推察されました。ところがお話を伺っていますと、特別窒素やリンの供給がありそうな場所ではなさそうな感じがしました。その両者のところの話が自分自身で繋ぐことができないものですから、それをお教え頂けたらと思います。出てくる水はきれいに見えるのに、どうしてあんなに藻類が発生するのか不思議でしょうがない。何か違うことを考えないといけないのではないかという感じがしました。
それから次の点は、採掘の進行に伴って大清水の流量が増えるとか濁りが増えるというふうにご説明いただきましたが、なぜ増えるようになるのかというプロセスをお教え頂けたらというふうに思います。
それから、濁水の粒度分布のところで、0.1マイクロメートルとか非常に細かいところがデータ中にあるのですが、何故そういうことが起こるのかというのをお教えいただきたいと思います。
それから最後のところですが、環境保全措置として沈殿池を作られるとのことですが、どれ位の降雨量までがそれで対応できるのかということ。また、その許容量を超えた雨が降った時に何が起こるのかというところもお教え頂けたらと思います。以上です。
事業者
大清水に関しては、水位の変化に応じた流量が測れて、これより得られた流量とタンクモデルの計算結果は非常にいい相関が得られました。対して小清水はそれが上手くいかず、何とか表現できないかということを考えました。大清水と小清水は、水温やpHなど水質が似通っており、位置的にも近いので、大清水と小清水の相関性を見れば流量の関係が見えるのではないかということで検討し、ちょっと強引ですが、結果として上手く相関式が得られました。大清水の流量を計算して、それに相関式の係数をかけて小清水の流量を求めました。
楠田委員
小清水についてはタンクモデルを使っていないのならば、初めから使わないように書いてくださればいいのですが。
事業者
そういうことですね。わかりました。
楠田委員
ということは、小清水についてはSSについてもタンクモデルは使えませんよね。
事業者
SSについても、大清水のタンクモデルで計算して、それに係数をかけて小清水の結果を出しています。
楠田委員
この準備書の中には上手くいかなかった結果も全部書かれています。例えば6.4-103ページに小清水のSSに係るタンクモデル計算とSSの汚濁換算値の相関関係というのがあって、合っていない例が出ています。実際にはそれを使っては計算されていないのですね。こう仮定するとこんなにまずいことが起こるので、これは使うのを止めたという説明になっているわけですよね。
事業者
ここのところは、まず大清水の結果を用いて求めた計算値になっています。
楠田委員
それでもこれはかなり違っていませんか。
事業者
はい。ただここは、各湧泉の一つ一つをきっちりと数字をあわせるということもあるのですが、今回湧泉、大清水、小清水、白谷の三つを総合的に見て、一番バランスよく再現できる落とし所として、この結果が最良だということで準備書に結果を出しています。
楠田委員
結果が最良というわけではなくて、一番合いそうなものを選んだというわけですね。
事業者
日流量や年間の総流量の整合性を見て総合的に判断させてもらいました。
楠田委員
総合的というのがかなり曲者だと思うのですが、もうちょっと工夫されてもいいのではないかと。要するに小清水のタンクモデルが全く合わない、つまり、基本的なメカニズム設定ができなかったということは、大清水のタンクモデルについても、たまたま合っているというだけかもしれません。もうちょっと手法を再検討してもいいのではないかという感じがします。
事業者
現地調査を実施して得られたデータを使っていろいろ検討した上で、このような結果を出したのですが、もう少し深く検討する必要があるということですので、アドバイスも頂いて更に信頼のおける結果を出したいと思います。
小野会長
この場で結論まで導くのは無理だと思いますので、楠田委員並びに樋口委員に相談して、どのようにすれば適切な表現ができるのか、一番合いそうなものを総合的だと言っているだけですから。タンクモデル云々という問題も含めて少し相談してみてください。その上で評価書に反映するように努力をしてください。楠田委員、樋口委員、ご指導をよろしくお願いします。
それから、見た目で緑藻がたくさん出ているにも関わらず、水質から緑藻が出そうにないような数値になっているというのは、あやしいということですから。
事業者
窒素とリンに関しては、今回の事業は富栄養物質を排出する事業ではないことから、調査項目の選定の段階で調査対象から外しました。
薛委員
6.4-46ページに集水域を100としたときは何割かが大清水及び小清水で出ているとあるのですが、大清水、小清水に出てくる水は100%この書かれた集水域からきているわけではないと思うのですが。それは何かの方法で調べてあるのでしょうか。
事業者
このピンクのエリアから大清水、小清水の湧水は来ていると考えています。
薛委員
それは間違いのないことですか。
事業者
間違いないというより推定です。今までの調査結果からそのように推定したということです。
薛委員
今回改変される区域から流れてくる水が占める割合というのも分かっているのでしょうか。
事業者
細かく分けることはできませんので、面積の割合で案分してとらえています。エリアのうち事業実施地域が20%位だと思うのですが、その割合で湧泉に向かって流れて来ていると計算しています。
薛委員
今のお話のように他の農業地帯、畜産業やっている所からの水もかなり入っているということですね。
事業者
そうです。私の認識として畜産農家という対象を考えておりませんでしたので、そこは欠落しています。
薛委員
もう一件ですが、トレーサー調査なさった時のルートはわかったのですが、大清水と小清水ではトレーサー物質が検出された時間の差についてのご説明がなかったようですが、大清水と小清水では時間の差があったのか教えていただけますか。
事業者
大清水と小清水は流出のタイミングが非常に近く、20時間弱で検出され始めました。
薛委員
それは降雨時と晴天時とそれぞれ実施されたのでしょうか。
事業者
トレーサー調査は大雨のときに実施しました。大雨の時が一番いろいろな方向に向かって水が流れていきますので、そのタイミングを狙って調査しました。
薛委員
わかりました。時間差があまりなかったということですね。
山田委員
6.5-40ページの図では、沈砂池をもう一つ設けることで河川へ流入するSSについて解決されているように書かれているのですが、SSで問題になってくるのは粒度の大きなものではなくて、むしろ浮泥に関することだと思います。浮泥に対する措置はどうなされるのかということが一つ。
もう一つ、沈砂池を通って河川へ流れて出た浮泥について問題になるのは、やはり生物への影響だと思います。例えば、北九州市ではホタルがシンボル的な生物になっております。浮泥が流れてくると、カワニナやホタルの幼虫の生息に影響を及ぼしてきますので、この東谷川の沈砂池から流れた出た所にモニタリング地点などを設けて、これらを監視するということを新たに付け加えるのもいいのではないかと思ったのですが、可能でしょうか。
事業者
今回の予測結果で新たに沈殿池を設けることで、事業着手から40年後までは現況よりもSSが減るという予測結果です。これはモデルを用いた予測結果であり、実際に予測結果どおりかということにつきましてはモニタリングで確認して、現況よりも悪化するようなことがないように、適切な措置を取りたいと考えております。ご指摘にありました細かい泥の沈降等につきましては、沈殿池の構造やろ過・薬剤投入等の処理方法、そういったものを含めた総合的な検討をいたします。検討の上では、水を使われる水利権者の方ともご相談した上で適切な措置を取りたいと考えております。
沈殿池の構造につきましては現在の既設の沈殿池にもございますが、整流板を設けること、沈殿池の面積をフルに活用できるような構造とすること、流路を長くとるといったような工夫や、そういったことを確実にやるという基本的なことをきっちりやろうと考えております。その上で、流出点で、今日ご視察いただきましたように連続測定をずっとやってまいりますので、思った効果が得られない場合は更にろ過、薬剤等のことも含めた検討をいたしまして、適切な措置を取りたいと考えております。
小野会長
沈殿池についてはモニタリングをしながら、その都度問題点に対処していきたいということですね。
篠原委員
沈殿池を設けるということについて平常時は大丈夫だと思うのですが、降雨時はどのように対処するか、降雨時に大量の水がでても、それをどうカバーできるかという、その点について何かお考えありますか。
事業者
沈殿池の効果につきましては、平常時には泥水がほとんど出てきません。水量・SSは降雨時に非常に多く、高くなった時点でより効果が発揮できるような方法を今後も工夫していきたいと考えておりますが、整流の方法、流路を長くとる方法、ろ過する方法、薬剤等の中からの選択になるかと思います。あとは基本的に沈殿池の面積を極力大きくとりたいと考えております。
藤井委員
今日のご説明で触れられていませんでしたが、準備書では例えば9-5ページの最後のところにありますように、地下水の問題に関して40年後を目途に調査を開始するということが書いてあります。掘削面がどんどん下がっていくと、石灰岩体の中の地下水面に達してしまう。この地下水面に掘削面が到達してしまいますと、この平尾台の南東にある地下水位の高い地域、千仏鍾乳洞であるとか千仏洞など平尾台の南のほうへ排水するこちらの地域の地下水を奪ってしまう可能性が出てくる。石灰岩の掘削が標高300メートル以下に下がった場合です。もっと下がってきますと白谷のような被圧地下水面のレベルでそういう恐れが考えられます。現地点では地下水面の位置が正確にはわかっていませんが、事業半ばの40~50年後以降にこういうことが起こると予想されます。これは非常に重要な問題だと思います。
小野会長
アセスメントでは、40年後の状態も見ておかないといけませんので、評価書の段階でちゃんと触れていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
事業者
評価書に40年後を目途に地下水面の調査とその評価を行うということを記載するようにいたします。
門上委員
迷路カルストというのは非常に重要な地形だと言われていますが、その横に堆積場を設ける計画になっています。ですが、堆積場ができることで現状より約60メートルも高くなりますので、大雨時に堆積場から迷路カルストの方へ雨水が流れ込むという事態が発生するおそれはないのでしょうか。
事業者
外部に水が出ていかないよう外周部に側溝を全て付けております。その側溝の水を集めて各排水溝に入れるということにしていますので、迷路カルストのほうに場内水が行かないように設備をいたします。
小野会長
ご了解いただけたと思います。それでは後半部分の動植物、生態系、景観、これらの点についてご意見はございませんでしょうか。
河野委員
何点かお聞きしたいのですが、まず植物に関してですが、貴重な植物の具体的な移植先についてご説明いただきたいというのが一点。
個別な植物は移植をされるということですが、群落についての保全としては、例えば迷路カルストの保全以外に何か対策を取る予定があるかというのが一点。
群落の中でも特に湿性植物の群落は、植物群落レッドデータブックではランク4に指定されておりますので、それに対する対策はどうなっているのかというのが一つです。
一つはニホンアカガエルの湿地と同一の湿地であれば、整備をされるということですから、対策を取られるということになるのでしょうけれども、一つは個別の移植先、もう一つは群落としての保護。第三点としては生態系自身の保全措置として迷路カルスト保全以外に植生の回復というのがございました。それは堆積場の緑化のことを指しているのかというのが一つです。最後の四点目ですが、準備書の最後に動植物のリストがありますが、その中に藻類が一つもありません。これは湿地の生態系を上手く反映した調査になっているかどうかが一つの疑問点でありますので、その中に例えば藻類等が湿地の生態系を構成する生物としてリストされる可能性が将来あるかどうか、この四つをお聞きしたいと思います。
事業者
植物の保全措置について移植先等ですが、現在平尾台自然の里及び関係される地域の方々と調整をしているところですが、まだ具体的な場所という選定までは至っておりません。今後詰めていきたいと思っております。
二点目は湿地性の群落に関するご質問でしたが、調査範囲の中で湿性群落といったレベルのものは、確認されておりません。従いまして準備書の中にもそういった扱いがないというかたちになっております。生態系の保全の堆積場の緑化についてですが、現地の典型的な植生となりますと、ススキ-ネザサ群落ということになります。できる限り表土を活用し、ネザサ群落が再生するようにやっていきたいと考えており、その旨を準備書に記載させてもらっております。最後に植物リストについてですが、実際水の中に生える藻類については、調査対象となっていないというところで記載がないといったところになっております。
河野委員
湿性植物の群落についてですが、例えば平尾台には湿地があって、モウセンゴケとかが代表的な植物として挙げられていますが、調査区域内には湿地というのは全くないと考えてよろしいのでしょうか。
小野会長
ないとのことです。動・植物、生態系、その他についてご意見はございませんか。
森本委員
北九州市環境影響評価技術マニュアルの中で、人と自然の豊かな触れ合いの中に、景観について大きく事細かく掲げてあるのでお尋ねします。まず、マニュアルの196ページに都市の景観の保全に関する方針で「都市の景観の保全に関する方針等は福岡県や北九州市が定めている計画、方針等について調査する」となっているのですが、事業実施区域及びその周辺において、県や市の計画に関連することはありませんでしたでしょうか。二点目は保全に関する話ですが、残壁と堆積土の植栽を確保する、回復するという話ですが、事業に着手してから何年目ぐらいから実施する予定にされているのでしょうか。
事業者
県及び市の景観に係る計画については既存の資料を調べましたが、何らかの景観上の規制等がかかるという情報はありませんでした。また、堆積場の緑化を行うタイミングですが、堆積場に剥土を5年間にわたって順次積み上げていくのですが、その積み上げ作業と並行して緑化の作業を進めていこうと考えております。山が積み上がってから緑化するのではなくて、順次緑化をやっていきます。
薛委員
騒音の対策の中で堆積場に土盛りをするので騒音を下げるというお話であったと思いましたが、その土盛りというのは、今おっしゃった堆積場の一番下の段の外壁部分だということですか。
事業者
はい。一番外側の外壁部分を先に盛り上げまして、それから内側を盛るような施工方法をとることによって騒音を低減しようと考えております。
薛委員
その一段目の部分、例えば高さ、内側との差、あるいは最初に三段分まで積むのか、その辺はいかがですか。
事業者
堆積場の一段は10メートル
で構成されるのですが、一度にたくさんの土を積むと地盤の安定上問題がありますので、2メートル50センチないし3メートル30センチで2段から4段に1メートルを分割して積んでいきます。そういうことですので、3メートル内外のものを外側に積みまして、その内側をまず積むと、それからまた内側が詰まりましたら、また3メートル内外のものを外側に積むといったような繰り返しで施工いたします。薛委員
わかりました。ある天盤の幅を持って前面のほうがいつも高くなるというふうになっていると思っていいのでしょうか。
事業者
はい。
薛委員
わかりました。それから堆積場については土端ができ次第、緑化という話がありましたが、残壁については15メートルごとの段が上から順番にできていくと、上の段が後からでは手が加えにくい場所になっていくと思うのですが、この緑化についていかがでしょうか。また、東谷鉱山の一番上・二段目辺りが何年くらい経った状態なのかも教えていただければと思います。
事業者
残壁の緑化についてはおっしゃる通り掘削場所の高さが下がりますと施工できなくなりますので、その段の残壁を形成する前に、横の地盤が残っている間に、客土を施工しまして、それから手前の地盤を取り除いて残壁を作るということで緑化するということにしております。東谷鉱山の一番頂部の緑化状態ですが、自然緑化なのでどれくらい経った状態なのかはわかりません。
薛委員
自然緑化なのですね、わかりました。小段ごとと10メートルの段ごとに、これは排水のこととかいろいろな細かな決まりがあるのかしれませんが、できれば内勾配とかにして、なるべく土壌がたくさん載るようにして頂くといいなと思っていますが、できますでしょうか。
事業者
土壌の流出が少なくなるようにする措置としまして、内勾配にするなり、手前に少し石を貼るなり、そういった工夫をしていきたいと考えております。
小野会長
はい、薛先生はその辺の専門家ですからご相談しながら実施してください。その他の点でご発言はございますか。
樋口委員
剥土についてですが、鉱山法におけるズリと同じような形になるのでしょうか。
事業者
鉱山法に基づく捨石というものになります。
樋口委員
例えば建設残土のような扱いとか、廃棄物処理法の適用外ということですか。
事業者
廃棄物処理法の適用外になっております。
樋口委員
伐採木についてはどうなのでしょうか。
事業者
伐採木につきましては、伐採したものを廃棄する場合は廃棄物処理法の適用を受けますが、マルチ材として再利用する場合は適用にならないと考えております。
樋口委員
リサイクルするということは有価物という扱いで適用されるということですね。
事業者
本事業で発生した伐採木はマルチ材として自家使用したいと考えております。
樋口委員
はい、わかりました。
小野会長
有価物になるということですね。
上田委員
昆虫のことでいくつかお聞きしたいのですが、ライトトラップ法というのが6.8-3ページに書かれていますが、今回の調査では蛍光灯を用いたのですか。何故そういうことを聞くかというと、昨今は水銀灯を使うことが普通なのです。それと併せてブラックライトや波長の違う普通の明かりとか、いわゆる白色灯を用いるのが普通です。準備書に確認されたガのリストが記載されていますが、ちょっと種類が少ないです。私たちはずっと平尾台で昆虫類の調査をやっています。これまでの調査の中で、最近福岡県の初記録になるようなものが結構この地域で見つかっています。そういった昆虫が今回の調査結果にあまり入っていないということで、ちょっとこの問題あるということ。
昆虫は数が多いので仕方がないのですが、準備書の6.8-11ページを見ますと、調査日が書かれていますが、6月に調査が行なわれていません。これは仕方ないといえば仕方ないのですが、実は一番6月頃が良いわけで、特にここで絶滅危惧種になっているオオウラギンヒョウモンというチョウがいるのですが、このチョウは6月頃に出てきて、それから7~8月に夏眠します。9月の中頃くらいからまた活動することになるわけです。最近この周辺でオオウラギンヒョウモンが出てきたという話があるわけです。それを聞いていたので、この結果自体の精度というか、そういったことに関して少し心配だということです。秋に改めて調査をやるということでもって、「調査してもオオウラギンヒョウモンはいなかった」ということを付け加えられるといいのではないかと思います。信頼性が高くなるという気がします。
小野会長
これから評価書の作成に入りますから、評価書段階でどのような形で堆積土の林を造っていくか、そういうときの目標になりますから、前の調査で見つからなかったチョウなどが見つかった場合に、その保全をどうするかということで考えるべきでしょう。
薛委員
景観に若干関係あると思うのですが、堆積場を盛土していくときの粗方の小さい図面を先ほど見せていただきましたが、既存の小倉鉱山の堆積場との間に少しくぼみ・谷的な所ができるような図面でした。それと迷路カルストの所も平面的に食い込む分、少し谷になるということでした。今画面に映った図面を見ますと、そういう出隅・入り隅がどうも角々、直線が合わさったような形になっています。遠目にあまり変わらないのかもしれませんけれど、近くから見る時今日既存の小倉鉱山の堆積場を拝見したときもそうですが、出隅が直角に出っ張っているとかいうのは将来植栽で覆われたとしても少し感じがよくありませんので、小段は仕方ないにしても、平面的な形で少し丸くする、入り隅も出隅も丸くする。こういう工事ができますかどうか、できるならお願いしたいなと思っておりますが。
事業者
はい、角を多少丸くする程度の工事であれば可能ですので、その辺ご意見を参考にしまして、あまり機械的な直角な角を造らないように施工することは努力していきたいと考えております。
小野会長
よろしいでしょうか。これは現場を見た結果ですから、視察の効果があったということです。
山田委員
要約書34ページの表21の生態系の概要のところです。ここで環境保全措置というのがありまして、そこで「堆積場に適切な土壌を配置し」と書かれているのですが、その適切な土壌というのはどういったものを指すのかというのを教えてもらいたいと思います。これは緑化とも非常に関連するので、適切な土壌を配置するのはとても大切なことだと思います。あともう一点は要約書33~34ページの動物と生態系に係る概要で事後調査のところです。ここでは「事後調査は実施しない」と書かれています。確かに「予測の不確実性は小さく」とは書かれているのですが、小さくとも不確実性があるのならば、なおさら事後調査を実施して、保全のための措置が成功したということを立証されてもいいのではないかと思います。
事業者
堆積場の緑化に使用する土壌につきましては、開発地の表層部にありますススキやネザサの地下茎や種子が入っている表土を一旦仮置きしまして、それを成型後に表面に載せるということで、なるべく元の植生に近いものになるようにしたいと考えています。
山田委員
非常に良い措置を検討されていると思いますが、どれくらいの期間で植生の回復が見られるのでしょうか。
事業者
ススキ-ネザサ群落の表土を剥いだものを再度戻して緑化したという経験はございませんが、一般的な表土を持って来て放置しておいた場合は1~2年くらい掛かって緑化されていきます。あまり植生の回復が思わしくない場合は、表面の土壌が流出しないような措置として、吹き付け等も補助的に考えておりますが、基本的にはなるべく現地のもので少し時間がかかっても緑化していきたいと考えております。
小野会長
事後調査についてはどうなのですか。
事業者
現在のところ動物・生態系につきましては、ご指摘のとおり事後調査の実施を計画していません。本日ご意見がいろいろとあったと思います。環境づくりの面等についてもあったと思いますので、今一度検討させていただいて、必要であれば事後調査を実施したいと思います。
小野会長
100年間にわたる事業ですから、事後調査も長期間にわたって実施してもいいわけですから、そのあたりについては評価書のところで上手く触れればいいと思います。
楠田委員
準備書の6.5-37ページですが、河川水に係る環境保全措置について、「営農活動に影響を及ぼさないように」という限定した配慮になっているのですが、「河川環境の劣化を引き起こさないように」という表現にしていただくことは可能でしょうか。これはかなりセンシティブではないかという思いはしますけれども。
小野会長
「営農活動に影響を及ぼさないように」という表現よりも、むしろいいような気がするけれども。
事業者
準備書には確かに営農活動だけについて書いております。今お話しあったとおりセンシティブなところもあるということなので、先ほどの濁りの話とも合わせまして、今度楠田先生のほうにアドバイス頂いて、今の表現も考えていきたいと思います。
楠田委員
私としては入れていただけたらと申し上げているわけですから。
事業者
入れる方向で考えていきます。
小野会長
修正分につきましてはこれから事業者が、文章を作成して私が確認するかたちになりますので、その時に入っているかどうかチェックさせていただきます。それでよろしいですか。
楠田委員
それで結構です。そのように記載していただくと、先ほどの生物の話も含む形になりますので。
森本委員
動植物の重要な注目すべき生息地という予測が入っているのですが、実はこの中に種類ではなくて、これ等の出てきた種類について地理的条件を何ら加味してないような気がするわけです。例えば標高があります。気温があります。雨量がどうかは分かりませんけれども。その辺は何らかの形で取りまとめをやっていただきたいなと思います。
小野会長
多少それは無理があります。
森本委員
はい、そうですか。
藤井委員
ごく最近ですが、平尾台でこれまで数十年間鍾乳洞の探検・調査をされてきた方からこの開発地域の中にこれまで知られていなかった竪穴が発見されたそうです。入口自体は1メートルくらいのものらしいのですが、かなり深いようで、その方のお話によると今までの事例からしてもこういう洞窟の中からは比較的珍しい化石が発見されることもあると。ぜひ自分としては調査をしたいなということを言っておられますが、どうされるのか私も知りません。せっかくこの中にありますし、これから剥土が進むにつれて現在地表に顔を出していなくても、そういう剥土によって顔を出す竪穴もいくつか出てくるのではないかと思います。これだけ広い地域ですから。そういうものについてどういうふうに対応されるのかお考えを伺っておきたいのですが。
事業者
洞窟の調査のご希望につきましては、危険でない範囲で企業としてはご協力したいと思います。あと、剥土作業進行中の化石の調査につきましても、できる範囲内でご協力したいと考えております。
小野会長
仮に採掘中に大きな洞窟が発見されたらどうするのですか。潰してしまうのですか。
事業者
洞窟や大きな空洞みたいなものがあった場合は潰します。埋めることになります。
小野会長
洞窟が見つかったときは、相談が必要ですね。今のところ洞窟等がなく、石灰岩が下まで続いているだろうと想定しているわけですけれど、実際に地面の下はどうなっているのかはわからないですから。その辺のところはこれから相談で。
篠原委員
小さい話ですけれども、剥土を始めるときに伐採木をチップ化すると書いてありますが、今日現地を視察したところ木よりもササが多いようです。チップ化するというのは何をどういうふうにするのか、ササはどうやるのか教えていただきたい。
事業者
ササにつきましては表土活用工の要するに堆積場の緑化の資材として用います。生えている部分については土壌と一緒に堆積場の緑化に貼り付けることで活用していきます。木につきましては確かに今日ご案内した区域にはありませんが、ドリーネの一番底のほうに灌木がありますし、また斜面のだいぶ下のほうにもありますので、そういうのが出てきましたら一旦仮置きして、集まったところでチップにする機械に投入し、場内で処理するという計画にしております。
小野会長
だいたい出尽くしたようには思うのですが、よろしいでしょうか。
この後、事務局から今後のスケジュール説明及び閉会挨拶があり、終了した。
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