犬猫由来
症状 | 咬まれたところの腫れと痛み、その後、急速に、皮下の炎症が深く広い範囲に拡大した蜂窩織炎になることがある。まれに敗血症に進行する。局所症状が出るのが早いことが特徴で早いときは1時間以内に発症する。気道から感染すると、風邪様症状、気管支炎、肺炎、副鼻腔炎などを示す。 |
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感染経路 | 犬や猫等の動物の気道や口の中に普通に見られる細菌で、主に動物に咬まれて感染するが、飛沫を介した経気道感染もある。 |
予防法 | 動物との節度ある触れ合いを心がけ、咬まれないように気を付ける。動物と口移しやキスなどしないようにする。 |
症状 | 1週間前後で受傷部の丘疹・水疱、発熱を示す。その後、傷口の上位のリンパ節が痛みを伴って腫脹する。通常、予後は良好で、症状が数週間から数カ月継続するものの、自然治癒する。 |
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感染経路 | 原因菌は猫の赤血球内に存在する。保菌した猫に、咬まれたり、ひっかかれたりして、皮膚から直接感染する。まれに保菌猫を吸血したネコノミから感染することがある。特に子猫の保菌率が高く、保菌猫も患者も西日本に多い。 |
予防法 | 動物との節度ある触れ合いを心がけ、ひっかかれないように気を付ける。猫にはノミの駆除や防虫薬などを使用する。 |
症状 | 主な症状は、発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛等。まれに重症化して、敗血症や髄膜炎を起こし、播種性血管内凝固症候群(DIC)や血症性ショック、多臓器不全に進行して死に至ることもある。重症化したときの症状の進行は早い。患者の大半が40歳代以上で、男性が約70%を占める。 |
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感染経路 | 犬や猫の口の中に普通に見られる細菌で、主に咬傷・かき傷から感染するが、傷口をなめられて感染することもある。 |
予防法 | 動物との節度ある触れ合いを心がけ、咬まれたり、ひっかかれたり、特に傷口などをなめられないように気を付ける。 |
症状 | 感染初期は発熱・鼻汁排泄等の風邪に似た症状で、その後、咽頭痛や咳が始まり、ジフテリアと同様に扁桃や咽頭等に偽膜形成や白苔を認めることがある。まれに重症化すると呼吸困難等を示し、死に至ることもある。 |
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感染経路 | 本菌に感染した犬や猫との接触や飛沫により感染する。海外では、犬や猫以外にも牛等の家畜との接触や、殺菌されていない生乳の摂取による感染例もある。 |
予防法 | 成人用ジフテリアトキソイドやDPT-IPV(ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ)4種混合ワクチンが予防に効果があるとされている。くしゃみや鼻汁等の風邪様の症状や皮膚病を呈している動物との接触を控え、動物と触れ合った後は手洗い等を行う。 |
症状 | 感染時期や感染者の状況で異なる。妊婦の初感染では胎児にも感染して、死流産や先天性トキソプラズマ症(水頭症、精神運動機能障害など)の可能性がある。健康な成人や小児が初感染したときの多くは無症状だが、体内に潜伏し、免疫力が低下すると、日和見感染として脳炎や肺炎を起こすことがある。 |
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感染経路 | 猫はトキソプラズマの終宿主で糞便中にオーシストを排出する。そのオーシストを取り込むことでブタなど哺乳類や鳥類は体内組織にシストを形成する。人は猫が排出したオーシストを直接または土いじりなどを介して間接的に経口摂取するほか、加熱の不十分な食肉中のシストの経口摂取によっても感染する。数パーセントの猫・ブタが感染していると考えられる。 |
予防法 | 食肉(特に豚肉)や鳥肉は十分に加熱して食べる。猫に生肉を与えない。感染猫から排出されたオーシストが感染能を獲得するまでに約24時間を要するので、糞便の処理は毎日(24時間以内に)行う。 |
症状 | 一般的に症状は不明熱や倦怠感など風邪様で軽微か、気が付かないケースも多い。しかし、濃厚感染すると重症化することもあり、また、慢性化して長期間罹病の報告もあるので、注意を要する。 |
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感染経路 | 感染犬は、死流産を起こして流産胎児や排泄物中へ、また、尿や精液にも排菌する。これらに接触または飛沫等の吸入により感染する。1970年代に国内で犬の感染が見つかって以降、現在でも、国内の犬の3%程度が感染している。 |
予防法 | 信頼できるブリーダーから購入する。飼い犬が流産等をした場合の処理には気を付ける。感染の確認には抗体検査が用いられる。感染犬には投薬治療も行われるが、慢性化していると治療は困難である。犬用や人用のワクチンはない。 |
症状 | 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)のページをご覧ください |
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感染経路 | 主に感染マダニに刺されて感染する。西日本で患者報告が多く、春から秋にかけて患者発生が多い。また、発症した猫や犬の体液からも感染することが報告されている。特に、猫は感染・発症したときの症状が強く、感染猫からの咬傷や接触による飼育者や動物病院従事者の感染例もわずかだが報告されている。また、特殊な例では、患者の血液を介して医療関係者が感染した例も報告されている。 |
予防法 | 動物にもマダニの駆除・防虫薬を使用し、動物が体調不良の際には、動物病院を受診する。むやみに弱った野生動物に手を出さない。マダニに刺されないよう、草むらや藪など、マダニが多く生息する場所に入る場合には、肌の露出を少なくし、マダニに効く虫除け剤を使用する。 |
は虫類由来
症状 | 発熱、下痢、腹痛などの胃腸炎症状を呈する。まれに菌血症、敗血症、髄膜炎等、重症化して死亡することもある。 |
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感染経路 | 通常は汚染食品により感染するが、爬虫類等の動物との接触から感染することがある。カメ等の爬虫類の50から90%がサルモネラ属菌を保有している。国内でも子どもがペットのミドリガメから感染して重症となった事例がある。 |
予防法 | ペットの飼育環境を清潔に保ち、世話をした後には石けん等を使って流水で十分に手を洗う。免疫機能の低い人(新生児や乳児、高齢者等)がいる家庭での爬虫類の飼育は控える。カメなどの飼育水はこまめに交換する。水を交換するときには、感染しないように注意するとともに、排水で周囲を汚染しないよう気をつける。 |
鳥由来
症状 | 潜伏期間は1から2週間で突然の発熱、インフルエンザ様症状が起きる。重症化すると呼吸困難、髄膜炎をおこし、まれに死亡することもある。 |
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感染経路 | 鳥類を自然宿主とし、世界に広く分布している。オウム、インコ、カナリア、ハト等の排泄物に含まれる菌を吸入して感染する。口移しでエサを与えることによっても感染する。 |
予防法 | 鳥類はなるべく屋外で飼育し、口移しでエサを与えない。乾燥した糞は空中を漂い、吸入しやすいため、速やかに処理する。 |
症状 | 健常者の肺クリプトコックス症例では無症状のことが多いが、発症すると風邪様症状を示す。免疫力が低下していると、時に慢性の肺疾患に進行する。皮膚クリプトコックス症例は皮疹などの皮膚症状を示す。脳髄膜炎症例では、発熱や頭痛を示し、吐き気や嘔吐、項部硬直などの髄膜刺激症状、性格変化や意識障害などの神経症状が見られることもある。 |
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感染経路 | 土壌など環境中に存在する真菌で、吸入や傷のある皮膚を介して感染する。ハトなど鳥類の糞中でよく増えて、感染源の一つになる。 |
予防法 | 免疫力の低下している人は、公園や駅などの鳥類(ハトなど)の糞が堆積している所に近づかない。飼育者はこまめに糞をそうじする。 |
野生動物由来
症状 | エキノコックスの虫卵は腸の中で孵化して幼虫となり、その後肝臓で包虫となって発育・増殖する。感染後、数年から十数年ほどたって自覚症状が現れる。初期には上腹部の不快感・膨満感、進行すると肝機能障害を起こす。 |
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感染経路 | 日本では、北海道のキタキツネが主な感染源で、糞中にエキノコックスの虫卵を排出する。北海道で放し飼いをして感染した犬もキタキツネ同様に感染源となる。人はエキノコックスの虫卵が手指、食物や水等を介して口から入ることで感染する。 |
予防法 | 野山に出かけた後は手をよく洗う。キツネを人家に近づけないよう、生ゴミ等を放置せず、エサを与えたりしない。沢や川の生水は煮沸してから飲むようにする。山菜や野菜、果物等もよく洗ってから食べる。犬も感染した野ネズミを食べて感染するため、放し飼いをしない。飼い犬の場合は駆虫薬の定期的投与も効果があるので、流行地においては獣医師とよく相談する。 |
症状 | 5から14日の潜伏期の後に、38から40℃の発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、結膜充血等の初期症状がみられる。重症の場合は、発症後5から8日目に黄疸、出血、腎機能障害等の症状が現れる。 |
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感染経路 | 保菌動物(ネズミ、犬等)の尿中に長期間菌が排出される。感染動物の尿や尿に汚染された水や土等から皮膚や口を介して感染する。全国で散発的に発生し、水辺・田畑・店舗内と感染場所に特徴があるが、地域によっては集団発生も報告されている。 |
予防法 | 汚染の可能性のある水・水辺などには近づかない。必要時には、手袋やゴーグルなどを着用して、水や土壌に直接、触れないようにする。ネズミの駆除や侵入防止等の動物対策により、店舗内の土間など、清潔を保つ。感染の可能性のある動物と接触する場合は手袋やマスク等を着用する。 |
食品由来
症状 | 潜伏期は平均6週間で、急な発熱、倦怠感、吐き気や嘔吐が見られるようになり、数日後に黄疸を示す。通常、2週間程度で治まるが、重症例として劇症肝炎になることもある。 |
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感染経路 | ブタ、シカ、イノシシなどはE型肝炎ウイルスの感染歴を持つ。特にブタは高率に感染しており、出荷時には抗体保有率は90%を超える。通常、抗体ができるとウイルスは減っていくが、肉やレバーを十分に加熱しないで食べることにより感染する。また、感染患者の糞便中のウイルスに汚染された水や食品を介しても感染する。近年患者が急増し、毎年300名以上の患者が報告されている。 |
予防法 | 食肉(特にブタ、シカ、イノシシ)の生食はせず、必ず十分に加熱して食べる。食事の前には十分に手を洗い、特に、衛生状態が悪い国では、飲用水や生野菜などにも注意を払う。 |
海外旅行で注意したい動物由来感染症
症状 | 通常1から3力月の潜伏期間の後に発症し、初期は風邪に似た症状で、咬まれた部位に知覚異常が見られる。不安感、恐水症、興奮、麻痺、錯乱等の神経症状が現れ、数日後に呼吸麻痺で死亡する。発症すると、ほぼ100%死亡する。 |
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感染経路 | 発症した犬、猫、アライグマ、キツネ、スカンク、コウモリ等に咬まれるなど唾液中のウイルスが体内に侵入して感染する。世界のほとんどの地域で発生しており、死者は年間約6万人といわれている。特にアジアとアフリカでの発生が多く、その99%は犬に咬まれることにより感染しているとされている。 |
予防法 | 海外ではむやみに動物に近づかない。渡航先で狂犬病のおそれのある犬などに咬まれたら、すぐに傷口を石けんときれいな水でよく洗い、速やかに医療機関で傷の処置と治療、狂犬病ワクチンの接種等を受ける。狂犬病の流行国で犬等に接する機会がある場合や長期滞在する場合は、渡航前にワクチン接種しておくと良い。 |
症状 | 腺ペスト、敗血症ペスト、肺ペストに大別され、人では約85%が腺ペストである。腺ペストは急激な発熱、頭痛、倦怠感、リンパ節の腫脹等を示し、敗血症ペスト、肺ペストに移行すると致死率や他者への感染リスクもより高くなる。適切な抗菌薬による治療を行わないと予後不良となる。 |
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感染経路 | ペスト菌を保菌した齧歯目に寄生したノミに刺されて感染することが多いが、感染動物(プレーリードッグ等の野生齧歯目等)の体液に触れたり、まれに菌を吸入して感染する。特に、肺ペストでは患者の飛沫を介した吸入感染もある。世界では南北アメリカ、アフリカ、アジア、インドでは地方病的に存在し、アフリカが患者の90%以上を占め、マダガスカルではたびたび流行が報告される。米国では、感染齧歯目と接触して感染した犬・猫や、それを介した人の感染も報告されている。 |
予防法 | 発生地では、野生齧歯目やそれらを餌とする猫など感染動物や患者との接触を避ける。 |
症状 | 発熱、せき、息切れなどだが、下痢などの消化器症状を伴う場合もある。特に高齢者、糖尿病や免疫不全など基礎疾患がある人では重症化する傾向がある。 |
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感染経路 | ヒトコブラクダが感染源の一つとして有力視されているが、患者家族や医療施設内での人から人への感染もある。中東地域から世界27カ国へ広がり患者が発生している。サウジアラビアが患者の60%以上を占める。2015年には韓国でも200名近くの流行があった。 |
予防法 | 流行地では、ヒトコブラクダなどの動物との接触をできる限り避ける。未殺菌のラクダの乳など加熱が不十分な食品を避ける。 |
症状 | 鶏、七面鳥、ウズラ等が高病原性の鳥インフルエンザウイルスに感染すると、全身症状を示して死亡する割合が高くなる。人の症状の多くは発熱、呼吸器症状(肺炎)であるが、多臓器不全で死に至る場合もある。 |
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感染経路 | 人は、感染鳥やその排せつ物、死体、臓器等に濃厚に接触することによって感染することがある。近年はH5N1亜型がアジア・欧州・北米・南米等で発生が確認されており、人の感染も起きている。自然界では、渡りをする野生の水きん類(カモ等)がウイルスを保有している場合がある。日本では近年、野鳥、家きんでH5N1亜型やH5N8亜型の高病原性鳥インフルエンザが毎年発生しており、人の感染例は報告されていないものの、死亡した鳥等との接触には注意する必要がある。また、近年、イルカやアザラシなど海棲哺乳類を含む野生の哺乳類におけるH5N1亜型の感染事例が世界各国で報告されているが、2024年には米国で生乳からH5N1亜型が検出され、感染乳牛が見つかり、さらに乳牛から人への感染が疑われる事例も報告されている。日本でも死亡したタヌキやキツネからウイルスが検出されている。 |
予防法 | 鳥インフルエンザの流行地域では、病気の鳥や死んだ鳥にむやみに近づかない、触らない。また、特に、流行地の市場等の生きた鶏を扱っている場所には近づかない。国内でも、弱っている野鳥や死亡野鳥との接触は避ける。 |
症状、感染経路、予防法 | 蚊に刺されて起こる感染症のページをご覧ください。 |
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出典:厚生労働省HP「動物由来感染症ハンドブック2025」を改変