狂犬病がいつごろから人間社会にみられるようになったかは明らかではありません。
イラクより出土した4000年以上も前の法律に「犬にかまれた人が死亡したときには、その飼い主は40シェケルの銀を支払い、奴隷をかんで奴隷が死んだときには15シェケルの銀を支払うべし」とあることから、狂犬病の存在はかなり以前より知られていたことになります。
日本でも江戸時代中期以降狂犬病の流行が繰り返し見られ、第1次世界大戦、関東大震災などの混乱期に発生件数の増加がみられました。
野犬対策、ワクチン接種などの実施により1935年頃にはかなり減少し、15件以下となりました。 しかし、第2次世界大戦後の混乱期に再び増加し1949年に76件、1950年には54件発生しました。
そのため、1950年8月に狂犬病予防法が成立し、飼い犬へのワクチン接種の義務づけ、野犬捕獲対策、その後の狂犬病予防員の献身的な活動の甲斐もあって発生件数は減少に転じ、1957年以降輸入例の1例を除いて日本国内での発生報告はありません。
ただし、世界各国、特にアジア諸国では毎年かなりの人が狂犬病で亡くなっております。 たとえば、バングラデシュは狂犬病の常在地であり、正確なデータではありませんが毎年約2,000人が死亡していると言われています。 また、お隣の韓国では1996年(5件)まで減少傾向にあったがその後1997年に18件、1998年は58件と急増しています。
このように、狂犬病は決して過去の疾病ではなく、現在でも人にとって恐るべき人畜共通感染症の1つです。
もし、みなさんが外国に行かれた場合、現地の犬や野生動物には不用意に近よらない様にご注意下さい。