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企業インタビュー

株式会社タカギ

プロジェクトを立ち上げ、社員の声を生かして改革を推進

 国内トップシェアの園芸用散水用品、蛇口一体型浄水器を主軸に、水回り製品の事業を展開している株式会社タカギ。男性中心の老舗メーカーが抱える課題と向き合い、2020年にプロジェクトを立ち上げてダイバーシティ推進に取り組んできました。ボトムアップで社員の意見を反映し、「人がまんなかにいる会社」を目指して改革を進めています。

上席執行役員 兼 総務人事部部長 岡村 大輔さん(右)、総務人事部人事課 担当課長 松田 理恵さん(左)

多様な人材が共生できる職場を目指して

[岡村] 弊社は創業60周年を迎えたものづくり企業です。良くも悪くも古い体質が残っている面があり、4、5年前に浮かび上がったのが女性社員の離職問題でした。結婚や出産で退職するケースが続き、ライフステージが変わっても働き続けられる環境づくりを真剣に考えるようになりました。
 女性に限らず、多様化する価値観に会社が追いついていない状況を変えるために、2020年にダイバーシティ推進プロジェクトを発足。タカギが創業時から目的とする「皆が楽しく働ける職場」を、今の時代に合った形で実現する取組が始まったのです。同年11月に社長が女性に代わったことで、女性活躍をはじめとする取組が一気に加速し、既成概念を崩すという観点から、服装もスーツからオフィスカジュアルに変わりました。

[松田] ダイバーシティ推進プロジェクトは、人事課が事務局となり、社内公募で集まった16人で発足しました。「意識改革」「制度整備」「キャリアパス」の3チームに分かれ、話し合ってまとめた施策案を経営陣に提案しました。今年はさらに希望者を募り、新メンバーも増えて22人に。「行動改革」「環境整備」「キャリアパス」の3チームで活動しています。

「育トレ制度」導入で、男性の取得率が大幅にアップ

[松田] このプロジェクトから生まれたのが、育児休暇を20日間有給化する「育トレ制度」です。もともと女性の育休取得率は100%でしたが、男性は3%でした。「育休は休みではなく、男女一緒にするトレーニングではないか」という整備チームメンバーの意見をきっかけに、「育トレ」という名前を付けました。
 導入にあたって、上司も含めて制度を理解してもらえるように、PDF版冊子「育トレブック」を作成しました。取得者には、夫婦で家事分担などを記入するミーティングシートを配布。配偶者のコメント欄を設けたところ、大変好評でしたね。制度導入後、男性の取得率は2021年度が75%、2022年度は85%となっています。
 また、ダイバーシティ推進の一環として、両立支援窓口を設置し、私と保健師で対応をしています。育児、妊活、性的マイノリティなどに関する相談が、いろいろな社員から寄せられるようになりました。

[岡村] 男性の育休が進まなかった理由に、賞与が目減りするネックがありました。賞与計算に影響しないルールに変更したことで、積極的に取りやすくなったと思います。あとはやはり、上司の理解ですね。私たちの世代は、「男性が育休を取るなんて」という時代を生きてきたので、認識を変える必要がありました。管理職研修にダイバーシティの内容を入れたり、女性研修に上司を巻き込んだり、座談会を開いたりして理解を促していきました。

トップダウンからボトムアップへ

[岡村] 働き方改革としては、2018年頃からフレックスタイム導入や業務のデジタル化を進め、トップの働きかけによって長時間労働を改善してきました。以前は、残業していると頑張っているイメージがありましたが、2018年に「健康宣言」、2019年に「学習宣言」を行ったことで、かなり意識が変わってきました。
 健康宣言は、「定時に退社してフィットネスに通う」など、各自が決めた健康増進の取組に、会社が補助金を出す制度です。学習宣言は、自己成長のための習い事や勉強に対する支援です。プライベートを充実させることによって、仕事の効率を上げて残業を減らす成果につながりました。現在も学習支援制度は続けています。

 こうした取組の後に、ダイバーシティ推進プロジェクトが始まり、トップダウンからボトムアップに大きく流れが変わってきました。社員の声を集めて経営陣に提案し、制度化して周知していく動きが浸透してきたように思います。

これからのタカギを創るために

[岡村] 昨年の60周年を機に、ブランディング推進室を設置しました。プロジェクトを立ち上げ、これからタカギが目指す姿について、20代、30代の若手社員を中心に意見を出し合い、経営幹部を巻き込んでディスカッションを重ねてきました。私たちが会社に望むことや、お客さまに提供できる価値などを考えるうちに見えてきたのが、タカギの宝物は人であり、「人がまんなかにいる会社になる」というタカギが目指すべき方向性です。
 4,5年前と比べると離職率は半分ほどに改善しましたが、理想に対してまだまだ課題は多いのが現状です。職種の枠組みや転勤制度については、まさに検討しているところです。キャリア形成のためにキャリア自己申告制度や社内インターシップ制度を取り入れ、自らの可能性を見出せる仕組みづくりも考えています。

 私たちは、リブランディングによって第二創業ともいえるスタートを切りました。みんなで心を合わせ、タカギで働くことが誇りであり、幸せだと感じられる会社にしていきたいですね。

社員からのコメント

総務人事部 ブランディング推進室 係長 菅野 滋之さん

 11年前に入社し、管理部門や営業、購買などの業務を経て、現在はタカギの新たなビジョンを推進する仕事をしています。妻も当社に勤めており、お互いにフレックスタイム等を利用しながら3歳の子どもを育てています。勤務時間を通常より早くできるので、保育園の送迎に助かっています。また、ダイバーシティ推進プロジェクトでは、環境整備チームで活動してきました。いろいろな新しい制度ができたので、実際に利用した社員の声を生かし、広く活用してもらえるように働きかけていきたいです。

【企業プロフィール】

企業名:株式会社タカギ
代表者:代表取締役会長 高城 寿雄、代表取締役社長 高城 いづみ
所在地:(本社)北九州市小倉南区石田2-4-1
    (北九州オフィス)北九州市小倉北区京町3-1-1セントシティ9F
業種:製造業
創業:1961年
従業員数: 1364名(内、女性701名) 
企業HP:https://www.takagi.co.jp/