北九州市を拠点に、九州全域と山口県で運送サービスを手掛ける株式会社ソル。法人向けの配送をはじめ、倉庫管理、引越し、技術者の人材派遣事業を展開しています。業界の常識を打ち破り、女性のドライバーや営業職を採用し、未経験者が成長できる環境を整備。残業削減や休暇取得も促進し、誰もが働きやすい職場づくりをしてきました。

ベテラン男性中心の枠組みを変える

　「ソル」はスペイン語で太陽という意味です。太陽のように明るく、誰からも必要とされる会社を目指して、社名にしました。15年前に一人で起業した会社ですが、今では80人の組織になりました。
　運送業界は昔から男性社会で、経験者の中途採用がほぼ100％。私もそれが当たり前だと思っていました。転機は5年ほど前、高校教師をしている先輩の紹介で、初めて新卒の女性社員を営業職に採用したことです。それまで新社会人の目線も、女性の目線も気にしたことがなかったので、すごく新鮮でしたね。
　人材不足なのに、男性の中高年というカテゴリーだけで雇用していたことに気づき、女性や若い人にどうやったら入社してもらえるか考えるようになりました。仕事の内容を細分化し、小口の配送など性別や経験に関係なくできる業務で募集したところ、女性ドライバーも採用できるようになりました。
　女性社員はまだ全体の1割ほどですが、ゼロだった頃に比べると社風はかなり変化しましたね。職場が明るくなり、多様な働き方を認めてフォローし合える組織になりました。同じタイプの社員だけでは、こういう風土は育たなかったと思います。

採用の間口を広げて、若者や女性が集まる組織に

　営業や事務の仕事は男女でさほど変わりませんが、ドライバーの場合は体力の差もあります。実際にやってみないとわからないので、まずは男性と一緒に現場に入って同じ仕事をしてもらい、できることとできないことを分けていきました。取引先によって内容や運ぶ物も違いますし、一人ひとりに合わせて業務分担を決めていきました。それと同時に、重量物のない配送業務を新規で獲得してくるなど、今までにない仕事をつくる努力もしました。
　 また、採用の間口を広げるために、車種を変えて普通免許で運転できるワゴン車を導入しました。女性に限らず、若い人たちはトラックに乗れません。ワゴン車の配送に慣れてきたら、会社が資格取得をサポートし、中型免許、大型免許とステップアップ。これまでに、20人ほどが未経験から大型免許を取り、トラックを運転しています。

仕事をチームで担当し、休みやすい環境を実現

　運送業界は休みが少なく、残業が多い。この風潮を変えなければ、いろいろな人を受け入れられないと考え、環境を整備しました。小さな組織なので、私と管理職で話をして、やると決めたら結果は早いです。みんな有休をガンガン申請してくるようになりましたね（笑）。あまりにも同じ日に集中したときは調整しますが、希望通り休みが取れる環境であることは自信を持って言えます。育児休業を取得して、復帰した女性ドライバーもいます。
　 残業削減の工夫としては、まずは取引先と交渉します。配送は下請けなので弱い立場になりがちですが、無理なときは「これ以上、働けません」と伝えるようにしています。社員の労働時間は、始業と終業がリアルタイムで見られるアプリで管理。残業が多いときは原因を究明し、すぐに解決してきたことでかなり減りました。
　 こうした環境を支えているのが、チーム体制です。従来のように一つの現場を一人で受け持つのではなく、3人以上で担当することで、誰かが休んでもフォローできる体制を整えました。

年齢や性別を問わず、みんなが輝ける会社を目指す

　経営に関することは、私と3人の管理職でミーティングをして決めます。週1回は顔を合わせて情報を共有し、各現場の責任者と連携して職場の問題にすぐに対処できるよう努めています。できる人が損をせず、できない人が取り残されないように、業務のバランスは常にチェックしますね。ミーティングに限らず、コミュニケーションは普段からみんなと取っています。私が他拠点にいるときも、クラウドを使ってすぐに情報は見られるようにしています。
　昨年12月、福岡市に拠点を出したので、まずはここをしっかり機能させていくことが当面の目標です。今後の抱負は、老若男女が働ける会社にしていくこと。若い人は増えてきたので、女性の比率を上げ、さらに年齢の高い人たちの仕事もつくり、多様な人材を受け入れていきたいです。
　労働環境は目まぐるしく変化しています。既成概念にとらわれず、いろいろな人が活躍できる場を提供できる会社でありたいです。社員一人ひとりが日々の仕事に対して常に考え、自分の意見を持って実践し、成長できる組織を目指していきます。