令和元年末に発生した新型コロナウイルス感染症は、感染力が強いとされる新たな変異も加わるなどいまだ収束の兆しが見えず、市民生活や経済活動に深刻な影響を与えている。
新型コロナウイルス感染症は、人の感染症の中で約6割を占める人獣共通感染症の一つであり、農耕や都市化による森林開発等、人による地球の生態系に影響を及ぼす行為が繰り返され、また、これが気候変動の一因となって生態系の崩壊が進み、その結果、人と野生動物の生存領域が変化し、近接してきたことから、動物の感染症に対する抵抗力を保有しない人にも伝播するようになったものとされている。
このような状況から、「人と動物の健康及び環境の健全性は一つのもの」、すなわち「健康は一つ」であるとの理念のもと、人と動物、そしてそれらを取り巻く環境が直面している様々な課題に対して、医師や獣医師、研究者だけでなく、行政や企業、市民も一緒になって解決していこうという社会活動である「ワンヘルス」が、世界中で広がりを見せている。
特に、福岡県では、平成28年に本市で開催された「世界獣医師会と世界医師会によるワンヘルス国際会議」において、ワンヘルス実践の礎となる「福岡宣言」が採択された。
さらに、令和2年6月の福岡県議会定例会で「人獣共通感染症への対応力の強化に関する決議」が全会一致で可決され、同年12月定例会では「福岡県ワンヘルス推進基本条例」が議員提案により可決成立し、本年1月5日に公布、施行された。
この条例では、「人獣共通感染症対策」や「人と動物の共生社会づくり」など、人と動物と環境の健康を一体的に守るための6つの課題について取組の基本方針を定め、これを具体化するための行動計画を県が定めることをはじめ、県にワンヘルスセンターを設置し、関係する部局と出先機関が横断的に連携する体制を整備すること、国、県及び民間の防疫や研究機能と人材育成機能等を集積させて、人獣共通感染症対策の拠点をつくることなどが明記されている。
今、世界で人獣共通感染症が多発し、人と動物の健康が脅かされ、生態系の劣化が進む中、ワンヘルスの実践は喫緊の課題であり、特に、野生動物由来である可能性が示唆されている新型コロナウイルスとの闘いが全世界で繰り広げられている現在においては、ワンヘルスに対する期待は、かつてないほど高まっている。
本市は、我が国で初めて、世界で2番目に世界獣医師会と世界医師会のワンヘルスに関する国際会議が開催された都市として、「福岡宣言」が発出された都市として、また、ワンヘルスが、その目標の多くに関わっているSDGsの先進都市を目指す、OECDの「SDGs推進に向けた世界のモデル都市」及び、国の「SDGs未来都市」として、福岡県下60市町村と一体となり、福岡県のワンヘルスの取組に全市を挙げ、最大限連携協力していかなければならない。
よって、本市議会は、本市に対し、福岡県で制定された「福岡県ワンヘルス推進基本条例」の具現化を図るために、次の措置を講じるよう強く要請する。
1 新型コロナウイルス感染症については動物由来の可能性が示唆されており、アジア各国、九州各県、大学等が連携して、人獣共通感染症や薬剤耐性対策を行う「(仮称)アジア新興・人獣共通感染症センター」の設置は、新型コロナウイルスなどの感染症対策を進めていく上でも大変有意義であるため、本市への立地について福岡県に対し、国等への働きかけの強化を強く要請するとともに、福岡県による同センターの誘致に関する取組に対し、関係機関とも連携を図り最大限協力すること。
2 ワンヘルス実践(人と動物の健康及び環境の健全性を一体的に守るための6つの課題への取組)の基本方針を具体化する福岡県行動計画に連携協力すること。
3 市民へのワンヘルス周知に努め、理解の促進を図り、その実践活動に対し、必要な支援を行うこと。
以上、決議する。