障害者に対する虐待は障害者の尊厳を害するものであり、障害者の自立及び社会参加にとって虐待を防止することは極めて重要です。このため障害者に対する虐待の禁止、予防及び早期発見や、虐待を受けた障害者に対する保護及び自立の支援のための措置、養護者の負担の軽減を図ることなどを目的として、障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(障害者虐待防止法)が平成24年10月1日施行されました。
この法律の施行により、障害者虐待の防止に関する国民の理解は着実に進み、相談・通報件数は年々増加傾向にあります。また同法は障害者虐待防止の更なる推進のため、障害者福祉施設等に対して虐待防止委員会の設置等「虐待防止のための措置」を行うよう義務付けており、同法の施行前と比べて虐待を未然に防ぐための体制の整備は格段に進められています。
しかしながら、この法律では虐待発見時の行政機関への通報義務が、養護者、障害者福祉施設従事者等及び使用者に課せられている一方、医療機関内での虐待については、発見者による行政機関への通報義務の対象外となっています。
厚生労働省が昨年4月に実施した調査では、平成27年度から令和元年度の5年間に精神科医療機関における虐待が疑われる事例は全国で72件起きていたことが分かるなど、看過できない障害者虐待事件はいまだに発生していると言わざるを得ません。
障害者自身の心身の悪化を更に招くような障害者に対する差別や人権侵害を根絶させていくためには、障害者福祉施設等と同様に、医療機関においても虐待発見時の行政機関への通報義務が必要です。
よって、本市議会は、国会及び政府に対し、障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律について、虐待発見時の行政機関への通報義務対象に「医療機関」における障害者虐待を加えることを強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。