新型コロナウイルスの出現により、今、地方自治体には新たに多くの行政需要が発生しています。ワクチン接種体制の構築、防疫体制の強化、「新しい生活様式」への変化を余儀なくされた市民の日常生活から発生する問題等、あらゆる課題に即時の対応が求められています。それと同時に、医療・介護など社会保障への対応、子育て支援策の充実、地域交通の維持・確保等、少子・高齢化の進展と共に、従来からの行政サービスに対する需要も、これまで以上に高まりつつあります。しかし、現実に公的サービスを担う人材は不足しており、疲弊する職場実態にある中、近年多発している大規模災害、また、デジタル・ガバメント化への対応も迫られています。
こうした地方の財源対応について、政府はいわゆる「骨太の方針2018」に基づき、2021年度の地方財政計画までは、2018年度の地方財政計画の水準を下回らないよう、実質的に同水準を確保してきました。しかし、新型コロナウイルスへの対応により巨額の財政出動が行われる中、2022年度以降の地方財源が十分に確保できるのか、大きな不安が残されています。
よって、本市議会は、政府に対し、2022年度の政府予算と地方財政の検討に当たっては、コロナ禍による新たな行政需要等も把握しながら、歳入・歳出を的確に見積もり、地方財政の確立を目指すため、次の措置を講じるよう強く要請します。
1 社会保障、防災、環境、地域交通、人口減少、デジタル化対策等、増大する地方自治体の財政需要を的確に把握し、これに見合う地方一般財源総額の確保を図ること。
2 とりわけ新型コロナウイルス対策として、ワクチン接種体制の構築、感染症対応業務を含めた、より全体的な保健所体制・機能の強化、その他の新型コロナウイルス対応事業、また地域経済の活性化まで踏まえた、十分な財源措置を図ること。
3 子育て、地域医療の確保、介護や児童虐待防止、生活困窮者自立支援等、急増する社会保障ニーズが自治体の一般行政経費を圧迫していることから、地方単独事業分も含めた十分な社会保障関係経費の拡充を図ること。また、人材を確保するための自治体の取組を支える財政措置を講じること。
4 デジタル・ガバメント化における自治体業務システムの標準化については、自治体の実情を踏まえるとともに、目標時期の延長や一定のカスタマイズを可能とするなど、より柔軟に対応すること。また、地方経済を活性化させるためにも、情報システムの標準化による大手企業の寡占を防止すること。また、地域での人材育成を図るなど、地域デジタル社会推進費の有効活用も含めて対応すること。
5 「まち・ひと・しごと創生事業費」として確保されている1兆円について、引き続き同規模の財源確保を図ること。
6 2020年度から始まった会計年度任用職員制度について、今後も当該職員の処遇改善が求められることから、引き続き所要額の調査を行うなどして、更なる財政需要を十分に満たすこと。また、処遇改善額が明確となるよう配慮すること。
7 地域間の税源偏在性の是正に向けては、偏在性の小さい所得税・消費税を対象に国税から地方税への税源移譲を行うなど、抜本的な改善を行うこと。また、コロナ禍において固定資産税の軽減措置等が行われたことはやむを得ないものの、各種税制の廃止、減税を検討する際には、地方6団体等を通じて、自治体の意見や財政に与える影響を十分検証した上で、代替財源の確保をはじめ、財政運営に支障が生じることがないよう対応を図ること。
8 地方交付税の法定率を引き上げるなど、引き続き、臨時財政対策債に頼らない地方財政の確立に取り組むこと。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。