東日本大震災後、公共工事の入札が成立しない入札不調が多数発生しており、国が平成25年4月から6月までに北海道で発注した公共工事のうち、入札不調となったケースが、昨年同時期の2倍に上っています。このような入札不調の増加は、東日本大震災被災地の復興事業や景気回復に伴う建設工事の増加による資材の高騰のほか、工事を担う人材不足が全国的に広がりつつある影響とみられています。
建設業就業者数については、昨年7月の国土交通省建設産業戦略会議資料によると、平成23年で約497万人となっており、平成4年の619万人から約20パーセント減少しています。また、平成23年の建設業就業者のうち、 55歳以上が約33パーセント、29歳以下が約12パーセントと高齢化が進行しています。
こうした背景には、労働環境の悪化やダンピング受注の増加があります。これまでの建設投資の大幅な減少により受注競争が激化し、ダンピング受注や下請へのしわ寄せ等で、現場で働く労働者の処遇が悪化するなど、深刻な人材不足への影響が生じています。重労働の割に低賃金なため、中堅・若年層の離職が相次ぎ、就職後3年以内の離職率も製造業の2倍近くに上っています。
震災復興事業は加速させなければならず、また、首都直下地震及び南海トラフ巨大地震に備え、老朽化が進む国内全域の公共インフラの防災・減災対策も待ったなしです。そのためにも、必要な公共工事の円滑な入札に対する取組は急務と言えます。
よって、本市議会は、政府に対し、入札不調を解消するため、次の環境整備を早急に進めるよう強く要請します。
1 地元に精通した施工力のある建設業者が各地域のインフラを安定的・継続的に維持、管理できるようにするため、地元貢献や技術力に対する加点評価など、多様な入札契約方式を導入すること。
2 事業の発注者が元請業者に支払った代金が、下請業者や現場で働く職人へ着実に届く流れをつくるため、ダンピング対策を徹底すること。
3 公共工事設計労務単価の大幅引上げに伴う賃上げ状況の調査とフォローアップ、職人の人材確保と働く環境の改善に向けた社会保険の加入促進や公共工事の入札において、若年者らの確保・育成に取り組む建設業者への加点評価を行うこと。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
意見書・決議(議員提出議案第31号~35号、38号・委員会提出議案第3号)
議員提出議案第31号・公共工事の入札不調を解消する環境整備を求める意見書
議員提出議案第32号・有床診療所の防火設備の整備等に関する意見書
本年10月11日、福岡市の整形外科医院で火災が発生し、入院患者8人を含む10人が死亡しました。亡くなったのは、いずれも70歳代又は80歳代の高齢者でした。
火元は、4階建て医院の1階にあった医療器具周辺とみられています。防火体制では、自動的に閉まるはずの防火扉の多くが作動しなかった点や避難誘導、通報、初期消火等に当たる当直職員が1人しかいなかった点などの不備がいくつも重なり、大きな惨事を招いたと指摘されています。原因を徹底的に究明し、再発防止を図らねばなりません。
過去に火災で多数の犠牲者が出たグループホームなどの高齢者施設については、総務省消防庁が、スプリンクラー設置の義務付けを決めています。
今回の悲惨な火災を踏まえれば、有床診療所にも初期消火に有効なスプリンクラーの設置が必要なのは明らかです。
しかし、延床面積が一定基準以下の診療所には、スプリンクラーの設置義務がなく、ベッド数19床以下の有床診療所の多くがこれに該当するため、今回のような事態の再発が危惧されています。
地域医療を支える診療所の医師の報酬単価、有床診療所の入院単価は非常に低いまま据え置かれてきました。今でも有床診療所の経営が非常に厳しい中、スプリンクラー等の設置義務が課せられた場合、多額の費用の負担に耐え切れず、地域の有床診療所が次々に無床化し、地域医療供給体制が維持できなくなることが懸念されています。
よって、本市議会は、政府に対し、患者の生命を守るとともに有床診療所が良質な医療を安定して提供できるよう、次の措置を講じることを強く要請します。
1 有床診療所の防災も含めた安全体制を充実強化するため、防火設備の整備等への十分な財政支援を行うとともにスプリンクラー設置の義務付けを行うこと。
2 夜間の人員配置に関する規定等を見直すなど、防火体制を強化するための措置をとること。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第33号・介護保険制度における新たな地域支援事業の導入に係る意見書
現在、我が国では、第6期介護保険事業計画を視野に、介護予防給付の一部をこれまでの個別給付から、市町村が実施している地域支援事業へ段階的に移行させ、新しい総合事業として包括的に実施する方向で検討が進められています。
介護予防給付やこれまでの地域支援事業において、市町村の現場で要支援者などに対する介護予防の取組が進められ、現在、全国の要支援者は約150万人に達し、介護予防給付費も4,000億円を超えるなど、介護予防は大きな役割を果たすようになってきています。さらに、介護予防サービスを担う事業所も地域の中で育っており、大きな力になっています。
こうした状況の中で、急激な制度の変更は、現場の事業者や市町村に大きな混乱を招くことになります。
よって、本市議会は、政府に対し、次の措置を講じるよう強く要請します。
1 新たな地域支援事業の導入に当たっては、市町村の介護予防事業の機能強化の観点から、市町村の現場で適切に事業を実施できるよう手引書の作成、先進的な事例の周知、説明会や研修会を通じた丁寧な説明を行うこと。
2 特に、介護給付と合わせて事業実施を行っている事業者などに対して、円滑な事業移行ができるよう適切な取組を行うこと。
3 これまでの地域支援事業については事業費の上限が設定されていたが、介護予防給付の移行に伴い、上限設定について適切に見直すこと。また、事業の詳細については市町村の裁量で自由に取り組めるよう配慮すること。
4 新たな地域支援事業の実施に当たっては、住民主体の地域づくりなどの基盤整備が重要であり、こうした市町村における環境整備に合わせて適切な移行期間を設けるとともに、地域のマネジメント力の強化のため、必要な人材の確保等については、消費税財源を有効に活用すること。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第34号・消費税の軽減税率制度の導入を求める意見書
厳しい財政状況の下、一層本格化する少子高齢社会にあって、社会保障の費用を安定的に確保し、将来にわたって持続可能な社会保障制度を維持、強化していくために、社会保障と税の一体改革関連8法案が昨年8月に成立しました。安倍総理は、法律どおり来年4月1日に消費税率を5パーセントから8パーセントへ引き上げることを決断しました。さらに、法律では平成27年10月には消費税率を10パーセントへ引き上げる予定となっています。
消費税率の引上げは国民の暮らし、特に低所得者層の生活に大きく影響を与えることから、8パーセント引上げの段階では簡素な給付措置が実施されます。しかし、これはあくまでも一時的な給付措置であり、消費税率の引上げに当たっては抜本的かつ恒久的な対応が求められています。
食料品などの生活必需品に対する軽減税率制度の導入は、逆進性対策としても、国民の消費税に対する理解を得るためのものとしても必要です。各種世論調査でも約7割が軽減税率制度の導入を望んでいます。
また、与党の平成25年度税制改正大綱では、「消費税率の10パーセント引上げ時に、軽減税率制度を導入することを目指す」とし、「本年12月予定の2014年度与党税制改正決定時までに、関係者の理解を得た上で、結論を得るものとする」と合意されています。
よって、本市議会は、政府に対し、軽減税率制度の導入へ向けて、年内に結論を得るようその議論を加速し、軽減税率を適用する対象及び品目並びに中小規模事業者等に対する事務負担の配慮などを含めた制度設計の基本方針について鋭意検討を進め、その実現へ向けての環境整備を図ることを強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第35号・企業減税等から確実な賃金引上げを求める意見書
内閣府が発表した本年4~6月期の国内総生産(GDP)成長率は、2次速報値において、実質で前期(1~3月期)比0.9パーセント増、年率換算では3.8パーセント増と、本年8月に発表された1次速報値(年率2.6パーセント増)から大幅に上方改定されました。しかし、実体経済の現状を示す数多くの指標が改善し、企業の景況感が上向いている一方で、景気回復を実感する国民は少なく、賃金引上げの要請が高まっています。
本年10月1日に決定した「民間投資活性化等のための税制改正大綱」には企業減税が盛り込まれていますが、これらが賃金引上げなどの景気浮揚に向けた動きとなるかどうかは、企業自身の判断に委ねられ、内部留保にとどまる懸念も拭えません。
また、同じく「民間投資活性化等のための税制改正大綱」では、所得拡大促進税制の拡充も決定しましたが、最低賃金の引上げに取り組む企業への助成金(業務改善助成金)や業界を挙げた賃金引上げの環境整備を支援する助成金 (業種別中小企業団体助成金)などの拡充を図ることも、更なる支援策として検討すべきと考えます。
そこで、本年9月に始まった政府、労働者、企業経営者の各代表による「経済の好循環実現に向けた政労使会議」には、賃金の引上げが経済成長に必要不可欠との認識を政労使間で共有し、企業が賃金を引き上げやすい環境を整えるための実行力が求められます。
アベノミクスによる景気回復の兆しを、実感が伴う景気回復とするためにも、減税等による業績の好転から得る収益を確実に賃金上昇に反映させる賃金の配分に関するルールを作ることが重要です。
よって、本市議会は、政府に対し、賃金引上げに結び付く実効的な施策を講じるとともに、その具体的な道筋を示すことを強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第38号・中国による防空識別圏の設定の即時撤回を求める決議
去る11月23日、中国政府は、「東シナ海防空識別区」を設定し、当該区域を飛行する航空機に対して中国国防部の定める規則を適用するとともに、これに従わない場合には中国軍による「防御的緊急措置」をとる旨発表した。
中国側のこうした措置は、東シナ海周辺における現状を一方的に変更し、事態をエスカレートさせ、現場海空域において不測の事態を招きかねない極めて危険なものである。
今回の中国側の措置は、公海上空を飛行する民間航空機を含む全ての航空機に対して、一方的に軍の定めた手続に従うことを強制的に義務付けた。これに従わない場合、軍による対応措置を講じるとしたことは、国際法上の一般原則である公海上空における飛行の自由の原則を不当に侵害するものであると同時に、アジア太平洋地域ひいては国際社会全体の平和と安定に対する重大な挑戦である。
東シナ海は多数の民間航空機の飛行経路であり、民間航空の秩序及び安全への影響の観点からも大きな問題である。このような中国側の措置は、我が国に対して何ら効力を有するものではないことをここに言明する。
また、中国側が設定した空域は、我が国固有の領土である尖閣諸島の領空があたかも「中国の領空」であるかのごとき表示をしており、このような力を背景とした不当な膨張主義を民主主義・平和主義国家として断じて受け入れることはできない。
よって、本市議会は、公海上空における飛行の自由を妨げるような今回の一切の措置を、中国側が即時撤回することを強く求めるものである。
以上、決議する。
委員会提出議案第3号・肝硬変及び肝がん患者などへの療養支援を求める意見書
平成22年の肝炎対策基本法の施行に伴い、厚生労働省は、同年6月から肝炎対策協議会を開催し、肝炎対策の推進に関する基本的な指針の話合いを進めています。
また、平成23年第177回通常国会において、全国の肝炎患者が病気と闘いながら署名を集めた請願も採択されましたが、対策の中身については、先に進んでいないのが現状です。
よって、本市議会は、政府に対し、次の措置を講じるよう強く要請します。
1 肝硬変及び肝がん患者に対する医療費助成を含む支援を行うこと。
2 新しい検査方法、治療法及び治療薬の保険適用を早期に実現すること。
3 身体障害者手帳交付の認定基準を緩和すること。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
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