政府は、6月から、全国37路線50区間において、来年3月末までの高速道路の無料化の社会実験を開始しました。
しかしながら、高速道路の無料化や受益者負担を基本としない安価な料金の設定は、フェリーをはじめとして鉄道やバス等との適切な役割の分担を損ねるばかりでなく、我が国の交通体系の崩壊につながりかねません。高速道路の無料化や安価な料金の設定の影響を受け、地域の交通網が縮小することとなり、自家用車を利用できない高齢者や学生等の交通弱者は移動手段を確保できず、地方の更なる衰退を招く恐れがあります。更には、地球温暖化対策にも完全に逆行するものです。
このように多くの問題点を抱えているにもかかわらず、政府は、今後も高速道路の無料化を段階的に進めるとしていますが、この施策が国策によることを考えれば、本来、総合的な交通体系の構築を前提とすべきであり、現政権が今回進めている施策によって影響を受けるフェリー、鉄道、バス等の公共交通機関に対してはその維持及び存続のために公的支援策を同時に講じるべきです。
よって、本市議会は、国会及び政府に対し、平成23年度予算編成において公共交通機関への支援を含む総合的な交通体系の構築に向け、次の措置を講じるよう強く要請します。
1 公共交通機関の安定的な運営を踏まえて、総合的な交通体系の構築を図ること。
2 高速道路と競合し影響を受けるフェリー、鉄道、バス等の公共交通機関に対しては、減収の補てんを含め、事業者の実情を踏まえた支援を講じること。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
意見書・決議(議員提出議案第45号~53号、60号)
議員提出議案第45号・公共交通機関への支援を含む総合的な交通体系の構築を求める意見書
議員提出議案第46号・地方分権に対応する地方議会の確立を求める意見書
憲法第93条第2項は、地方公共団体の長と議会の議員は、住民が直接選挙することを定めています。首長と議会がそれぞれ住民の意思を代表する二元代表制の下では、首長と議会は対等の機関であり、議会は自治体運営の基本的な方針を議決し、その執行を監視し、評価することが求められています。
しかしながら、一部の自治体において、首長が法令の規定に違反し、議会を招集せず、専決処分を濫用し、議会の機能を封じ込める事態が発生しています。
国会及び政府はこのような二元代表制を否定し地方自治の根幹を揺るがす事態を座視することなく、その打開に向けて所要の法改正を行うべきです。
また、地方分権の推進に伴い役割が拡大する地方議会を充実し、強化するため、地方議会の役割及び権限の明確化も急務です。
よって、本市議会は、国会及び政府に対し、真に地方分権時代に対応する地方議会を確立するため、次の法改正を早急に行うよう強く要請します。
1 首長が議会を招集する現行の仕組みを改め、議長にも議会招集権を付与すること。
2 政治活動との区別を踏まえた上で、住民意思の把握などを含めた地方議会議員の職責及び職務の範囲を明確にすること。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第47号・新たな経済対策を求める意見書
今般の急速な株価の下落と円高は、地域経済に深刻な打撃を与えています。特に地域経済は平成21年度第1次補正予算が執行停止され、本年度の公共事業予算も対前年度比マイナス18.3パーセントとなるなど、大幅な予算の削減による地域経済の弱体化が顕在化しています。
しかしながら、政府は平成23年度予算について、一部を除いた各省の予算を1割削減する方針を打ち出していることから、公共事業予算が来年度以降も削減されるのではないかといった懸念があります。
国土交通省の来年度予算概算要求は、本年度当初予算と比べて2パーセント増の予算要求をしていますが、深刻な状況に苦しむ地域経済と地域雇用を守るためには、これ以上の削減は到底認められるものではありません。むしろ深刻な不況から一刻も早く抜け出すために、即効性のある事業を前倒しで行うなど、景気を刺激する政策を速やかに打ち出すべきです。
よって、本市議会は、国会及び政府に対し、地域経済の活性化に向けて次の政策を速やかに実行するよう強く要請します。
1 デフレ脱却に向けて政府が毅(き)然たる意志を示し、日本銀行との適切かつ強固な協力体制を構築すること。
2 将来性ある農地集積事業、スクールニューディール、地域医療などの事業に集中的に投資し、企業による雇用や設備投資を促進すること。
3 来年度予算における公共事業費の維持あるいは拡充をし、地域経済と地域雇用の下支えをすること。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第48号・完全な地上デジタル放送の実施に向けて円滑な移行策を求める意見書
来年7月24日をもってアナログ放送を終了し、完全に地上デジタル放送に移行することが予定されています。総務省の調査では、本年3月時点で地上デジタル放送対応受信機の世帯普及率が83.8パーセントと発表されました。
しかし、離島を抱える沖縄県や、山間部の多い岩手県では普及率が70パーセント未満となっており、ビルの陰などで電波が届きにくい施設の対策は達成率が約48パーセントとなっています。更に、共同アンテナの改修が必要なマンションなど210万施設への対応も約77パーセントにとどまっています。
地上デジタル放送への移行まで1年を切り、完全移行までのプロセスが最終段階に入った今、円滑に移行を進めるためには、現在指摘されている諸課題に対して政府を挙げて対応策を打つことが必要です。
一方、来年のアナログ放送の終了の時点で残存するアナログテレビは推定で約3,500万台と言われ、これらの中には廃棄物となるものもあることから、不法投棄の懸念も指摘されています。不要となるテレビの処分に関する対策も検討されるべきです。
地上デジタル放送への移行と、それに伴う廃棄物の処分については、いずれも特に自治体の取組が不可欠であり、政府は自治体の取組を支援すべきです。
よって、本市議会は、政府に対し、完全な地上デジタル放送の実施に向けて移行が円滑に進むよう、次の措置を講じることを強く要請します。
1 離島、山間地域などの普及率が低い地域に対して地上デジタル放送への移行の啓発活動を重点的に推進し、全国に52か所ある総務省テレビ受信者支援センターの相談窓口を更に増やすこと。
2 地上デジタル放送に関する個別相談会を自治体でもきめ細かく実施できるよう、予算措置などの支援策を十分に講じること。
3 地上デジタル放送に対応していない集合住宅に対するアンテナ設置や施設内配線の支援策を着実に履行するとともに、ビルの陰などで電波が届きにくい世帯についても確実な移行策を推進すること。
4 大量のアナログテレビが一斉に廃棄物になるため、懸念されている不法投棄の防止策及び円滑なリサイクル回収を着実に推進すること。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第49号・子宮頸がんの予防対策の推進を求める意見書
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が主な原因である子宮頸(けい)がんは、予防できる唯一のがんと言われています。年間約1万5,000人が新たにり患し、約3,500人が亡くなっていると推計されていますが、近年、り患の若年化が進行し、その死亡率も高くなっています。結婚前や、妊娠前のり患は女性の人生設計を大きく変えてしまいかねず、子宮頸がんの予防対策が強く望まれています。
子宮頸がんの予防対策としては、予防ワクチンを接種すること及び細胞診とHPV核酸検査を併用して行う予防検診によってHPV感染の有無を定期的に検査し、前がん病変を早期に発見することが挙げられます。
昨年承認され発売が開始された子宮頸がんワクチンは、高額なため、一部の自治体では公費で助成を行っていますが、居住地により接種の機会に格差が生じることがないよう国の取組が望まれます。予防検診の実施についても同様に、自治体任せにするのではなく、受診の機会を均てん化すべきです。
よって、本市議会は、政府に対し、予防ワクチンの接種及び予防検診の実施を推進するため、次の措置を講じるよう強く要請します。
1 予防効果の高い特定の年齢層に対して予防ワクチンの接種を一斉に実施し、その費用については国が全額負担するとともに、その他の者についても予防ワクチンを接種した場合には、その費用の一部を国が補助することにより、居住地域を問わない接種の機会の均てん化を図ること。
2 ワクチンの安定的な供給を確保し、新型ワクチンの開発に関する研究を推進すること。
3 特に必要な年齢層を対象にした予防検診を実施し、その費用については国が全額負担することにより、居住地域を問わない受診の機会の均てん化を図ること。
4 子宮頸がん及び子宮頸がんの予防に関する正しい知識の普及及び相談体制等の整備を図ること。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第50号・公共投資の推進による景気対策を求める意見書
我が国の景気の現状は、好調な輸出を背景に、リーマンショック後の最悪期は脱することができました。しかしながら、依然として低成長にとどまっており、雇用情勢も新卒未就職者が数多く出るほど厳しい状況が続いています。
特に地方経済は深刻で、中小零細企業は、デフレの影響や公共投資の大幅な削減の影響で長引く不況にあえいでいます。
したがって、政府は当面の景気回復のための経済対策を打つべきであり、特に地方経済の振興は国の景気対策として欠かせません。そのためには、政府が地方振興策及び地方の雇用拡充に重点的に取り組み、必要な公共投資を積極的に行うことで、景気対策を進めるべきです。
公共施設の耐震化や、近年多発しているゲリラ豪雨などの災害対策は、必要な公共事業として潜在的な需要が高いと考えます。
このように、必要な公共投資は着実に推進すべきであり、地方経済が活性化する効果も大いに見込めます。
よって、本市議会は、政府に対し、地方の雇用拡充と内需振興を図る景気対策のために、次の措置を講じるよう強く要請します。
1 学校など公共施設の耐震化に積極的に取り組み、雇用の拡充と地方経済の活性化を図ること。
2 太陽光発電の設置や、介護施設の拡充といった21世紀型の公共投資を着実に促進し、内需の振興を図ること。
3 老朽化した橋りょう、トンネル、上下水道管などの施設の計画的な更新及び大規模な修繕を積極的に推進し、地域生活の安全と地方振興に取り組むこと。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第51号・司法修習生に対する給費制の堅持を求める意見書
平成16年の裁判所法の一部改正により、本年11月1日からこれまで国が司法修習生に対して給与を支給してきた給費制が廃止され、これに代えて、申請により国が修習資金を貸与する貸与制が導入されようとしています。
同法の改正に際してなされた衆参両院法務委員会の附帯決議では、経済的事情から法曹への道を断念する事態を招くことがないよう、法曹養成制度全体の財政支援の在り方も含め、関係機関と十分な協議を行うことを求めていますが、財政支援の具体的な在り方についてはいまだ示されていません。
司法修習生に対する給費制は、修習期間中の生活費を保障することで、司法修習生が修習に専念できるようにしたものです。このため、司法修習生はアルバイト等を禁止されています。しかし、貸与制の導入後も、従前どおり修習専念義務は課せられ、アルバイト等はできません。
更に、法科大学院への入学から司法修習生になるまでにも多大な経済的負担がある上に、給費制が廃止されれば、経済的に余裕のない者は、貸与制度を利用せざるを得なくなり、法曹として社会に出た当初から多額の負債を抱えた状態では、公共性及び公益性の求められる職務の遂行に影響を及ぼしかねません。
また、急激な法曹人口の増加により、弁護士の就職先の確保が十分ではない状況の中で、給費制が廃止されることとなれば、優秀な人材が経済的な事情から法曹を志すことを断念せざるを得なくなることが危惧(ぐ)されます。
裁判員制度の導入により、国民が裁判に参加することで、司法に国民の良識を反映させることが期待され、司法の担い手である法曹の役割の重要性も増していることから、貧富の差にかかわらず多様で優秀な人材を確保し、国民の目線に立った活動ができる法曹を養成するためにも、司法修習生に対する給費制の維持は、我が国にとって不可欠です。
よって、本市議会は、国会及び政府に対し、司法修習生に対する給費制を堅持するため、改正裁判所法を早急に見直すよう強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第52号・安心できる年金制度の確立を求める意見書
公的年金制度は、国民の高齢期の生活を支える重要な社会保障制度ですが、職業によって加入する年金制度が分かれ、負担と給付が異なっていることや、年金制度に対する不信感により、国民年金の未加入者や未納者が発生するなどの問題を抱えています。
また、今日少子高齢化が急速に進展し、経済の低迷に伴う雇用情勢の悪化や国の厳しい財政状況などにより、低所得者層の占める割合が増大しており、公的年金制度を取り巻く環境は厳しいものがあります。
国民年金については、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によって防止することを目的として、1959年に国民年金法が制定されるとともに、1961年に同法が全面施行され、保険料の収納事務が開始されたことにより、国民皆年金制度が実現しました。
現在、国民年金の受給者数は昨年3月末現在で2,695万人いますが、本年度の老齢基礎年金の給付額は、加入可能月数480月(40年)の保険料をすべて収めた場合でも年額79万2,100円であり、月額にすると6万6,008円です。最低限度の社会保障制度である生活保護制度の受給者は、例えば、本市の70歳以上の一人暮らしの方で住宅扶助の上限である3万1,500円を含めた場合、受給額は月額10万4,100円となり、老齢基礎年金の給付額は大きくそれを下回る結果となっています。
よって、本市議会は、国会及び政府に対し、高齢化社会を迎えるに当たり、活力のある長寿社会を実現させるよう、憲法第25条に規定された健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保証し、将来にわたり持続可能で安心して暮らせる公的年金制度を確立させるため、抜本的な年金制度改革を行うよう強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第53号・米価の下落に対する緊急対策を求める意見書
米価は昨年9月の時点に比べて1俵当たり約1,000円下落し、1俵当たり1,700円の戸別所得補償を背負った平成22年度産米が市場に流通し始めると、本年も豊作が予想されることから、米価が更に下落する可能性は極めて高いです。
米価の下落の原因は、米価の下落と財政支出の拡大の持続的連鎖が生じる不適切な戸別所得補償モデル事業にあります。米の生産による収益が過剰に期待されることから、農地の貸しはがしや、貸し渋りが起こり、加えて農業農村整備事業予算が約3分の1に縮減されたことと相まって、集落営農の促進や農業基盤整備が阻害されている現状はこれ以上看過できません。
現下の政策をこのまま進めると、いずれ財政的に破綻した戸別所得補償は打ち切られ、農家は所得の大幅な減少に、消費者は麦や大豆の減産や安全な国産米の生産農家の大幅な減少に直面し、我が国の農業は生産者にとっても消費者にとっても壊滅的な打撃を受けかねません。
よって、本市議会は、国会及び政府に対し、現下の米価が下落している現状を真摯(し)に受け止め、現在の農政を抜本的に改め、直ちに政策転換を図ることを強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第60号・高齢者を社会的に孤立させない施策の充実を求める決議
全国で高齢者の所在不明が相次ぐという、信じられない事態となっている。失踪なのか、既に亡くなっているのか、真相は明らかにされなければならないが、今回の事態が浮き彫りにしているのは、高齢者の社会的孤立である。本市でも、100歳以上の高齢者8人の所在が確認できないでいる。
政府が発表した本年の高齢社会白書によると、「一人暮らしで、困ったときに頼れる人がいない」、「ふだん、近所の人との付き合いがほとんどない」という高齢者が急増していることが明らかになっており、家族を含めて社会から孤立した高齢者の深刻な実態を示している。
背景には、急速な高齢化と単身者の増加だけでなく、病気や貧困、都市化によるコミュニティの崩壊など複雑で多岐にわたる原因が横たわっていると考えられる。
高齢者の社会的孤立をなくすため、高齢者の安否の確認を行うことにより孤立状態の実態を把握し、見守りが必要な高齢者や孤立状態に陥る可能性がある高齢者を支援するための施策を充実させるとともに、地域コミュニティの強化につながるよう、地域における支え合いの活動に対する支援を行うことが早急に求められる。
よって、本市議会は、本市に対し、支援を必要とする高齢者や高齢者の社会的孤立をなくすための支援策を充実させるとともに、高齢者に対し個別的な支援を行うための体制の強化を急ぐよう求める。
以上、決議する。
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