脳脊髄液減少症は、交通事故やスポーツ外傷等の身体への強い衝撃が原因で脳脊髄液が漏れ、減少することによって引き起こされ、頭痛、めまい、耳鳴り、けん怠感等、多種多様な症状が複合的に現れるという特徴を持っています。
本年4月、厚生労働省から、脳脊髄液減少症とわかる前の検査は保険診療の対象となるとの事務連絡が出されました。これは、本来、検査費用は保険請求できるはずのものが、地域によって対応が異なっていたため、それを是正するために出されたものです。これは、患者にとり朗報でした。しかし、脳脊髄液減少症の治療に有効であるブラッドパッチ療法については、いまだ保険診療の対象とされず、高額な医療費の負担に、患者及びその家族は、依然として厳しい環境に置かれています。
脳脊髄液減少症についての診断基準や診療指針(ガイドライン)の作成を目指す国の研究班は、本年8月、ついに中間目標の100症例の収集を達成しました。今後は、収集した症例から基礎データをまとめ、診断基準を示すための作業を速やかに行い、本年度中に診断基準を定めるべきです。そして、来年度には、診療指針(ガイドライン)の策定及びブラッドパッチ療法の治療法としての確立を図り、早期にブラッドパッチ療法を保険診療の対象とすべきです。また、同療法を独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度の対象とすべきです。
よって、本市議会は、国会及び政府に対し、脳脊髄液減少症の診断基準及び治療法の確立を早期に実現するよう、次の措置を講じることを強く要請します。
1 本年度中に脳脊髄液減少症の診断基準を定めること。
2 来年度に、ブラッドパッチ療法を含めた診療指針(ガイドライン)を策定し、ブラッドパッチ療法を脳脊髄液減少症の治療法として確立させ、早期に保険診療の対象とすること。
3 ブラッドパッチ療法等を含む脳脊髄液減少症の治療を、災害共済給付制度の対象に速やかに加えること。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
意見書・決議(議員提出議案第61号~68号、74号・委員会提出議案第2号)
議員提出議案第61号・脳脊髄液減少症の診断基準及び治療法の確立を求める意見書
議員提出議案第62号・ヒトT細胞白血病ウイルス1型の総合対策を求める意見書
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV‐1)は、致死率の高い成人T細胞白血病(ATL)や、進行性の歩行障害や排尿障害を伴う脊髄疾患(HAM)等を引き起こします。国内の感染者数は120万人に上ると推定され、毎年約1,000人以上がATLで命を落とし、HAMの発症者は激痛や両足まひ、排尿障害等に苦しんでいます。また、一度感染すると現代の医学では根本的な治療を行うことはできません。
現在の感染経路は、母乳を介して母親から子どもに感染する母子感染が約6割を占めていますが、このウイルスは、潜伏期間が40年から60年と長期間であるため、妊婦健康診査時にHTLV‐1抗体検査を実施し、陽性の妊婦には授乳指導を行うことで、効果的に感染の拡大を防止することが必要です。
本年10月、厚生労働省が、HTLV‐1抗体検査を妊婦健康診査の標準的な検査項目に追加したことに加え、公費負担の対象とできることにしたことで、今後、全国で感染の拡大を防止する対策が実施されることになります。対策を効果的なものとするには、医療関係者のカウンセリング研修や感染者である妊婦等の相談体制の充実を図るとともに、診療拠点病院の整備、予防法及び治療法の研究開発、国民への正しい知識の普及及び啓発等の総合的な対策の推進が不可欠です。
よって、本市議会は、政府に対し、HTLV‐1の総合対策を推進するため、次の措置を講じるよう強く要請します。
1 医療関係者や地域保健の担当者を対象とした研修会を早急に実施すること。
2 HTLV‐1母子感染対策協議会を全都道府県に設置し、検査体制並びに保健指導及びカウンセリングの体制の整備を図ること。
3 相談支援センターを設置し、感染者及び発症者の相談支援体制の充実を図ること。
4 感染者及び発症者のための診療拠点病院の整備を推進すること。
5 発症の予防や治療法に関する研究及び開発を大幅に推進すること。
6 国民に対する正しい知識の普及と理解の促進を図ること。
7 発症者に対する支援及び福祉対策を推進すること。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第63号・子ども手当の財源の地方負担に反対する意見書
政府は平成22年度予算から導入した子ども手当について、全額を国庫負担で実施するとの方針を繰り返し表明してきましたが、同予算では暫定措置として地方負担約6,100億円が盛り込まれました。
本来、全額を国庫負担で行うことが原則だった子ども手当について、原口前総務大臣は国会答弁等で、地方負担を来年度以降は継続しないことを明確にしていたにもかかわらず、現政権は来年度以降も地方負担を求めることに前向きの考えを示しています。
子育て支援は地域の実情に応じて地方が事務を担当すべきですが、子ども手当のような全国一律の現金給付に関する事務は国が行い、国が全額を負担すべきです。こうした内容について地方との十分な協議もないままに、来年度予算でも地方負担を継続させることに強く反対します。
よって、本市議会は、国会及び政府に対し、子ども手当の地方負担を廃止し、全額を国庫負担で行うよう強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第64号・地方経済の活性化策を求める意見書
地方の経済と雇用は依然として極めて厳しい環境に置かれ、地域間格差もますます拡大しています。今必要なことは、何よりも地域で仕事を生み出すことであり、その上で雇用の維持及び創出並びに失業者の支援の抜本的な強化などを強力に推し進め、地方経済の活性化を図らなければなりません。
地方では、真に必要な公共事業の推進や農商工連携の拡充、観光振興の拡充など、地域の実情に応じた経済対策が求められています。特に学校や公共施設の老朽化対策と耐震化、橋りょうや上下水道などの社会資本ストックの改修等は住民生活を守る上でも、進めていかなければなりません。
よって、本市議会は、政府に対し、次の措置を含め、地域に即した事業を支援することによる地方経済の活性化策を速やかに実施するよう強く要請します。
1 地域活性化交付金の拡充を含め、自治体に対する予算を大幅に拡充すること。
2 厳しい雇用状況の中で自治体における雇用の創出がより図られるよう重点分野雇用創造事業の要件の緩和など拡充策を講じること。
3 老朽化した学校施設等、社会資本の再生整備を推進するため、老朽施設改造工事費の国庫負担の対象を拡充するなどの財政的支援を含めた対策を図ること。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第65号・TPPへの対応に関する意見書
政府は、11月9日に包括的経済連携に関する基本方針を閣議決定し、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について情報収集を進めるために関係国との協議を開始することとしました。
TPPは、原則として全ての物品について関税の撤廃を目指しており、仮に、TPPが締結されれば、国内の農業生産が4.1兆円減少し、340万人に及ぶ地方における雇用が喪失されると試算されており、地域の経済、社会及び雇用が大打撃を被ることは必至です。
我が国は、食料の60パーセントを海外に頼っていますが、更に食料自給率が低下することになれば、安全で安心な食料の安定的な供給が脅かされ、国民に大きな不安を与えることになります。
また、TPPでは、物品の貿易だけでなく、非関税障壁として様々な分野での包括的な交渉が行われ、農林水産分野以外にも経済や生活に係る多様な分野について基準や仕組みが根本的に変更されることで、「国のかたち」が一変してしまう可能性があります。
よって、本市議会は、政府に対し、そのような判断を十分な国民的議論がないまま拙速に行うことは大きな問題であることから、TPPに対しては次のとおり対応することを強く要請します。
1 我が国及び福岡県の農業に対して壊滅的な打撃を与えるTPP交渉については、参加しないこと。
2 TPPについては、全品目での関税撤廃だけでなく、様々な分野での包括的な交渉が行われ、農林水産分野以外にも国民の経済や生活に係る多様な分野について影響があることを国民に十分説明すること。
3 「多様な農業の共存」を基本理念として、農業及び農村が多面的機能を発揮し、食料の安全保障を確保するなど、食料自給率の向上、農業及び農村の振興などを損なわないよう対応すること。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第66号・切れ目ない中小企業支援及び金融支援を求める意見書
現在、中小企業を取り巻く環境は、消費の低迷、デフレに伴う低価格競争、急激な円高など厳しい状況が続いており、本年の中小企業景況調査(7-9月期)によると、中小企業は製造業を中心に依然厳しい状況にあります。
このような状況の中で、緊急保証制度と中小企業金融円滑化法が本年度末で時限を迎えます。中小企業にとって最も重要な資金繰りに対する支援を打ち切ることで資金に困窮すれば、事業が衰退し雇用に影響します。また、成長分野の事業に取り組む中小企業の支援を進めることは雇用の促進にとっても重要です。年末及び年度末の中小企業の資金繰りに万全を期すとともに、本格的な景気回復に向けて切れ目ない対策が必要です。
一方、来年度の税制改正において法人税率の引下げを行う場合、その財源を確保するための租税特別措置の見直しの結果として、中小企業が増税になってしまう可能性が指摘されています。法人税率を引き下げる際は、中小企業の負担についても配慮すべきです。
よって、本市議会は、政府に対し、次の措置を含め、切れ目ない中小企業支援及び金融支援を早急に決定し、実施するよう強く要請します。
1 中小企業の資金繰りに対する支援策として、本年度末で期限切れとなる中小企業金融円滑化法と緊急保証制度を再延長し、保証枠を拡大すること。
2 成長分野の事業に取り組もうとする中小企業を支援するため、官民ファンドである株式会社産業革新機構を有効に活用し、リスクマネーの提供を積極的に行うこと。
3 来年度の税制改正における法人税率の引下げのための財源の確保は、中小企業に配慮し、租税特別措置の見直しによって増税となる場合は、負担の緩和策を講じること。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第67号・ロシア大統領の北方領土訪問に対し、毅然とした外交姿勢を求める意見書
ロシアのメドベージェフ大統領が本年11月1日、我が国固有の領土である北方四島の一つ、国後島を訪問しました。
北方領土は歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であることは明白であり、ロシアも1993年の東京宣言において「北方四島の帰属に関する問題については、歴史的・法的事実に立脚し、両国間での合意の上、作成された諸文書及び法と正義の原則を基礎として解決する」との指針を確認しています。
旧ソ連時代を含め、ロシアの国家元首が北方領土を訪問したのは初めてであり、大統領の訪問はこうした日露両国間の合意を無視し、ロシアによる四島の不法占拠を既成事実化しようとするものです。
また、訪問の背景には、普天間飛行場の移設問題や、中国人船長の釈放問題など、民主党政権がもたらした外交史上例を見ない失態があることは明白であり、更なる外交上の失態は、我が国及びアジア太平洋地域の安全保障及び経済発展に重大な影響を与えます。
よって、本市議会は、国会及び政府に対し、今般のメドベージェフ大統領の北方領土訪問に厳重に抗議し、毅(き)然たる外交姿勢でロシアに対して臨むよう強く求めるとともに、北方領土問題を早期解決に導くためにも、早急に外交戦略の立直しを図るよう強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第68号・朝鮮高級学校を高等学校等就学支援金制度の対象にすることに関する意見書
朝鮮高級学校を高等学校等就学支援金制度の対象とするかについて、文部科学省は5月に委員や議事録を一切公開しない専門家会議を設置し、8月末に教育課程等については「個々の具体的な教育内容については基準としない」とする朝鮮高級学校を同制度の対象とするか審査する際の判断基準を取りまとめました。
教育内容を審査基準としないという結論については、国民から多くの疑問が出ています。しかし、高木文部科学大臣は、11月5日に専門家会議の結論をほぼ踏襲した審査基準を正式に発表しました。これにより、外形的な基準が整えば、朝鮮高級学校が同制度の対象となる可能性が極めて高くなりました。
朝鮮高級学校における教育内容については、数多くの問題点が指摘されていますが、政府案では文部科学大臣が朝鮮高級学校を同制度の対象となる外国人学校として指定する前に教育内容を判断することはできず、指定に際しての留意事項として改善を促すことになります。しかし、留意事項の履行状況の確認についても、必要と認めるときに報告を求めるにとどまり、原則的には朝鮮高級学校に自主的な改善を促すのみなので、真に教育内容の是正が図られるかは保証されていません。
また、公安調査庁は国会で、在日本朝鮮人総聯合会は朝鮮高級学校などの朝鮮人学校での民族教育に取り組んでおり、その影響は朝鮮人学校の教育内容、人事及び財政に及んでいると説明しています。このような状況の下で朝鮮高級学校を同制度の対象としても、同制度における就学支援金が真に生徒の教育費に充当されることを担保することは極めて困難です。
よって、本市議会は、国会及び政府に対し、教育内容の是正及び就学支援金が生徒の授業料の支払に充当されることを審査の前提条件とすることが実現されないかぎり朝鮮高級学校を同制度の対象にしないよう強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
議員提出議案第74号・北朝鮮による韓国の大延坪島への砲撃に関する決議
北朝鮮は、11月23日、突如として韓国の大延坪島及びその周辺海域に向け、約170発もの砲撃を行った。その被害は、韓国軍の基地及び兵士のみならず、一般住民や市街地にも及んでいる。このような、まさに無差別とも呼べる砲撃は、言語道断の暴挙である。北朝鮮がたとえどのような言い訳をしようとも、一般住民を巻き込む武力による挑発行為は、決して許されない。
今回の砲撃により犠牲者が出たことについて、本市議会は、韓国政府及び国民に対し衷心から弔意を表し、被害者の早期回復を祈念する。
朝鮮戦争の休戦協定は遵守されなければならず、今回の北朝鮮による韓国に対する砲撃は、国際社会としても看過できない挑発行為である。
よって、本市議会は、今回の北朝鮮の砲撃を強く非難するとともに、北朝鮮が核兵器の開発も含め、あらゆる軍事的な挑発行為を放棄し、このような軍事的な暴挙を二度と繰り返すことのないよう強く求める。
以上、決議する。
委員会提出議案第2号・肝炎患者に対する医療費の助成を求める意見書
我が国のB型肝炎ウイルス及びC型肝炎ウイルスの感染者は350万人以上と推定され、その感染経路は不適切な医療行為などによるものであり、本人が気付かないうちに感染し、肝硬変や肝がんに移行する恐れのある深刻な病気です。
一昨年には薬害肝炎救済法が成立し、肝炎治療7か年計画が策定され、インターフェロン治療に対する医療費の助成や委託医療機関によるウイルス肝炎の無料検査が実施されています。
更に、昨年11月30日には、ウイルス性肝炎の総合対策を示した肝炎対策基本法が国会で成立し、本年1月1日から施行されています。
これに伴い、肝炎患者に対する支援の内容は厚生労働省が作成する肝炎対策基本指針で具体化することとなりましたが、現在も内容は精査中であり、実際の支援には至っていない状態です。
本年度からB型肝炎の核酸アナログ製剤治療が助成の対象になったことにより、医療費の自己負担の軽減は図られたものの、肝炎患者にとってはまだまだ治療費が高額なため、生活に困窮し、治療の継続が困難となったり、病状が悪化するまで受診を控えたりしている現状があります。
また、肝炎患者は高齢化等による不安や合併症による重症化、肝硬変や肝がんへの進行など、様々な問題を抱えながら日々を暮らしており、一刻も早い支援の拡充が求められています。
よって、本市議会は、政府に対し、肝炎患者の救済のための早期の対応を実施するため、次の措置を講じるよう強く要請します。
1 肝炎患者の治療費は高額であり、治療の継続が困難なため、インターフェロン治療等の助成だけでなく、広範囲な補助を行うこと。
2 肝硬変や肝がんに進行している肝炎患者に対する医療費の助成を早急に実施すること。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき意見書を提出します。
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