今、地方公共団体には、急激な少子高齢化に伴う社会保障制度の整備、子育て施策、人口減少下における地域活性化対策はもとより、自治体DXの推進、脱炭素化、物価高騰対策等、極めて多岐にわたる新たな役割が求められています。加えて、多発する大規模災害への対応や新興感染症への備えも求められる中、地域公共サービスを担う人員は圧倒的に不足しており、職場における疲弊感は日々深刻化しています。
政府はこれまでいわゆる骨太の方針に基づき、地方一般財源の前年度水準を確保する姿勢を示してきました。しかし、増大する行政需要、また不足する人員体制に鑑みれば、今後はより積極的な財源確保が求められます。
よって、本市議会は、政府に対し、2026年度政府予算と地方財政の検討に当たっては、現行の地方一般財源水準確保より積極的に踏みだし、社会全体として求められている賃上げ基調にも相応する人件費の確保を含めた地方財政を実現するため、次の措置を講じるよう強く要請します。
1 社会保障の充実、地域活性化、自治体DXの推進、脱炭素化、物価高騰対策、防災・減災、地域公共交通の再構築等、増大する地方公共団体の財政需要を的確に把握するとともに、それを支える人件費を重視しつつ、現行の水準にとどまらない、より積極的な地方財源の確保・充実を図ること。
2 とりわけ、子育て対策、地域医療の確保、介護や生活困窮者の自立支援等、より高まりつつある社会保障ニーズが自治体の一般行政経費を圧迫していることから、引き続き、地方単独事業分も含めた十分な社会保障経費の拡充を図ること。特に、これらの分野を支える人材確保に向けた自治体の取り組みを十分に支える財政措置を講じること。
3 地方交付税の法定率を引き上げるなど、引き続き臨時財政対策債に頼らない、より自律的な地方財政の確立に取り組むこと。また、地域間の税源偏在性の是正に向けては、所得税や偏在性がより小さい消費税を対象に国税から地方税への税源移譲を行うなど、より抜本的な改善を行うこと。
4 政府として減税政策を検討する際は、地方財政を毀損することがないよう、あらかじめ国と地方の協議の場を活用するなどし、特段の配慮を行うとともに、地方財政への影響が想定される場合は、確実にその補填を行うこと。
5 地方創生推進費として確保されている1兆円については、現行の財政需要において不可欠な規模であることから、恒久的財源としてより明確に位置付けること。
6 会計年度任用職員においては、2024年度から勤勉手当の支給が可能となったものの、今後も当該職員の処遇改善や雇用確保が求められることから、引き続き、その財政需要を十分に満たすこと。
7 自治体情報システムの標準化・共通化に向けては、その移行に係る経費はもとより、移行の影響を受けるシステムの改修経費や大幅な増額が見込まれるシステム運用経費まで含め、必要な財源を補填すること。また、戸籍等への記載事項における氏名の振り仮名の追加やマイナンバーカードと健康保険証・運転免許証の一体化等、自治体DXの推進に伴うシステム改修や事務負担、人件費の増大が想定される際は、十分な財政支援を行うこと。
8 地域の活性化に向けて、その存在意義が改めて重視されている地域公共交通について、公共交通専任担当者の確保を支援するとともに、こども・子育て政策と同様、普通交付税の個別算定項目に位置付け、一層の施策充実を図ること。
9 自治体の行う事業において、労務費の適切な価格転嫁が果たされるよう、必要な財政支援を行うこと。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき、意見書を提出します。