デジタルの技術とアナログの経験を
融合させた効率化をはかる。

株式会社国際海洋開発 専務取締役 工学博士 丹 康弘さん

― 国際海洋開発の事業の柱「測量」について教えてください。

会社の設立は平成元年。もともと測量の会社に務めていた現社長が独立、起業したのが始まりです。海洋や河川などの護岸にモノを作る際の波の高さなどを測量するのが事業の中心です。

測量という仕事は、外で作業をする印象が強いかもしれません。しかし実際はそうした一面だけでなく、今ある世界を数値化してコンピュータの内に再現するという仕事もあります。工事とか設計だとか、あらゆる社会のベースになる仕事。影の立役者であり、基礎中の基礎です。でも、決して目立つ仕事ではありません。例えば、戦国時代の築城を振り返ってみても、「城を作った人」として名前が出てくるのは大名ばかり。でも、そこに城が建っているからには、事前に測量した人が必ずいるはず。そういう人たちの名前は、なかなか表に出ることはありませんが、目立たなくても重要な仕事です。

― 測量の「測る」部分の仕事はかなり大変な作業になりますか?

はい。力仕事で暑い日も寒い日も外に出て測量するというかなりきつい仕事もあると思います。屋外作業なので真っ黒にもなる。私も、潜水の免許をもっていますが、時には寒い日に潜水するような作業も多くあります。

私が会社に入社したのは、大学院を出てからすぐの平成15年ぐらい。親の会社を絶対に承継する必要はなかったのですが、やはり社長が頑張っている姿を間近で見ていたので、「誰かがやらねば」という気持ちで会社を引き継ぎました。でも、もともと得意とするのはプログラムを作ったりする作業。なので、屋外での作業は、あまり好きではありませんでした。そんなこともあって、“楽して同じことが出来ないか”と、仕事の中で効率化をだんだんと考えるようになりました。アイデアによっては、今まで大人数の力技でやっていた測量というものを、もっと変えられるのではと思ったのです。

― 専務を中心に、機械化や効率化を促進していった感じなのですね?

そうですね。大きなきっかけになったのは、平成18年に中小企業技術開発助成金に応募したことでした。助成金に詳しいわけではなかったのですが、偶然、役所で見かけたチラシをきっかけに挑戦することにしました。助成金の応募はもちろん初めてだし、書類さえ書いたこともなかったので少し尻込みするところもありましたが、改善のためには、資金が必要なので応募してみました。

その時の助成金で挑戦したのは、船舶の交通量調査に関しする機械化でした。船舶の交通量調査とは、どんな船が、どの航路をいつ通っているかを調べる作業です。これまでは、どこかで人員2名が待機して、2点三角測量の要領で調査していました。しかし、24時間交代制のなかなかハードな作業です。これを、技術開発によってレーダーを使って測ることを考えました。見事、助成金をパスしたお陰で実現化。計測はレーダーで手軽にできるようになったのですが、その後、画像を24時間見てカウントするのもなかなか手間のかかる作業でした。そこで、興味を持ったのが画像処理。船の軌跡を画像処理で線に置き換えるなど、どんどんと技術が進化している感じです。根底にあるのは、手間がかかること、面倒くさいことをどうにか解決できないか?という思いです。機械化やIT技術は、それに大きく貢献してくれていると思います。

ドローン撮影写真

― 技術の改善は、発注者側にもメリットが大きいですよね?

今まで10日ぐらいかかっていた作業が、1日半とか2日くらいで終わってしまいます。あまりにも早く終わるので、発注者側は「何か手を抜いているんじゃないか?」と思われることもあります。そこで、別の要因で点検測量も行って「そのうちの何%かが合っているから全体も近似値である」という書類をつくって、この機械の精度管理までを行っています。

― その他の機械化や効率化には、どんな事例がありますか?

無人水上艇を使ったインフラ点検方法なども行っています。これは、現在、紫川での実験を行っていますが、国家戦略特区事業における北九州での事業の一つですね。また、ドローンで医療物資などの輸送を行う実証実験なども行っています。ドローンに関しては、北九州市と他の民間企業7社と「災害対策活動に関する協定」を締結しました。

こうした機械化のもう一つのメリットは、若い人や女性に大きく仕事の扉が開かれたと思っています。いま、うちの会社にも若い女性が入社してきてくれています。やはり、男性に比べるとどうしても腕力が弱い。今までの計測器は、重くて大きいので女性だと運べないようなこともありましたが、機械がコンパクト化したお陰で、女性や高齢者の方にも働きやすい環境になっていると思います。特に、年配技術者の方には、今まで培ってきたアナログ技術力を生かした“デジタルとアナログをうまく融合させた”職場にしたいですね。

― 普段なかなか知らない業界ですが、さまざまな改善・効率化が進んでいるのですね。

はい。いままでは、「つくって、自分たちが活用して」終わりでしたが、今後は、作ったものをしっかりプレゼンして、アピールして使ってもらうことも大切になってくると思っています。私は、32歳のときにモノづくりの知見を深めるために大学院博士課程に再入学し、博士号を取得しました。一般的に博士号というのは、大学などで研究を行うイメージの強い資格と思いますが、中小企業では研究開発だけでなく、”宣伝”にも大きく活用できます。単なる物好きの人が作った面白い機械よりも、博士が作ったモノのほうがより宣伝効果は大きいと思います。また、母校の九工大、東海大学や北九高専などと毎年、産官学連携のプロジェクトなども行っています。北九州の若い人たちが、このまちでさまざまなものづくりに取り組んでくれると面白いですよね。自分たちが持っているスキルを、次の世代に受け継いでいくのもとても大切な仕事だと思っています。

― 今後、効率化がどんどん進む業界になりそうですね。

確かにそうですが、一方で自然が相手な仕事なので、どうしても経験が絶対必要になります。その観測した数値的な成果が本当に自然のデータを反映しているのか?単なる予測じゃないのか?とかを判断する技術者のノウハウが、腕の見せ所になると思います。コンピュータは便利ですが、それだけに頼ると危ない。なので、デジタルとアナログを綺麗に融合させるということを自分たちはいつも考えています。

― これからの業界の展望や目標は?

我社の名前は、国際海洋開発。インターナショナルな名前がついています。私たちの作り出す技術が世界に通じるといいなと思っています。実際に、インド・東南アジアからさまざまなお問い合わせをいただいております。海外からの留学生が、技術を学びに来ることもあります。世界の水辺の課題を、北九州から解決していきたいですね。

ドローン

一覧へ戻る

関連記事