整理・整頓・清掃の3Sで
社員のモチベーションから改革。

九州鉄道機器製造株式会社 代表取締役社長 大野 浩司さん

― IT・ロボットなどの設備投資をはじめたきっかけは?

ちょうど8年前、拡大路線を図るために身の丈を超えた受注を請け負い、売上は増えましたが、残業も増え、また効率を考える余裕もなく「赤字」という結果になりました。

売上が増えても、利益がでていないことは、誰のためにもなっていない。経営理念である「ひとを大切にする会社経営」に立ち返り、売上至上主義から脱却し、効率、生産性、将来を見据えた設備の見直しを考えるきっかけになりました。

― 思い切った設備投資への転換は心配ではありませんでしたか?

時を同じくして、協力業者さんの高齢化に伴い廃業などが続き、さまざまな業務の内製化が必要となりました。最初は、雇用を増やして対応する方向性で考えていましたが、時代は人手不足の流れに。そんな観点からも、自然に機械化や自動化が目標となりました。さらに、部門外の女性社員の提案がきっかけとなり、大型自動機の導入を実施。同時に北九州市の技術開発助成金にチャレンジして採択されたことで、その後の効率化やステップアップ、積極的な補助金活用につながりました。ロボット導入に関しては、地元のSireと協力し、北九州市の補助金を活用、繰り返し単純作業の撲滅をターゲットに、社員の働き方見直しの為にも重要な取り組みとなっています。

― 導入後の成果はどうでしたか?

大型自動機の導入初年度は、なかなか成果が見えませんでしたが、次年度から徐々に結果がカタチとなってきています。

ロボットに関しては、導入前に、地元のSireさんから産業用ロボットを5~6台借りて、女性も含む社員全員にひとり15分以上操作して触れてもらうことで、「仕事を奪われるのではなく、ロボットは皆さんを助けるものになる」という理解を深め、モチベーションアップにつなげました。

想定外だったのがリクルート効果です。今まで高校や大学の説明会で、「職人の技を身に付けてみないか」とPRをしていたのですが、ロボット導入に伴い「CADAMやITや自動機械を使いこなせたら、学生さんも即戦力になる」と大きく方向転換してPRしてみたところ、学生さんから興味をもってもらえました。採用が厳しい時代、会社に興味をもってもらえることは本当に有り難いことです。

レールブックエンド

― 社員全員で3S「整理・整頓・清掃」に取り組まれているそうですね。

業務時間内に整理・整頓・清掃の時間を毎日10分間設けています。3S活動に継続的に取り組む事により時間の無駄・場所の無駄・モノの無駄をなくし、結果的に作業効率や利益、最終的には、お客様の信頼につながると信じています。8年間続けた今では生産性向上に大きく繋がっているとともに、わが社の持ち味になっています。「継続は力なり」毎日積み重ねた10分の成果は、形を変えて効果をもたらしています。

― 社員のみなさんの受け入れはスムーズでしたでしょうか?

今年で創業99年目を迎える企業ですので、その歴史にしばられ最初の内は変えることに非常に強い抵抗があったのは事実です。3S活動をはじめた当初は、社員から「業績も悪いのだから3S活動よりも、生産を増やすために10分間多く働いた方が良いのでは・・・」との意見もありました。

しかし、毎朝床を掃くうちに、実は土だと思っていた場所からコンクリートの床が現れ…徐々に工場内の雰囲気が明るくなって来たのです。そんな小さな成果が重なり、少しずつ変化を受け入れるような雰囲気を社内で育くんできました。今では3Sは完全に仕事として習慣になり、決めた事を継続して守る事が仕事となっています。社員の変化に対するハードルを下げて、さまざまな新しいことの導入を受け入れやすくするために、様々な揺さぶりをかける、これが、社長として今、自分に最も求められていることだと感じています。

― 具体的に効率化に向けて取り組んでいることは?

機械化により、生産工程や製品の完成時期をより明確に共有できるようになりました。共有した情報が社員の視野を広げ、グループや部門を超えた協力体制が整いました。また3S活動が柱となり、職位や年代を超えたコミュニケーションツールとして社員間の意思疎通がより良く図れるようになり効率化につながっています。若い人材が、社内の風通しを良くし、大きな変革の芽となっています。今までは、ホワイトカラーとブルーカラーという棲み分けが一般的でしたが、ITを使いこなせる新しい人たちは、その中間色の水色「スカイブルー」の人材として、プログラムから実際の製作まで一貫して対応できます。そういった人材が今後のわが社の目標である多品種少量短納期を実現する為に欠かせない人材です。我が社にはその様な若い人材の活躍の場が出来つつあります。

― 他にも取り組んできた職場環境のイノベーションとは?

実は、2019年3月に本物の鉄道用レールから作った「レールブックエンド」というわが社初の自社製品を販売開始しました。現在、東京の代官山蔦屋さんで販売していただいています。これまで、鉄道事業者様の仕事だけを請け負ってきたわが社にとっては、初めての一般顧客向けの商品です。こうした取り組みに踏み込めたのも、ITやロボット導入、3S活動に取り組んできたこの8年の経験によって、多くの社員さんが変化を受け入れ適応出来る様に変わったことが大きな原因だと思います。

初めて中国の留学生を女性技術職として採用するにあたり、助成金を活用してトイレや更衣室の改修を行いました。また受け入れにあたっては、外部講師をお招きしてハラスメント講座も行いました。これまで、職人の現場では、「技術は見て学べ」という風潮もありましたが、「箇条書きでもいいので紙に書いて説明を」と、大きく教え方が変わりました。職人的感覚が強かった人材のモチベーションも少しずつ変化が見られています。これからも新しい時代の流れを汲み取ったイノベーションに、社員一丸となって積極的に取り組んでいきたいです。

生産工程

九州鉄道機器製造株式会社
住所:福岡県北九州市門司区下二十町2番30号
創立 :大正10年8月

■事業内容:鉄道用分岐器、継目板、九鉄式フックボルト、伸縮継目、タイプレート、ケミカルアンカー、レール溶接工事、トンネル用H形支保工、 道路照明器具販売・設置、鉄道車両部品販売、セラ水

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