人材不足が慢性的に問題化するなかで仕組み化によって働き手の満足度とよりよいサービスを目指す。

株式会社酔笑 代表取締役社長 矢野 裕之さん

― 酔笑ではフードサービスの効率化が進んでいるそうですね。

実は、小さいですが自社で工場を所有しています。さらに遡ると、材料となる野菜づくりから自分たちの農園で行っているんです。精肉なども独自のルートでまずは自社工場に仕入れ、そこで仕込みを行ってから店舗に加工した商品を送り届けています。

フードサービスの効率化は、多くの飲食店が抱える「人材の問題」からスタートしました。飲食は今、人を募集してもなかなか集まらないという慢性的な問題を抱えています。そのため、人件費は高くなるし、人材を確保し続けるために、ついつい社員教育が甘くなり、サービスの質の低下が見られます。そこで、必要としたのが発想を転換。人材の数を抑えて、人材問題を回避するために、「少ない人数で店舗をまわせる」という仕組みとして、フードサービスの効率化を取り入れることにしました。

― 品質や味の面で不安はありませんでしたか?

最近は、真空技術の進化で加工食品の味は、正直かなり美味しくなっています。例えば、ステーキに添えるジャガイモ。実はこれ、自社で育てているものなのですが、収穫後しばらく置いておくと、味は劣化してしまいます。すぐに加工してしまえば半年は保存できますし、味に大きな変化もありません。さらに、極端に言えば、入社一ヶ月のアルバイトが店舗で仕上げをやっても美味しく仕上がるんですよね。常に均一した味を、誰もがお客さまに提供できるという面から考えても、工場で加工することは大きなメリットがあると思っています。

― 珍しい日本酒のセルフサービスも行っていますが、これも効率化の視点からでしょうか?

飲食店をやっていく上で、人材が必要な3つのポイントがあります。一つが、料理をつくる人、そして運ぶ人、さらに、ドリンクをつくる人です。この中で、まぁまぁ大きなウエイトを占めるのが、ドリンクを作る人材です。そこで、導入したのがセルフサービス。でも、単にセルフサービスにするのでは面白くない。もともと私自身が利き酒師でもあるので、日本酒のセルフドリンクサービスを始めたという訳です。お店によっては飲み放題で数を多く揃えて、選ぶ楽しみを提供するところもありますが、そうすると運用が煩雑になる。そこで、うちではセグメントを狭めていくことで、日本酒、それもこだわりの逸品を揃えることが出来ています。

酔笑 店内の様子

― こうした効率化に取り組むようになったきっかけは?

もともと自分自身は飲食出身ではなく、酒店で働いていました。そこで、さまざまな飲食店を営業としてまわってきたのですが、ポテンシャルの高い店と、そうでない店の差が見えてきました。素晴らしい料理を提供していても、シェフやオーナーが常に人材問題に悩まされていたりする。そんな経験を経て飲食をスタートするにあたり、「仕組み化」の必要性を感じていたので、自然と効率化には取り組めました。

― フードサービス以外で効率化を進めているところは?

効率化というところでは、経理などの会計、シフトなどの勤怠管理、売上なども全部クラウドを利用しています。飲食では珍しい自動釣銭機も導入しています。クラウド化によっては、さまざまなメリットが生まれています。まずは、時間を選ばないことです。例えば、うっかり忘れてしまっていた発注も、思い出した時に「家からできる!」なんて、とても便利ですよね。それから、クラウド化でペーパーレス化ができたので、事務所スペースを確保する必要もいらなくなりましたね。FAXはもう使っていません。八百屋さんのような相手先がFAXだけの場合も、発注はスマホ経由でFAXにオーダーが届くような仕組みです。その他の資材関係も、事務所スペースがないので、ストックもあまり置かずに、必要な時に都度発注をかけます。発送もスピーディーなので不便に感じたことはないですよ。もちろん、クラウド利用には経費もかかりますが、事務所経費や、自分の負担も減ったと感じています。

― 昼間の時間に「貸し会議室」としてのレンタル制度を導入したそうですね。

10年前には、コワーキングスペースという概念は日本にありませんでした。そんな感覚ではじめてみたのが、お店の「貸し会議室」レンタルです。昼間の時間は無駄に空いているし、店舗に程よい机や椅子、モニターなどの設備も揃っている。会議室としてのレンタル代はとらないのですが、その代わりにその後の親睦会での利用をお願いしています。新たな顧客の獲得ができる仕組みになりました。

― さまざまな効率化でメリットに感じていることは?

自社工場を持ってフードの効率化を図ったことで、これまで満席の場合に最低でも5人は人材を揃える必要がありましたが、現在は、3人でもスムーズにお店を回せるようになりました。効率化で浮いた分は、スタッフの人件費として還元しています。そのぶん、スタッフの満足度や、やりがいも上がっていることを感じています。もちろん、大規模なチェーン店では、こうした効率化は既に取り組まれていることかもしれませんが、今はクラウドサービスなどのITの導入が気軽にできるので、我々のような規模の店でも、やり方次第では効率化が図れると思います。

酔笑 外観

牛すじ肉豆腐と日本酒の店 小倉酒場 酔小
住所:福岡県北九州市小倉北区魚町3-4-4 2F
電話:093-980-1309

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