IoTハカリで廃棄ロスを大幅削減。
販売店と生産ラインをリアルタイムで結ぶ「焼くッチャくん」

株式会社ビビンコ 代表取締役 井上 研一さん

―御社の事業内容を教えて下さい

ビビンコは業務要件に特化したIoTデバイス及び情報システムの開発運用を行っています。IoTやAIと聞くと製造業のイメージも強いかもしれませんが、弊社では非製造業向け(サービス業)を主軸に事業を展開しています。その他にIoT・AI・RPAに関する開発案件の受託・コンサルティングを行っています。

―創業のきっかけは?

きっかけは2017年に開催された北九州市主催の『北九州でIoT』です。北九州出身ではあるのですが、その前は東京中野で事業を営んでいまして、創業前北九州に頻繁に来る機会はありませんでした。AI・ワトソンに関する書籍を出版しその書籍を見てくださった市職員さんがわざわざ東京まで会いに来てくれて、その後「北九州市主催のビジコン『北九州でIoT』に応募してみませんか?」と。中野で開催していた勉強会のメンバーのうち4人でなにかできないか協議し生まれたのがIoTハカリ「焼くッチャくん」です。

イベントでは1日の実証実験で終わったのですが、クラウン製パン株式会社より「まだ使ってみたい」とお声掛けいただいて、そのまま導入していただいています。当時はぼくも会社を経営していて、他の3人のメンバーもそうでした。当時はビビンコは立ち上げておらずコミュニティとして関わっていたのですが、これを機にということで株式会社ビビンコを立ち上げました。

創業メンバーについて

株式会社ビビンコ 代表取締役 井上 研一さん

わたし含め他のメンバーも全員会社経営者。それぞれバックグラウンドも違うのでわたしとは全く違う視点でものを見ているし考えています。35年スポーツアミューズメント業界にいたサービス業畑のメンバーもいますし、一部上場企業でエンジニアマネージャーをしていたメンバーもいます。新鮮ですね。自分では思いつかないようなアイデアやソリューションを持っていますし。「焼くッチャくん」に関しても、実はこれ、わたしのアイデアではないんですよ。サービス業出身の取締役の岩崎が思いついたもので。他のメンバーは多少なりともIT業界に関連する事業を行っているので、当時も「そのアイデアで本当に大丈夫なの?」と思った記憶があります。

『北九州でIoT』の際にも、「焼くッチャくん」に対して審査員の方々の反応はいまひとつなところがあったのですが、クラウン製パンの審査員の方からは「なぜあなたたちはそんなところに気がついたんですか?」と驚かれていました。サービス業畑に長くいただけあって色んな所に気がつくんですよね。

―IoTハカリ「焼くッチャくん」について教えて下さい

パン屋さんでパンを置いているトレーをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。その下に独自に開発したハカリを設置し、時間単位で細かく該当パンの総重量を図りそのデータをWi-Fiで飛ばしクラウド上にリアルタイムで共有・記録します。こうすることで①どの時間帯に最もパンが売れるか②パンを追加するべき最適なタイミング③追加でパンを焼くタイミングなどが明確化されます。人気上位3位くらいまでに入る商品は、パン追加・パンを焼くタイミングは重要です。特に、パンは焼き上がるまでに通常3時間ほどの時間を有しますので、予期しない多くの来店があり人気商品がその場売り切れてしまったからといってすぐに完全な補充ができるわけではないという特徴があります。売り場と生産の場所が離れていればなおさらです。「商品があればもっと売上が伸びていたのに」という悩みはパン業界に関わらず多くの店舗販売業者が抱えている悩みかもしれません。

もうひとつ大きなメリットは、パンの廃棄ロスの削減につながる点。店舗の規模にもよりますが、一日数万円単位でパンの廃棄ロスが発生することもあります。パンの単価は100~300円ほどが主になりますので、個数に換算するとその仕入れはもちろん生産コスト・人件費・流通コストにも大きく影響してくる部分です。

  • IoTハカリ 焼くッチャくん
  • 焼くッチャくんの使用写真

時間単位で人気商品を設置するタイミング、生産するタイミングがわかるようになるため、仕入れの最適化、生産性の向上、廃棄ロスの削減につながるというメリットがあります。特に、生産と販売を別箇所で行っている場合、売り場と生産ラインのリアルタイムでの情報共有が可能となるため使っていただくメリットがより大きくなります。

toCを対象としたサービス業ってプロモーションや広告宣伝に大きな費用をかける反面、こういった生産上の問題点に対してテコ入れができていないところもあると思っています。クラウン製パン株式会社も「勘や経験を頼りに販売生産を行っていた部分があった」とおっしゃられていました。

―店舗での販売と生産をつなぐ「焼くッチャくん」ですが、課題や今後の展望について教えて下さい

「焼くッチャくん」のメンテナンスについて現在改良を進めているところですが、店舗の方にとって使いやすい、不具合が起きたとしてもすぐに復旧できるといった「使いやすさ」についても手加えをしていく予定です。正しいデータが取れなければ正しい分析もできませんので、これから実証実験を重ねて異常検知に対するアプローチや解決法をよりわかりやすい、使いやすい形でまとめていきたいと思っています。

例えば「焼くッチャくん」の形や構造もそのひとつです。店舗と言ってもその内装や什器の種類、商品の配置の仕方は千差万別。それら多様なニーズに応えられるよう、ハード面ソフト面両面でフレキシブルに対応できるツールにしていきたいですね。

「ハカリだけでいいのか」という点も同様に考えているところです。いま実証実験を行いながら改良を進めているところではありますが、蓄積したデータから仕入れや来店予測と連動しプロモーションを行う際のツールとして活用するレベルにまで昇華できればよりお客様のニーズにも応えられると考えています。「焼くッチャくん」を起点とした、IoTによる店舗の課題解決から、さらに一歩進んだ販売戦略を担えるものになるよう開発を進めていく予定です。

具体的には電子値札を活用した店舗内での販売戦略であったり、どの店舗の内装・什器にも合い、なにより使いやすいツールとしてハード面での見直しであったりまだまだ進化の余地はあるものと思っています。

今後、惣菜店やビュッフェスタイルのレストラン、バイキングなどの業態にも拡大していければと考えています。

―「焼くッチャくん」以外のサービスについてを行っているサービスはありますか?

2018年の『北九州でIoT』の中でTOTO株式会社がテーマとして掲げた「IoTによるあんしんリモデル」、これに弊社の「愛の目盛(あいのめもりー)」が採択されました。テーマは「健康を考えるシステムキッチン」です。愛の目盛は、一般家庭における調味料残量を常に可視化するIoTデバイスです。スマホアプリと連動し、塩や醤油など高血圧症をはじめとする生活習慣病のリスクが高い調味料の使用具合を可視化して家族の健康的な生活を支えるデバイスを開発しました。

その他にも、熊本のベンチャー企業である歯っぴー様と提携し、口腔画像から歯ぐきの健康状態を画像認識AIで判定するシステムにも関わっています。このシステムは福岡市の取組である「福岡ヘルス・ラボ」にも採択されているんですよ。また、自社の医療保険を抱える大企業などからも引き合いがあり、実証実験を進めています。社員の健康管理、予防という観点からの医療費の削減等につながるサービスです。

―社としての今後の展開について

現在、北九州(本社)と東京の2拠点をベースに事業を行っています。株式会社ビビンコ立ち上げのきっかけとなった『北九州でIoT』のように、北九州と東京を結び技術交流などができればと考えています。生まれ故郷である北九州市のサービス業はじめ、あらゆる業態の課題を解決し、地域貢献につなげていきたいです。

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