地域産業を先端技術でアップデート。
AI・IoTでビジネスを変革し価値を高める、株式会社クアンド。

株式会社クアンド 下岡 純一郎さん

―御社の事業内容を教えて下さい

機械学習やビッグデータ分析技術などのコアテクノロジーをベースに、小売・製造・金融・サービスなどの地域産業における現場課題をデジタル技術で解決する、コンサルティングを含む最新テクノロジーを活用したシステムの開発・運用及び事業開発を行っています。

―実際に運用されているプロジェクトについて幾つか教えていただけますか

市内のバルブの製造メーカーとのメンテナンスシステムの開発プロジェクトに取組んでいます。電力自由化により小規模プラントが増え、自社管理するバルブの数が増加したため、メンテナンスを一括して管理したいというニーズがありました。本来、バルブ製造メーカーであるその企業が顧客のニーズに気付き、弊社と共同でバルブメンテナンスのシステムを開発。従来は現場スタッフが手作業で紙媒体に記録していた点検記録をタブレット型の端末を顧客に配布することで、デジタルデータとしての管理を可能に。クラウド上における情報を蓄積・共有し、一元管理化することで、バルブ製造メーカーと利用者間での情報共有を高速化・効率化することに成功しました。今後はAIが自動的にバルブの予知保全を行えるシステムを開発中です。バルブ製造メーカーとして、従来のバルブの製造・販売・メンテナンスというモデルから、顧客の総合的なメンテナンス課題を解決する事業パートナーとしての立ち位置を築き、新しいビジネスモデルの創造に向けて事業を立ち上げるお手伝いをしています。

鉄鋼加工工場

その他には、銀行ATMでの不正金融取引検知システムの開発運用も行っています。近年多発している振り込め詐欺や特殊詐欺の被害額は平成29年のデータで約1.8万件、被害総額約390億円。金融機関各所ももちろん対策に乗り出してはいるのですが、膨大な取引データを人間の目でチェックするため、抜けや漏れが生まれ、人の判定基準や精度に偏りが出るといった問題点があります。このシステムを導入することで大量にある取引データ(ビッグデータ)を分析し、属人的な判定パターンをAIに学習させることで効率的な不正検知が可能に。これまでは銀行支店ごとに前日の不正取引候補を人が見ていたのですが、システムで自動化することができるため、本店での一括管理が可能になります。不正検知にかかる人件費削減、検知精度向上に繋がります。

鉄鋼加工工場での作業効率を上げるための取り組みもスタートしています。特に鉄鋼加工などの重工業系機械は使いこなすまでに多くの時間を費やす必要があり、人件費はもちろん教育にかかる時間やコストも莫大なものになります。熟練工の作業に関するデータをAIに学習させることで、特別な経験・専門知識がなくとも機械を扱えるような仕組みが必要です。どの業界もそうですが、特に人手不足が顕著な製造業界です。AIやIoTを活用した作業効率化は必須だと感じます。

―AI・IoTと聞くと製造業をイメージされる方も多いと思いますが、そうでない業態でもニーズがあるんですね

はい。先端技術の活用は、作業効率化・自動化だけに留まるものではありません。例えば弊社で開発したパン職人テクノロジー「Pan Tech」。クラウン製パン株式会社と協働で開発した画像認識AIによるパンの品質判定を行うシステムなのですが、熟練のパン職人のようにパンの仕上がりを判定しさらにそのフィードバックまで行うことができます。消費者ニーズの多様化によりより高品質なパンが求められる中、業界では熟練職人の高齢化や人材不足もあいまって、職人がなかなか育ちにくいという背景があります。画像認識によるパンの自動判定と聞くと検品のようなイメージを持たれるかもしれませんが、もともとのこのシステムを開発した目的は人材育成です。ベテラン職人がWEBアプリを用いてパン画像の品質をラベリングし、まるで熟練の職人が新人に指導するように、作成したパンの品質を判定・フィードバック。パンの品質保全と新人の教育指導の2つの役割を担っています。

パン職人テクノロジー Pan Tech

その他にも八幡西区役所の実証実験で、対話式AIによる市民への相談窓口案内なども行いました。複数の窓口があり、利用者はどの窓口にいっていいのかよくわからない。総合案内窓口の人員も限られているので、その部分を対話式AIで代行することでよりスムーズな利用を促すといったものです。

―単なる作業効率の向上やコスト削減だけに留まらない、課題解決型・提案型のビジネスモデルのように感じます

大学を出てP&G、博報堂コンサルティングを経てクアンドを立ち上げました。大学の専攻は情報工学ではなく宇宙物理学です。それらの経験とクアンドで提供できる先端技術を融合し、クライアント様がもともと持っているポテンシャル、地域産業資源を活かした事業創出を常に考えています。企業活動ですから、何かしらの課題を持たれたクライアント様から相談を受け、それに合うソリューションを提供するのは当然のことです。でも、それだけではない、新しい事業価値の創造を心がけています。

―北九州産業に対する想いを聞かせてください

クアンドの理念は「地域産業・レガシー産業のアップデート」です。北九州はもともと生まれ故郷ですし、旧態産業的な文化が根強くある地域でもあると思っています。だからこそ、先端技術を活かした変革が必要です。アナログや経験、勘などの属人性に頼りっきりの管理運営ではなく、AI・IoTなどの先端技術を融合させることで新しい産業をつくる。古いものと新しいものの融合は言葉でいうほど簡単ではありませんが、それをやる意義は充分にあると感じています。わたしたちが地場北九州の大手企業と協働することで、今までになかったサービス業が創出され雇用も生まれます。弊社にも従業員がいますが、九州工業大学、北九州市立大学、早稲田大学など、多くの学生インターンシップを受け入れています。彼らが活躍できる場を、ここ北九州でさらにつくっていければと思います。

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