建設業界の課題を独自のシステムで解決。
人手不足と働きたい就職弱者をつなぐ株式会社オングリット。

オングリット株式会社 代表取締役 森川 春菜さん

―御社の事業内容を教えて下さい

橋梁やトンネルなどのコンクリート構造物の調査点検、調査に使用するロボットやソフト、システムの開発を主な事業としています。使用するシステムも建設業界に明るくない人でも簡単にCAD図面化やデータベース化ができるよう誰にでも扱いやすいシステムを独自に開発しました。それらを活用し子育て世代や体の不自由な方、お住いの地域など環境的な要因で働きたくても働けない方々にリモート・テレワークにて業務を依頼するアウトソーシング事業も行っています。

―創業のきっかけは?

もともと私は専業主婦でした。シングルマザーの友人が、働きたくても働けないといった悩みを抱えており、同じような悩みを持つ女性を多く見てきました。かたや主人が当時働いていた建設業界は慢性的な人材不足。働きたい人、働きたい人がほしい業界、このふたつをつなげる何かができれば社会に貢献できるのではないかなと思いオングリット起業しました。オングリットの方針として、シングルマザーや体の不自由な方、その他何かしら理由があって仕事ができない就職弱者の方に積極的に雇用の場を作ることをミッションとしています。

TOTO株式会社 代表取締役会長の張本様が会長を務める、北九州女性創業支援団体ひなの会のビジネスプランコンテストに起業して初めてチャレンジし、優秀賞をいただいたことをきっかけに北九州にも法人を設立する事が出来ました。起業間もないわたしたちを伴走支援という形で継続してサポートしていただいています。

―橋梁やトンネルなど大型建造物の調査というと、職人の経験や勘なども必要そうに感じます

はい。今もこの業界はIT化が浸透しておらず、技術者の目や耳、感覚を頼りに調査を行っているところが大多数です。例えば構造内部の劣化状態を診断するときには、技術者が小さなハンマーのようなものを持って該当箇所を叩き、その反響音で中の状態を予測しています。人によって精度も差が出ますし、ヒューマンエラーも起きやすくなります。作業環境によっては大きな危険が伴うこともあり、技術者の安全管理も大きな課題。それらの問題を、弊社で開発したロボットで効率化することができます。

AIを搭載したロボットを操作し、人が入りにくい危険な箇所の調査も安全に確実に行うことができます。建築業界は男性社会のイメージが強いかと思いますが、弊社にはこれらロボットを操作し点検を行う女性点検士も多くいます。

調査点検を終えたあとにも実は問題があります。実際に点検した後、技術者が本人にしかわからないような書き方で手書き図面をまとめることが多いのですが、こうなってしまうと情報の共有だったり正しいCAD図面化に大きな手間ひまがかかりますし分業化も難しいですよね。弊社が開発した「マルッと図面化」を使えば、写真を読み込み、AIが読み込めない部分のみをタッチペンでなぞるだけで誰にでもCAD図面化が可能です。AIによる一次点検とパソコンやITに詳しくない人でも簡単に図面化ができます。システム内に難解な建築用語なども登録していますので、土木未経験者の方でも作業可能です。同製品は「福岡市トライアル優良商品」として認定を受けました。

マルッと図面化

すべてデータベース化がされていますので、土木知識がなくても誰でも簡単に図面化を行うことができます。弊社でも、現場で撮影したデータを就労支援施設の方に業務委託という形でお仕事をお願いしています。こういった取組は今後も積極的に広げていきたいなと思っています。

―定期的な点検やメンテナンスが必要なものは橋梁やトンネル以外にもありそうですが

例えば街灯や標識などの小規模付属物なども対象です。それらの点検も国土交通省により定められおり、場所によっては1年で劣化が見られる街灯も見られます。高齢化もこの業界の大きな問題です。この業界の34%以上が55歳以上と高齢化が進行しており、人手不足にさらに拍車をかけています。従来、街灯などの検査には高所作業車が必要です。それに合わせて道路使用許可も必要となります。規制も必要となりますので規制図の作成・誘導員の手配・200m置きに毎回規制看板を設置する…など、表には見えない作業や点検が必要だからすぐに点検ができるというものでもありません。高所での作業になりますのでもちろん転落などの事故リスクも高くなりますよね。

弊社の「街灯点検ロボット」を使えば道路使用許可も不要です。交通渋滞の緩和にもつながりますし人員の削減も可能、事故のリスクも大幅に軽減できます。今まで4人以上必要だった作業スタッフも2人で完結するようになります。ドローンで調査している企業様もいらっしゃいますが、飛行許可の取得やドローンパイロットの手配、町中の場合は特に規制も厳しくなります。街灯点検ロボットはドローンのように見えますが実はドローンではありません。街灯に取り付けて上昇しながらAIと振動センサーを用いて街灯全体をまんべんなく点検していくという仕組みです。街灯点検ロボットは第4回日本アントレプレナー大賞にも採択していただきました。

定期的な点検やメンテナンスの様子

―橋梁や街灯など、社会インフラの老朽化は問題視されていますよね

日本には現在約73万橋の橋があるとされています。コンクリートの寿命は約50年と言われており、2028年には約半分の36万橋が築50年を超えるとされています。点検をしないと崩落や決壊などのリスクが高まります。現に毎年2000橋以上が劣化による通行止め規制がかかっています。とはいえ人材不足でなかなか対策ができない。大型の橋梁だけでなく、地方にいくと小規模な橋が多くかかっている地域もあり、その橋が生活の生命線になっていることもあります。災害時、橋が決壊して一部が孤立などのニュースを見かけることもありますが、橋の劣化は言うまでもなくその大きな原因です。弊社の「マルッと図面化」や更なる開発製品を活用して、適切な点検が行き渡ることによりこういったリスクを減らすことも可能だと考えています。

―マルッと図面化、街灯点検ロボットともに画期的な製品だと感じます。開発はどのようにして行っているのでしょうか

もともと、本部長が大手ゼネコンの開発部長だったこともあり社内での開発がメインとなります。AIの部分では九州工業大学、振動センサーの部分では東京工芸大学、福岡大学の名誉教授と連携し開発を進めています。

街灯点検ロボット

―社の今後の展開について教えて下さい

日本国内での土木インフラを支え、より安心で快適な社会をつくっていけるよう事業を継続していきます。今後は東南アジア圏の発展途上国のインフラメンテナンスや、途上国の求職者の方に仕事をお願いできる体制を整えていきたいと計画しています。

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