INTRODUCTION
沈黙の記譜
《沈黙の記譜 / Scored in Silence》は、1945年に広島と長崎に落とされた原子爆弾の恐怖や惨状の中を生き延びた耳の聞こえない被爆者たちの声をパフォーマンスで表現し、それをデジタル化した作品です。彼女の演じる身体、音、照明、アニメーション、手話が一体となって、原爆が投下されたその当時の被爆者たちの声や体験を記録、またその後を生きた歴史を丁寧に紐解き、新しい方法で戦争の悲惨さを語ります。今まで、英国、カナダ、韓国、チュニジア、チリ、メキシコで上演されてきた作品ですが、日本では初演となります。作家本人も耳が聞こえないにもかかわらず、障害者と健常者が共存する世界的に著名なダンスグループ「Candoco Dance Company」に所属し、活動してきました。しかし近年は多様な音のない世界と身体表現、視覚と聴覚の架橋に興味を持ち、さらにメディアを駆使して、本作品のような先端的なデジタル映像作品を制作しています。
PROFILE
日本生まれ、英国ロンドンを拠点に活動するきこえないパフォーマンスアーティスト、振付家、芸術解説者。2003年から2006年まで英国の著名なダンスカンパニーCandocoのダンスアーティストとして活動する。その後、フリーランスアーティストとして様々なプロジェクトに携わる。エアリアルパフォーマーとして、2012年ロンドンパラリンピック開会式、2016年リオオリンピックパラリンピック文化プログラムに出演。きこえない振付家として、視覚的音/音楽に独特な視点からアプローチした作品制作に取り組み、音響、映像、振動、アニメーション等といった分野で国際的に活躍するデジタルアーティストとの共同制作も手がける。数学的な記譜を取り入れ、プロのダンサーらと振り付けを行うとともに、音楽を視覚化した、音のない舞踊や演出体験の確立に力を注ぐ。現在は、ロンドンの現代舞踊の中心的存在「ザ・プレイス」で、「アソシエイト・ワークプレイス・アーティスト」として従事。